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109.宣戦布告
しおりを挟む「宣戦布告って……本当なんですか!?」
「直接言われたわけではない。あくまで暗示のようなもので来たそうだ」
「そんなの初めて知りました。なぜ伝えてくれなかったのですか?」
「申し訳ありません、殿下。何せつい先ほど入った情報なもので……」
「お父様は……お父様は何と?」
「陛下は今、首脳陣と会議をしておられています。陛下自身は戦争を望んではおられないようですが……」
俺だって戦争は嫌だ。
政治に疎いと言っても戦争がどれだけ残酷で、多くの悲劇を生むかくらいは分かっている。
魔法の勉強していた時に、色々な書物で戦争に関する記事を沢山見てきたからな。
戦争経験者ではないけれど、記事を見ただけでそう感じるのだ。
実際に戦争が起きたら、どれほど恐ろしいことになるか。
「アルバートさんはそれドロイドさんに伝えに来たってわけですか?」
「そうだ。もし戦争が起きるとなれば、王国の国家条例に基づいて、ギルドは政府の監視下になる」
「え、えーっと……それはどういう意味で?」
「政府がギルドの行動を指揮するということです。ギルドは本来、独立した組織ですが、戦時の場合は特別に定められた規定に基づいて、運営指揮権を国家に委任しないといけないんです」
「へ、へぇ……なるほど」
分かったような、分からないような……
まぁ要するにいつもとは状況がガラリと変わるということか。
そんな会話をしている内にマスタールームの前まで来る。
アルバートさんは一歩出ると、いつ見ても豪勢な部屋の扉を三回ノックした。
……
……
「御待ちしておりました、アルバート騎士長。それにランスくんとソフィア殿下も」
マスタールームに入ると、早速ドロイドさんが俺たちを迎え入れてくれた。
そしていつものようにソファの方へと誘導される。
今日のマスタールームは一変して、ガラス張りになっていたところが全てカーテンで覆い隠されていた。
防犯対策か、何かだろうか?
その代わり、ちょうどいい明るさに設定された室内照明が部屋内を照らしていた。
そして。
ドロイドさんの秘書が人数分のお茶を持ってくると、話は本題へ入った。
「それで、私との面会を望んだのは如何なる理由で?」
ドロイドさんがこう切り出すと、先にアルバートさんが口を開いた。
「つい先ほど、諜報部からいくつかの情報の提供を受けました。帝国軍が王国領内に向けて大隊を出発させたようです。今のところ確認された大隊は3つ。移動経路こそ、バラバラですが、目的地は王国領内であることは間違いないようです」
「なるほど、遂に帝国が軍を動かしたと。となると、もう既に……」
「貴殿が察している通りだ。現時点では、まだ明確な布告は受けていないが、我々の出方次第では……」
「……」
一気に重苦しい空気が駆け巡る。
仕方ないとはいえ、この緊張感ある空間でこの空気は辛いものがある。
雰囲気の圧だけで押しつぶされてしまいそうだ。
ドロイドさんはアルバートさんの一連の話を聞き、ふぅーっと息を吐くと。
「そうですか、報告ありがとうございます騎士長。で、次はお二人の方ですが……」
「あ、はい。実は――」
俺は緊張と謎の圧力で震える声を抑え込みながら、例の情報を伝えた。
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