109 / 160
109.宣戦布告
しおりを挟む「宣戦布告って……本当なんですか!?」
「直接言われたわけではない。あくまで暗示のようなもので来たそうだ」
「そんなの初めて知りました。なぜ伝えてくれなかったのですか?」
「申し訳ありません、殿下。何せつい先ほど入った情報なもので……」
「お父様は……お父様は何と?」
「陛下は今、首脳陣と会議をしておられています。陛下自身は戦争を望んではおられないようですが……」
俺だって戦争は嫌だ。
政治に疎いと言っても戦争がどれだけ残酷で、多くの悲劇を生むかくらいは分かっている。
魔法の勉強していた時に、色々な書物で戦争に関する記事を沢山見てきたからな。
戦争経験者ではないけれど、記事を見ただけでそう感じるのだ。
実際に戦争が起きたら、どれほど恐ろしいことになるか。
「アルバートさんはそれドロイドさんに伝えに来たってわけですか?」
「そうだ。もし戦争が起きるとなれば、王国の国家条例に基づいて、ギルドは政府の監視下になる」
「え、えーっと……それはどういう意味で?」
「政府がギルドの行動を指揮するということです。ギルドは本来、独立した組織ですが、戦時の場合は特別に定められた規定に基づいて、運営指揮権を国家に委任しないといけないんです」
「へ、へぇ……なるほど」
分かったような、分からないような……
まぁ要するにいつもとは状況がガラリと変わるということか。
そんな会話をしている内にマスタールームの前まで来る。
アルバートさんは一歩出ると、いつ見ても豪勢な部屋の扉を三回ノックした。
……
……
「御待ちしておりました、アルバート騎士長。それにランスくんとソフィア殿下も」
マスタールームに入ると、早速ドロイドさんが俺たちを迎え入れてくれた。
そしていつものようにソファの方へと誘導される。
今日のマスタールームは一変して、ガラス張りになっていたところが全てカーテンで覆い隠されていた。
防犯対策か、何かだろうか?
その代わり、ちょうどいい明るさに設定された室内照明が部屋内を照らしていた。
そして。
ドロイドさんの秘書が人数分のお茶を持ってくると、話は本題へ入った。
「それで、私との面会を望んだのは如何なる理由で?」
ドロイドさんがこう切り出すと、先にアルバートさんが口を開いた。
「つい先ほど、諜報部からいくつかの情報の提供を受けました。帝国軍が王国領内に向けて大隊を出発させたようです。今のところ確認された大隊は3つ。移動経路こそ、バラバラですが、目的地は王国領内であることは間違いないようです」
「なるほど、遂に帝国が軍を動かしたと。となると、もう既に……」
「貴殿が察している通りだ。現時点では、まだ明確な布告は受けていないが、我々の出方次第では……」
「……」
一気に重苦しい空気が駆け巡る。
仕方ないとはいえ、この緊張感ある空間でこの空気は辛いものがある。
雰囲気の圧だけで押しつぶされてしまいそうだ。
ドロイドさんはアルバートさんの一連の話を聞き、ふぅーっと息を吐くと。
「そうですか、報告ありがとうございます騎士長。で、次はお二人の方ですが……」
「あ、はい。実は――」
俺は緊張と謎の圧力で震える声を抑え込みながら、例の情報を伝えた。
1
お気に入りに追加
1,516
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる