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107.分析結果
しおりを挟む早朝。
俺たちはブレックファーストタイムを終えると、会議へと移っていた。
「計画は予定通り行われる?」
「ええ。分かったのはざっくりだけど、直訳すると計画敢行は今日の夜20時だということが分かったわ。あと、王都内にある10か所の拠点から総攻撃を行うということも」
「10か所の拠点? どういうことだ?」
「分からない。もっと紐解いてみれば分かるかもしれないけど、相当複雑な術式だから、ここまでしか……」
「いや、そこまで分かれば上出来だよ」
「そうですよ、イリアさん! それが分かれば、未然に計画を防ぐことができますし!」
計画が今日行われるというだけでも、有益な情報だ。
ソフィアの言う通り、取り返しのつかない結果を招く前に計画を阻止できるってことだからな。
だが、一つ問題なのは……
「10か所の拠点ってなんだ? 奴らの拠点は”あそこ”以外に9か所もあるってことか?」
「問題はそこですよね……」
あそことは、前に貧民街で見つけたアジトのことだ。
敵の拠点であることはまず間違いない。
しかし今となっては情報としては死んでしまった。
というのも、もうそのアジトは放棄されていたらしいのだ。
俺は情報を提供した後にアルバートさんたちの手によって調査活動が行われたが、既にもぬけの殻だったらしい。
それをカウントすると、残りの拠点は9か所ということになるが……
「文脈から察するに今日の20時にその10か所の拠点から、同時に攻撃が行われるってことだけど……」
「どのような手段を使ってくるか、ですね……」
攻撃と言っても様々な方法がある。
しかもここは王都。
列強王国の中核だ。
事前に計画が分かっている、いないに関わらず、圧倒的な武力で防衛網を構築できる。
敵側からしたら、その辺は脅威に感じているはずだ。
だから恐らく正攻法ではやってこない。
多分、何かしらの細工を王都全域に施しているはずだ。
もしかしたらその10か所の拠点というのは単にアジトという意味ではなく、細工場所についての暗示なのかもしれない。
(ダメだな。これは俺たちだけで考えても、恐らく答えに辿り着けない)
もう時間はあまり残されていない。
情報を得た以上、アルバートさんやドロイドさんたちへ共有することに専念した方がよさそうだ。
「とにかく、この情報を早くアルバートさんたちに伝えに行こう」
「そうですね。まだ不透明なところが多い以上、考えるよりも行動した方が良さそうです。まだ20時まで時間はありますし」
「んで、二人はもうギルドに行くわけ?」
「もちろんだ。こんなデカい情報、すぐにでも共有しないと」
「そっか。じゃあ、わたしはもう自室に行っていい? さっきからすんごく眠たくて仕方ないの」
目を擦りながら、欠伸をかますイリア。
ちなみに話している最中も何度かしていた。
相当、寝不足による睡魔が来ているのだろう。
「もう戻っていいぞ。すまなかったな、こんな早くに」
「構わないわ。貴方たちがごたごたしている間、わたしはゆっくり休めるんだし」
「本当にありがとうな。後は俺たちに任せて、ゆっくり休んでいてくれ」
「べ、別に大したことはしてないし、言われなくても休むわよ!」
少し照れくさそうに。
でもどこか嬉しそうな顔を一瞬だけ見せると、イリアは自室へと戻っていった。
「……さて、俺たちも行こうか」
「はい! アリシア、ここをお願いしますね」
「かしこまりました、どうかお気をつけて」
アリシアさんは一礼すると、今度は俺の方へ視線を向けた。
「ランス様、ソフィア様を宜しくお願い致します」
「もちろんです。ソフィアは必ず俺が守ります!」
性に合わないカッコつけを決めると、俺はソフィアと共に玄関を出る。
だが、この時の俺たちはまだ知らなかった。
自分たちの傍に、大きな脅威が潜んでいたという真実を。
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