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88.王都防衛に向けて

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「王都占領計画……」

「はい。彼らは確かにそう言っていました。閣下直々の命令だと」

 洗いざらい話した後、場の空気は一気に重くなった。
 アルバートさんたちは俺の話を聞くなり、顔を顰める。

「なるほどな。やはりダウトの差し金か。帝国は本気で王国を潰そうとしているみたいだな」

「ええ。それにその男は黒づくめの連中にこうも言っていました。”アレを起動させるにはお前たちの力が必要”だと」

「アレとは?」

「いえ、そこまでは……」

 もっとあの場に残ることができたなら、確たる何かを得ることができただろう。

 でも見つかる危険性があったから、仕方ない。
 せっかく手に入れた有益な情報を見つかって水に流してしまうよりはマシだ。

「どうしますか、お二人とも。これはもう早々に手を打たないと、取り返しのつかないことに……」

「うむ……ランス殿」

「何でしょう?」

「決行は確かに明日の晩だと、奴らは言ったのだな?」

「はい、確かにそう聞きました。予定では明後日だったらしいですけど……」

「分かった。レイムよ」

 アルバートさんの視線はレイムさんの方へと注がれる。
 レイムさんは横目でアルバートさんに視線を合わせる。

「なんだ?」

「今すぐ城へ帰るぞ。このことを陛下にも伝えねばならない」

「その方が良さそうだな」

 首を縦に振るレイムさん。
 そして今度はドロイドさんの方を向くと、

「ドロイドギルドマスター、貴殿は明日の昼までの可能な限りの冒険者たちを集めてくれ。王都周辺だけでなく、招集できる範囲内で集めてほしい」

「かしこまりました。調査の方はどうなさいます?」

「続行してくれ。先ほどランス殿が言った”アレ”のことが気になる。我々の方からも可能な限り、騎士を派遣しよう」

「承知致しました」

 ドロイドさんは胸に手を当て、深く礼をする。

「ランス殿」

「は、はい」

 最後にアルバートさんが目を向けたのは俺だった。
 アルバートさんは何も言わずに俺の前に手を差し出した。

「本来ならば我々がやるべきことであるにもかかわらず、君みたいな少年に危険を冒させてしまった。本当にすまなかった。情報提供、感謝する」

「お、お気になさらず! 俺もたまたま得ることが出来た情報なので」

 というか事の発端を根っこまで辿るとイリアのおかげだ。
 当の本人は全くもって自覚無しだろうけど、王都を救う手掛かりをくれた。

 とりあえず、サンキューイリア! と心の中で言っておく。

「では我々は一度城へと帰城する。恐らく国家非常事態宣言が発令されるだろう。そうなった時には君たちの力を借りることとなる。その時は共に戦うことになることをご容赦願いたい」

「もちろんです! その時は俺たちも全力で戦います!」

「そうですよ、アルバート! 逃げも隠れもするつもりはありません。私たちも戦います!」

「(もぐもぐ)戦いまひゅ」

 ってこいつまだクレープ食ってたのか。

 なんとも無礼な……てかよくこの雰囲気でそんなことができるもんだ。

(恐るべきメンタルだ……)

「ありがとう。皆の勇気ある決意に報いることができるよう、我々も全力で王都を守るつもりだ。それだけは約束しよう。レイム、行くぞ」

「ああ」

 最後に二人は扉の前で軽くお辞儀をすると、部屋から出て行った。

「君たちも今日は帰っても大丈夫ですよ」

「え、でも調査は……」

「他の者たちがまだ行っています。君たちは十分に働いてくれました。あとはその時になるまで待機していてください」

「は、はい……」

「まだ何かあれば手紙を通して通達させていただきます」

「分かりました。では、俺たちもこれにて失礼させていただきます」

 ということで。
 俺たち四人もドロイドさんに一言ずつ礼を言うと、マスタールームを後にした。
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