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49.作戦
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「ほ、本当にこの方法でモンスターが寄って来るのでしょうか?」
「さぁ……どうだろうな」
「失敗して一気に襲い掛かってくるなんてことないよね?」
とある森林地帯にて。
俺たち三人はとあるモンスターを誘き寄せるべく、草むらに息を潜めていた。
「リベルさん、大丈夫でしょうか……」
「あの人は俺よりも冒険者歴は長いみたいだからな。それにA級冒険者として経験もある。その辺は大丈夫だと思うぞ」
「だといいんだけどねぇ~」
今、俺たちがこうしてコソコソとしているわけ。
それは数十分前の作戦会議へと遡る。
♦
「この鈴でモンスターを誘き寄せる……?」
「そう。今回討伐するモンスターの名はシャドウ・ビースト。名前の通り、影の如く素早い動きを得意とするモンスターで別名『幻影獣』とも呼ばれている」
「幻影獣……」
このモンスターは初耳だ。
俺は一度も戦ったことがない。
「聞いたことのないモンスターね。ランスは知ってるの?」
「いや、俺も知らない。初耳だ」
「それはそうさ。これは元々3人以上のパーティーを組む冒険者しか受注できない特殊なパーティークエストだからね。一応B級指定にはなっているけど、一人で立ち向かえばたとえS級冒険者でも手を焼くほどの厄介者さ」
なるほど、道理で知らないわけだ。
「でも、3人以上ならB級冒険者でも受注できるということは何か討伐のためのカラクリがあるという感じですか?」
「お、流石はランスくん。鋭いね。その通りだよ」
リベルはさっきの鈴を皆に見せながら、事細かな説明を話し始めた。
「そのシャドウ・ビーストというモンスターは幻影獣と呼ばれているだけあって姿を捉えるのが非常に難しい。その上、彼らは自分の外皮を透明化させる能力を持っていてね。その類稀なる隠密性から魔術師の探知魔法にも引っかからないんだ」
「ということは、奇襲がかなり得意なモンスター……ということでしょうか?」
「その通りです、ソフィア殿下」
「じゃあ、もしかしてこの鈴を渡したのはそのモンスターが音にまつわる何らかの弱点があるから……なのでしょうか?」
「おお、まさにその通りだよイリアさん! シャドウ・ビーストは音、特にこの鈴の音に敏感に反応するんだ」
続々と正解を導き出す俺たち三人。
でもこれで自分たちがこれから何をやるべきかが段々と見えてきた。
「ここまで分かっているなら、もう説明は不要だね。つまり、この鈴を使って一気に彼らを誘き寄せて、集まった瞬間に一斉攻撃するというのが今回の作戦なんだ」
最後に結論を述べ、締めるリベル。
だがここで一つ疑問が出てくる。
「あの、一つ質問良いですか?」
「なんだい?」
「その、誘き寄せるだけに使うならわざわざ全員鈴をつけなくてもいいのでは? 一人囮役として前線に出て、他の者はどこかに隠れて潜伏。集まってきたところを一気に叩くという方法の方がバラバラで戦うよりは確実だと思います」
「囮作戦……か。なるほど、確かにそっちの方が効率が良さそうだね」
「すみません、仕切る立場じゃないのに偉そうなことを……」
「いや、いいんだ。むしろ僕は積極的に意見を言ってほしいと思っている。それがパーティーを組むという利点でもあるからね」
意見交換。
連携。
これがソロとパーティーとの違いだとリベルは言う。
確かに一人だと意見交換はできないし、己の力のみを信じるしかない。
仲間という存在が出来て、頼れる者たちと協力できるからこその経験と言えよう。
「じゃあ、今日はランスくんが提案してくれた作戦で行きたいと思う。異論等があるものはここで手をあげてほしい」
リベルは皆を見渡しながら最終確認。
