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112.敵地?へ

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「ここって前にみんなで来た……」

「ああ……ムードブレイク上等なムキムキ店主がいたカフェだ」

 繁華街エリアのメインストリート沿いにあるカフェに、俺たちはいた。

 ソフィアの言う通り、前にみんなで来たお洒落なカフェだ。
 
 俺はここに何かヒントがあるのではと思い、皆を連れてきた。
 
 理由はまず一つとしてここの店主が例の連中と繋がりがあったところが挙げられる。
 それか、その店主が例の一味の一人だったこともあり得る。

 とりあえず、何かしらの接点があることは間違いない。

 最初は特に疑問には思わなかった。
 イリアの言葉に突き動かされた結果、偶然にあの真実まで辿りついただけだからな。

 でも冷静に考えてみると、疑問点がいくつか挙がってきた。

 それは仮にここの店主が敵が送り込んだ工作員だとして、何故このカフェで働いていたのかということだ。
 
 自分たちの存在をカモフラージュするためにあえてそうしていたと推測してみても、わざわざこんな人が大勢来るところを選ぶだろうか?

 俺が逆の立場だったら、もっとリスクを背負わないような場を選ぶだろう。

 わざわざリスクを冒してまでここで働いていたことには何かしらの意味があるはずだ。
 例えば……ここが例の10か所の内の一つだったり。

 だが、俺がそう思ったのにはまた別の理由がある。
 その理由は、俺がアジトを突き詰めるまでに尾行していた時のことだ。

 あの時、ここの店主とその付き添いだった黒ローブの人物は色々な店に入ったりと謎の行動をしていた。

 しかも中に入ったお店はカフェばかり。

 俺の記憶だけでも5件以上はまわっていた。

 当時はそいつらの行動がただの奇行にしか俺の目には映らなかったけど、今まで得てきた情報を繋ぎ合わせてみると、もしかしたら……

「ラン……ランス!」

「んあっ!?」

 耳元で大きな声が。
 脳内をビリビリっと刺激し、驚きで変な裏声が出てしまった。

 声の主はソフィアのようで……

「そ、ソフィア? どうかしたのか? いきなり大声を出して……」

「それはこっちのセリフです! さっきからずっと呼びかけているのに返事してくれないし、身体を揺さぶってみても全然反応がなかったんですよ!?」

 いつものならあんまり見せない怒りを露わにするソフィア。
 だがこの場合は、心配していたことによる怒りのようで。

「ま、マジで?」

「マジです。5分くらいずっとぼーっとしていたんで、どうしちゃったのかなって心配になったんですから!」

 マジか。
 そんなに俺は考え事にご執心だったのか……

「ご、ごめん。心配をかけて……」

「本当に大丈夫ですか? 体調に問題が生じたのなら、今すぐにでも屋敷に――」

 ドロイドさんにも心配されるが、俺はすぐに首を振った。

「いえ、俺なら大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません……」

 駄目だ。
 今はあまり深く考えてはいけない。

 仮に俺の推測が正しければ、ここは敵地になる。

 気を引き締めていかないと……

「では、行きましょうか」

 俺は皆の前に立ち、先導すると、カフェに足を踏み入れるのだった。
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