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93.捜索開始
しおりを挟むイリアと聖剣が消えてから一時間ちょっと。
俺とソフィアがイリア捜索のために王都までやってきた。
時間はもう夕方。
さっきまで茜色で染まっていた空も少しずつ黒一色に染まりつつあった。
「暗くなるまでには見つけられるといいんだが……」
「そうですね。日の入まであと一時間くらいなので、それまでには……」
「だな」
夜になると捜索は難しくなる。
視界不良という理由もあるが、一番の理由は……
『都民の皆様にお知らせ致します、都民の皆様にお知らせいたします。あと二時間で、当初より予定されていた夜間外出禁止令が発令されます。大変ご迷惑をおかけいたしますが、既定のお時間までにご帰宅なさるよう、ご理解とご協力のほど、宜しくお願い致します』
ピンポンパンポーンという、チャイムの後に王都内に至る所にある拡声器からこんな案内が聞こえてくる。
今日から王都全体で夜間外出禁止令が発令されることになったのだ。
フォルト国王陛下が何者かから襲撃された晩か国の上層部たちで決定され、主な理由としては調査の迅速化促進と一般市民の安全を確保するため。
要するに俺たちが王都内にいられるのはあと二時間。
それ以降は強制的に追い出されてしまう。
どちらにせよ、時間がない。
「とにかく、イリアがいそうなとこで思い当たるところを手当たり次第探していこう。今は考えるより、動いた方がいい」
「わ、分かりました!」
そんなわけで。
俺たちは未だ人々で賑わう王都を駆け巡るのだった。
♦
時を同じくして王城内。
二人の元英雄は会議室で頭を悩ませていた。
「もう既にアジトがもぬけの殻だったとはな……連中め、こちらの動きを察知したか」
「しかも調査に出向いていた騎士全員が行方不明になった。勘付かれていたのは間違いないな」
大柄の騎士。
そして先の大戦の英雄アルバート・イグシュタイナー。
テーブルを挟んで向かいに座るは紅髪のクールビューティ。
その正体はかつて紅蓮の女神と恐れられた宮廷魔術師最強の魔法使いレイム=キルヒ・アイゼン。
二人はギルド訪問後、とある調査の為に王城へと帰っていた。
その調査とはランスが提供してくれた連中のアジトの件。
帰城した後、二人はすぐに調査部隊を派遣し、その報告を待っていた。
だが調査は失敗。
アジトは既に放棄されており、おまけに派遣した騎士全員が消息不明となる異常事態になっていた。
「クソ……となると、ランス殿が言っていた計画も宛てに出来なくなったわけだ」
「計画の変更はあり得るな。一応話だと明日の晩ということになっているが――」
「アルバート様、レイム様、陛下がお呼びです。王室までご同行をお願いいたします」
扉のノック音と共に衛兵の聞こえてくる。
アルバートとレイムはソファから身を上げると、
「お呼びのようだな」
「……ああ」
二人は衛兵と共に王室へと向かった。
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