88 / 160
88.王都防衛に向けて
しおりを挟む「王都占領計画……」
「はい。彼らは確かにそう言っていました。閣下直々の命令だと」
洗いざらい話した後、場の空気は一気に重くなった。
アルバートさんたちは俺の話を聞くなり、顔を顰める。
「なるほどな。やはりダウトの差し金か。帝国は本気で王国を潰そうとしているみたいだな」
「ええ。それにその男は黒づくめの連中にこうも言っていました。”アレを起動させるにはお前たちの力が必要”だと」
「アレとは?」
「いえ、そこまでは……」
もっとあの場に残ることができたなら、確たる何かを得ることができただろう。
でも見つかる危険性があったから、仕方ない。
せっかく手に入れた有益な情報を見つかって水に流してしまうよりはマシだ。
「どうしますか、お二人とも。これはもう早々に手を打たないと、取り返しのつかないことに……」
「うむ……ランス殿」
「何でしょう?」
「決行は確かに明日の晩だと、奴らは言ったのだな?」
「はい、確かにそう聞きました。予定では明後日だったらしいですけど……」
「分かった。レイムよ」
アルバートさんの視線はレイムさんの方へと注がれる。
レイムさんは横目でアルバートさんに視線を合わせる。
「なんだ?」
「今すぐ城へ帰るぞ。このことを陛下にも伝えねばならない」
「その方が良さそうだな」
首を縦に振るレイムさん。
そして今度はドロイドさんの方を向くと、
「ドロイドギルドマスター、貴殿は明日の昼までの可能な限りの冒険者たちを集めてくれ。王都周辺だけでなく、招集できる範囲内で集めてほしい」
「かしこまりました。調査の方はどうなさいます?」
「続行してくれ。先ほどランス殿が言った”アレ”のことが気になる。我々の方からも可能な限り、騎士を派遣しよう」
「承知致しました」
ドロイドさんは胸に手を当て、深く礼をする。
「ランス殿」
「は、はい」
最後にアルバートさんが目を向けたのは俺だった。
アルバートさんは何も言わずに俺の前に手を差し出した。
「本来ならば我々がやるべきことであるにもかかわらず、君みたいな少年に危険を冒させてしまった。本当にすまなかった。情報提供、感謝する」
「お、お気になさらず! 俺もたまたま得ることが出来た情報なので」
というか事の発端を根っこまで辿るとイリアのおかげだ。
当の本人は全くもって自覚無しだろうけど、王都を救う手掛かりをくれた。
とりあえず、サンキューイリア! と心の中で言っておく。
「では我々は一度城へと帰城する。恐らく国家非常事態宣言が発令されるだろう。そうなった時には君たちの力を借りることとなる。その時は共に戦うことになることをご容赦願いたい」
「もちろんです! その時は俺たちも全力で戦います!」
「そうですよ、アルバート! 逃げも隠れもするつもりはありません。私たちも戦います!」
「(もぐもぐ)戦いまひゅ」
ってこいつまだクレープ食ってたのか。
なんとも無礼な……てかよくこの雰囲気でそんなことができるもんだ。
(恐るべきメンタルだ……)
「ありがとう。皆の勇気ある決意に報いることができるよう、我々も全力で王都を守るつもりだ。それだけは約束しよう。レイム、行くぞ」
「ああ」
最後に二人は扉の前で軽くお辞儀をすると、部屋から出て行った。
「君たちも今日は帰っても大丈夫ですよ」
「え、でも調査は……」
「他の者たちがまだ行っています。君たちは十分に働いてくれました。あとはその時になるまで待機していてください」
「は、はい……」
「まだ何かあれば手紙を通して通達させていただきます」
「分かりました。では、俺たちもこれにて失礼させていただきます」
ということで。
俺たち四人もドロイドさんに一言ずつ礼を言うと、マスタールームを後にした。
0
お気に入りに追加
1,502
あなたにおすすめの小説
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
最強の職業は付与魔術師かもしれない
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。
召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。
しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる――
※今月は毎日10時に投稿します。
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます
長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました
★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★
★現在三巻まで絶賛発売中!★
「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」
苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。
トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが――
俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ?
※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!
婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた
せいめ
恋愛
伯爵令嬢のフローラは、夜会で婚約者のレイモンドと義妹のリリアンが抱き合う姿を見てしまった。
大好きだったレイモンドの裏切りを知りショックを受けるフローラ。
三ヶ月後には結婚式なのに、このままあの方と結婚していいの?
深く傷付いたフローラは散々悩んだ挙句、その場に偶然居合わせた公爵令息や親友の力を借り、ざまぁして逃げ出すことにしたのであった。
ご都合主義です。
誤字脱字、申し訳ありません。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる