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84.動き出す者たち

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「王都占領計画……!?」

「はい」

「ほ、本当にそんなことを言っていたのですか?」

「本当だ。例のカフェの店主を追いかけていったら、その真実にたどり着いた」

 場がひと段落して。
 俺はみんなに例の計画のことを話した。

 それを聞いた三人の反応は言うまでもない。
 中でもソフィアは顔を真っ青をしながら、俺の話を聞いていた。

「わ、わたし、城に戻ってお父様たちに報告をしてきます。このままだと王都が――」

「いや、待つんだソフィア」

「えっ……?」

 城に向かおうとするソフィアを引き留める。
 それにはもちろん、ワケがあった。

「国王陛下諸々に話すのはまだ止めておいた方がいい。まずは極秘でギルドに話を通すんだ」

「な、何故ですか……?」

「なるほど。確かにその方がいいかもしれないな。それを話して国が動き出すと、奴らに勘付かれる危険性もあるし」

「その通りです、リベルさん。それにこれはあくまで仮の話なんだが、城の方にも奴らが送った潜入員が紛れ込んでいる可能性もある。そうなれば、余計に先回りすることが厳しくなるだろう」

「潜入員って、スパイってことですよね?」

「そうだ。でもそれはあくまで仮定の話だ。まずはドロイドさんにこのことを話そう」

「わ、分かりました。じゃあ、早速ギルドに行きましょう」

「ああ、そうしよう。……ところで」

 俺の目線は二人から少しずれて、ベンチの方に向く。
 そこにはイリア座っており、依然として巨大クレープをもぐもぐしていた。

「お前は聞いてたのか? さっきの話を」

「……へっ?」

 なんとも気の抜けた声で返事をするイリア。
 これだけでもう聞いてないということが分かってしまう。

「聞いてないんだな……」

「ごめん。クレープと王子様に夢中になっててあんまり聞いてなかった……」

「いや、もうそろそろ王子様から離れろよ!」

 いつまで夢の中でのことを引きずっているんだ?

「でも、わたしが目をつけていたカフェの店主に何か秘密があったんでしょ? さっすがはわたし。やっぱり見る目があるわね」

「それは……否定できないな」
 
 確かにあのイリアがあの店主のことについて言及していなければ、俺は見向きもしなかっただろう。
 店から出てくることすらも気づいてなかったと思う。

 実際はたまたまに過ぎないが、イリアの着眼点から得たものは大きかった。

「ふふふっ、ならもっと褒めてつかわせ。小童よ」

「褒めようと思ったけど、なんか腹立つからやめとくわ」

「なんで!?」

 という呑気な会話が続く。
 だが、今はそれどころではない。

「イリア、とりあえずギルドに向かうぞ。クレープ食べながらでいいから」

「分かったぁ~」

「リベルさんもソフィアもついてきてくれますか?」

「もちろんだよ!」

「もちろんです! 国の存亡に関わることですからね! 王女として絶対に見逃せません!」

 二人とも目の色を変える中、一人だけもぐもぐとクレープを食するイリア。

 と、いうわけで。
 約一名、緊張感のない者を連れて、俺たちはギルドへと足を運ぶのだった。
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