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72.調査初日

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「はぁ……はぁ……な、何とか間に合った」

「お、おはようランスくん。それにソフィア殿下とイリアさんも」

「お、おはようございます……リベルさん」

「おはようございます」

「ど、どうも……」

 場所はギルド前。
 そこにいたのはリベルとドロイドさん。
 そして数人の調査隊の人たちだ。

 当然、俺たちが一番最後のようで時間を見るときっかり7時を指していた。
 
「な、なんかすごい疲れているみたいだけど……何があったんだい?」

「い、色々とありまして……」

 もちろん、内容を他人に言えるわけがない。
 人を待たせる理由としては最悪だからな。

 でも言い訳はしたくないので、皆さんには寝坊という形で認識してもらうことにした。
 あと待たせてしまった謝罪もしっかりと全員で深々と頭下げて行った。

「よし、とりあえずこれで全員揃ったということで早速調査に移りたいと思います。と、言っても今日は初日なので王都内の見回りだけになりますが……」

「見回りだけなんですか?」

 ドロイドギルドマスターに質問を飛ばすと、返答はすぐに来た。

「はい。今回は見回りだけになります。まだ本格的な調査に乗り込むには情報不足ですからね。まずは有力な情報を集めることが先決です」

「国側も他の案件で色々と忙しいらしいからね。まだ敵のアジトも突き止めていない以上、地道にやっていくしかないんだ」

「それにあまり大胆に動くと警戒されてしまいますからね。ある程度カモフラージュして調査に当たらないと」

(なるほど、だから昨日私服で来いって言ったわけか)

 というのも今回の調査、実は前もって私服で来いと言われていた。
 理由は不明だったが、それが調査のカモフラージュとして機能させるためだったとは。

(確かにいつもの冒険者スタイルよりかは不自然には思われないだろうな)

 もしこの王都にまだ怪しい連中が潜伏しているのだとしたら、昼夜警戒しているだろうから言い策ではある。

 あ、もちろんリベルやドロイドさんたちも私服だ。
 見慣れない格好だからか、こうしてみると新鮮味がある。

「というわけで、これから各自行動に移っていただきます。何かあったらすぐにこの魔道具を使って全員に知らせてください」

 そう言って手渡されたのは手のひらサイズの魔道具。
 これに魔力を注ぎ込ながら、話しかけると遠くに離れていても会話ができるらしい。

 しかも一挙に伝わるから情報伝達には最適な魔道具と言える。

 世の中には便利がモノがあるんだなぁ……

「一応、ような感じで行動してください。今回は目的はあくまでも見回りと情報収集ですので。王都の外に出なければ何をしてもOKとします。なので普段通り一日を過ごしていただければと……」

「えっ!? じゃあ普通にカフェに行ったり、ショッピングしたりしても良いってことですか!?」

「ええ、構いませんよ。お任せします」

「だって、ランス! これはもうとことん……いえ、何でもないです。すみません」

「そこまで言うとバレバレだぞ、イリア……」

 舞い上がるイリアに溜息を吐きつつも、本当にそれでいいのかと同時に疑問を持つ。
 これではただ遊びに来たじゃないか……

(いや、あながちそうでもないか……)

 普段通りにしている時に限って情報というのは集まるものでもある。
 逆に目ん玉をぎょろぎょろさせて探している時の方が何の成果も得られないこともあるのだ。

 あくまで自然に。

 これは探す側にとっても相手から警戒されないようにするためにも効果的ってことなのかも。

(と、いい感じの解釈をしてみたけど、絶対遊び呆けることになりそうだな……)

 もう既に目の前で目ん玉に星をチラつかせているのが一名いるんだし。

「では、こうして大勢で集まっているのもよくないのでそろそろ始めましょう。時間は本日の夕方16時まで。諸連絡等はこの魔道具からでお願いします」

「「「「「はい!」」」」」

「ランス、ランス! 実は最近気になってたお店があるの! ついてきて!」

「お、おいイリア! 急に腕を引っ張るなって!」

「お二人とも! 待ってくださぁい!」

 こうして。
 俺たちは王都内を調査(遊びという名の)すべく、繁華街エリアの方に繰り出すのだった。
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