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95.発見?
しおりを挟む「とうとう動き出したか……」
「はい。今のところ計画は順調に事を進めています」
帝国内某所にて。
皇帝ダウトは不敵な笑みを浮かべ、ガラス張りになっている窓からじっと帝都の景色を眺めていた。
「遂にこの日が来たな。我々、いや我が国の長年の夢を叶える時が」
「ええ。今日は長年待ち望んだ、記念すべき日です」
近くにいるのはダウトの秘書官であるジョン。
ダウトとは帝位に就いて以来の仲になる。
「兵たちの様子はどうだ?」
「良好です」
「よろしい。ならば後は、”彼ら”の報告を待つだけか……」
ダウトは近くの卓上に置いてあったボトルクーラーから赤ワインを取り出すと、グラスに注ぎ込む。
そしてグラスに入ったワインを一口含むと、再びガラス窓の前に立つ。
「上手くいくでしょうか?」
「それは彼ら次第だ。先の大戦で前ほどの力はないとはいえ、相手は王国だ。一筋縄ではいかないだろうな」
「そう、ですね……」
ダウトは首だけ後ろを振り返ると、ジョンの方を見た。
「ところで、フラムはどうなったのだ? 一か月以上も報告がないようだが……」
「そのことなのですが、さっき本人から電報が送られてきまして……」
……
……
「ほう……それは興味深い。いいだろう、奴の好きにさせておけ」
「で、ですが……」
「もし計画を遂行するに当たって不安要素となるようなら、即座に処刑するまでだ。それに、奴を上手く利用する手もある」
「まさか、閣下……」
「全ては我々の理想の為。理想には血が必要なのだ。ならば、誰かが流すほかなかろう」
「……」
「とにかく、お前は部隊の編成に集中しろ。早ければ丑三つ時に出兵させることになるやもしれん。そのことをよく考えておくのだな」
「はっ、仰せのままにダウト閣下」
「もう下がれ。報告は逐一するように」
「心得ております」
沈黙を続けるジョンにダウトは命令を下す。
ジョンはその場で一礼すると、部屋から去って行った。
「さぁ、遂に始まる。我々の……復讐劇が!」
ダウトは再び目線を前方に戻すと、ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべるのだった。
♦
「イリアはいたか?」
「いえ……ランスの方はどうでしたか?」
「こっちもダメだ。全然見つからない」
俺とソフィアは二手に分かれてイリア捜索を実行していた。
今のところ、収穫はなし。
時計台で時間を確認してみると、捜索を始めてから一時間が経過していた。
「マズイな。タイムリミットまであと一時間しかないぞ」
「本当に王都内にいるんでしょうか? もしかしたらまだお屋敷の近くに……」
「いや、その可能性は低いと思う。俺の探知魔法に一切、引っかからなかったからな」
微力な魔力でも相当距離が遠くない限り、引っかかるはず。
結構遠くの方まで探知の範囲を広げてみたが、反応なしだったから恐らく屋敷の周辺にはいない。
だからと言って王都にいる確証もない。
今のところ、探知魔法に反応は――
「――ん、なんだ?」
突然頭の中に入って来る魔力の波動。
じわじわと波が押し寄せるかのような感覚が、脳を通じて身体全体に伝わって来る。
この感覚は……
「ど、どうされたのですかランス?」
「……来てくれ、ソフィア。見つけたかもしれない」
「見つけたって……イリアさんをですか?」
「分からない。でも可能性は高い。とにかく、行くぞ!」
「あっ、は、はい!」
俺はソフィアの手をぎゅっと握ると、自身の感覚を頼りに走り出す。
そして辿り着いた先は、前に一度訪れた都内公園だった。
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