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90.頼みたいことがあります
しおりを挟む「これは……武器?」
照らされた空間にあったのは所狭しと並べられた武器や防具。
中には魔法兵器なんて物騒なものも置いてあった。
「アリシアさん、ここって……」
「武器庫です」
「やっぱりそうなんですね……ってそうじゃなくて!」
つい勢いの良いツッコミを入れてしまった。
だって真顔で『武器庫です』なんていうんだもの。
そもそもこんな光景を目の当たりにしてしまったら、戸惑うのも無理はない。
何せ華やかな屋敷の中にこんなおっかない空間があるなんて想像もつかないからな。
しかも一つの部屋にしては滅茶苦茶広いし、天井もかなり高い。
(開かずの扉の中の正体がまさか武器や兵器だったとは……)
俺はもっと怖くて悍ましいものが保管されているかと思っていた。
例えば色々な経緯で増えた人間の死体の山とか……。
まぁ、それもそれでとんでもない恐怖なんだけど。
「すごい……これどれも希少鉱石で造られた特注品よ。しかもこんなにたくさん……」
イリアも置いてあった剣に目を向けながら、驚嘆の声を上げていた。
俺はアリシアさんの方を見る。
「アリシアさん、説明してもらってもいいですか?」
「もちろんです。これを見せたからには色々とお話しなければならないことがありますので」
アリシアさんはいつもながらに冷静な表情でそう話すと、俺たちを此処に連れてきた理由も含め、語り始めた。
♦
「王家保有の武器庫?」
「ええ。王家が保有するお屋敷には武器庫の設置が義務つけられているのです。要人滞在の際に事件が起きた場合の護衛処置というのもありますが、古来より王家の屋敷というのは場所によって戦時下の拠点ともなり得る場所だったので」
「その名残が今もあると?」
「そういうことです」
他にも諸々の理由があるらしい。
「それで、俺たちをここに連れてきたのは……」
「もうお話は聞いているかもしれませんが、先日フォルト国王陛下が何者かによる襲撃を受けました。そこで政府は使用人を含め、王国直属の護衛組織宛てに戦闘配備命令を発令しました。もし、近いうちに王都やその近辺で争いが起こるとなればここは都民の避難拠点か作戦拠点となるでしょう」
なるほど。
ということは俺たちをここに連れてきた理由ってここの武器を好きなだけ使っていいから、この屋敷の護衛をしてほしいということなのだろうか?
あるいは武器の管理か。
どちらにせよ、こんな秘密を見せられたのだからそれなりに大きなことを頼まれるに違いない。
「そこで、お二人に頼みがあります」
少し緊張気味になる俺とイリア。
息を呑み、アリシアさんの次なる発言に身構えていると――
「今から、お二人にはここにある武器や防具の手入れを含めた、お掃除大会にご参加いただきたく思っています」
「「………は?」」
思わず俺もイリアも変な声が出てしまう。
アリシアさんのお願いは予想の遥か斜めを行っていた。
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