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59.謎の事件

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「誘拐事件?」

「はい。これは役員会議の際に出た話なのですが、最近王都で行方不明になる人が続出していまして。身内を誘拐されたと訴える人がここ数日で何件もギルド宛に手紙が送られてきているんです」

 これまた何とも物騒な事件だな。 
 あくまで感覚だが、最近よくないことが起きることが多い気がする。

「誘拐されている対象って冒険者とかなのですか?」

「そこまではまだ分かっていないんです。ただ、最近になって黒ずくめの数人の集団が王都を徘徊していましているという情報が入ってきてまして」

「黒ずくめの集団? その人たちが犯人だと?」

「あくまで可能性が高いというだけです。これも国の諜報員が最近になって手に入れた情報なので」

 ということはまだ話の真相どころかその尻尾すらも掴めていない状況と。
 国が動くってことは恐らく俺が考えている以上に規模が大きい事件なのだろうけど。

「国ということはギルドだけでなく、国家も一枚かんでいると?」

「ええ。この事件に関しては国家騎士から防衛専務の方へ話が行っているらしいので。一応国家主導で我々は協力するという形で事件の真相を追っています」

 やはりそうか。
 でもそう聞くと何だか怖くなってくるな。

 多分、ただの誘拐犯じゃなさそう……というかないよな。

「先ほど例の謎に近づけたとおっしゃったのは、ドラゴン出現の事件もそれと関係しているかもしれないから……ということですか?」

「はい。時期が時期なので何かしら関係があるのではないかと思っています」

 確かにそんな事件が起こり始めた時にドラゴン出現は偶然にしても出来すぎている。
 その集団と接点がある可能性は十分あり得るだろう。

「ドロイドさん、一つお聞きしてもいいですか?」

「はい、何でしょうか?」

 今までの話から俺はある一つの質問にたどり着いた。

「さっきこのことを知っているのはギルドの上層部だけと言っていましたけど、なぜ他のギルド職員や冒険者たちに協力要請を出さないんです?」

 協力者が多い方が調査も捗るはず、という単純な思考が生んだ質問。
 ドロイドはその質問を聞くとすぐに返答してくれた。

「一応、この事件に関しては国が介入しているので公にはできないんです。それに、あまり大事にしてしまうと逆に調査がしづらくなってしまうということにもなりかねませんので」

 なるほど、そういうことか。 
 あくまで国家が介入した時は極秘調査にしておくと。

 まぁ確かに公に調査していることが向こうにバレれば逆に警戒されてしまい。むしろ弊害となってしまう。
 それに誘拐事件の調査にギルドが関与していることが広まれば、ギルドに対してよからぬ噂を植え付けられる可能性もある。

 政府に対する信用も落ちかねない。

 ある意味、黙って国と調査する方がギルドにとっても国にとっても冒険者たちにとっても良い処置と言えるか。

「ですが、人手が足りないというのも、また事実でして……」

 俺に質問に答えた後、それに付け加えるようにドロイドは話す。
 多分、ここから先は真の本題なのだろう。

 何となく、俺の直感がそう言っている気がした。

「その、実は今日お二人をここにお呼びしたのも事情聴取とはまた別でありまして……」
 
 その前置きは俺の勘を見事に的中させるためのものだった。
 リベルも先が分かっているのか何も言わない。

 ドロイドは再びソファに戻り、静かに腰を下ろす。

 と、俺たち二人に真剣な眼差しを向けつつ、少し間を置き――ゆっくりと話し始めた。

「単刀直入に言います。私はお二人に、この事件の調査に協力していただきたいと思っています」
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