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115.屋根裏

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 店を出てから10分。
 俺たちはカフェのすぐ近くにある噴水広場にいた。

 ここに来るのは前に調査で来た時以来だ。

「それで、さっきの男が前にランスくんが見つけたアジトに?」

「はい。俺はあの男を追ってアジトまで辿りつけたんです。しかも周りにいた連中もあの場にいました」

「なるほど。じゃあもしかして、ランスくんの予想は当たっているかもしれませんね」

「あのカフェに何か秘密がある、ということですか?」

「ええ。それに、一つ気がかりなことがありまして……」

「何ですか、ドロイドさん?」

「あの場では盗聴器が仕掛けられている可能性があったので、あえて言いませんでしたが――」

 ドロイドさんは自分が見つけた”あること”について話してくれた。

「屋根裏……?」

「私がお手洗いに行っていた際に従業員の方々の会話をたまたま耳にしまして。そこで『屋根裏の確認は終始怠らないように』とチーフリーダーらしき人物が従業員に言っていたんです」

「屋根裏……どういうことなのでしょうか?」

「言葉通りの意味なら、あの店の屋根裏に秘密があるってことかもしれないな」

「すみません。あの場で言えれば良かったのですが……」

「いえいえ。逆にそうしてもらえて助かりました」

 確かにもしあの場が敵地なら防犯のための盗聴器の一つや二つあってもおかしくはない。
 あくまでお客という形で中に入ったからか、割とフリーダムに満喫してしまっていたけど、調査という面では浅はかな行動だった。

 だがこの情報は次の行動を起こす原動力になった。

「とにかく、調べてみる必要がありそうですね」

「でもどうやって……お店は閉店してしまいましたし……」

「裏口なら、行けるかもしれません。あの辺の建物なら構造上二つの入り口があるはずです」

「なるほど……」

 裏口侵入か。
 ベタではあるが、最も有効的な方法でもある。

 下手に回りくどいことするよりはそっちの方がいいか。

「じゃあ、裏口からコッソリ入る計画でいきましょう」

「ええ、ですがその前に二つのチームに分けましょう。裏口は二つありますから」

「二つの入り口から同時に潜入するってことですか?」

「その通りです」

 なるほどな。
 確かにその方が効率がいいし、成功確率も高まる。
 
「分かりました。それで行きましょう。ソフィアはそれでいいか?」

「もちろんです!」

「よし、じゃあ早速分けましょうか」

 と、いうことで。
 俺たちは二つのチームに分けることに。

 そして秘密を探るために、例のカフェに潜入することになった。
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