誰も手を上げないことを確認すると、
「異論はなし……かな。よし、じゃあこの作戦で行こう!」
こうして作戦内容が決まった。
「後は囮を誰がやるかだけど……」
「俺が行きましょうか? そもそもこの作戦を考案したのは俺ですし……」
「いや、ここは僕が行こう。ランスくんは実力的に攻撃の方に回ってほしい」
「い、いいんですか? 囮だなんて……」
「構わないさ。それに僕は物理職だ。自衛手段に関しては魔法職よりも多く持っている。問題はないよ」
「わ、分かりました……」
そんなわけで囮役はリベルということに。
こうして、大まかな作戦内容は決定した。
「よし、後は実戦あるのみだ。何かあったらすぐに大声か、この鈴を鳴らしてほしい。無理だけはしないでくれよ?」
「「「「「はい!」」」」」
とまぁこんな感じで俺たちはモンスター討伐に向かったのだった。
♦
そして話は今に至る。
今ちょうどリベルが鈴を持ち、モンスターたちを誘き寄せようとしているところだった。
「あの鈴を鳴らしてモンスターが出てきた瞬間に叩けばいいのよね?」
「作戦ではそうなっているよ」
一応こちらが奇襲に失敗しても反対側にはボルさんとルナさんがいる。
無理だと思ったら下がってほしいとのことだ。
「な、なんか緊張します……」
「リラックスだ、ソフィア。大丈夫、何かあったら俺が絶対に守るから」
「ら、ランス……」
謎に見つめ合う俺たち。
それをじーっと背後で見る者が一人。
目を細め、呆れ顔で俺たちを見てくる。
「まったく……こんな時にイチャイチャしないでよ」
「べ、別にイチャイチャだなんて……!」
「そ、そうですよ! そもそもわたしたちは――!」
――チリンチリン
と、そんな会話をしている中、鈴の音が森全体に響き渡った。
「さぁ……どうだろうな」
「失敗して一気に襲い掛かってくるなんてことないよね?」
とある森林地帯にて。
俺たち三人はとあるモンスターを誘き寄せるべく、草むらに息を潜めていた。
「リベルさん、大丈夫でしょうか……」
「あの人は俺よりも冒険者歴は長いみたいだからな。それにA級冒険者として経験もある。その辺は大丈夫だと思うぞ」
「だといいんだけどねぇ~」
今、俺たちがこうしてコソコソとしているわけ。
それは数十分前の作戦会議へと遡る。
♦
「この鈴でモンスターを誘き寄せる……?」
「そう。今回討伐するモンスターの名はシャドウ・ビースト。名前の通り、影の如く素早い動きを得意とするモンスターで別名『幻影獣』とも呼ばれている」
「幻影獣……」
このモンスターは初耳だ。
俺は一度も戦ったことがない。
「聞いたことのないモンスターね。ランスは知ってるの?」
「いや、俺も知らない。初耳だ」
「それはそうさ。これは元々3人以上のパーティーを組む冒険者しか受注できない特殊なパーティークエストだからね。一応B級指定にはなっているけど、一人で立ち向かえばたとえS級冒険者でも手を焼くほどの厄介者さ」
なるほど、道理で知らないわけだ。
「でも、3人以上ならB級冒険者でも受注できるということは何か討伐のためのカラクリがあるという感じですか?」
「お、流石はランスくん。鋭いね。その通りだよ」
リベルはさっきの鈴を皆に見せながら、事細かな説明を話し始めた。
「そのシャドウ・ビーストというモンスターは幻影獣と呼ばれているだけあって姿を捉えるのが非常に難しい。その上、彼らは自分の外皮を透明化させる能力を持っていてね。その類稀なる隠密性から魔術師の探知魔法にも引っかからないんだ」
「ということは、奇襲がかなり得意なモンスター……ということでしょうか?」
「その通りです、ソフィア殿下」
「じゃあ、もしかしてこの鈴を渡したのはそのモンスターが音にまつわる何らかの弱点があるから……なのでしょうか?」
「おお、まさにその通りだよイリアさん! シャドウ・ビーストは音、特にこの鈴の音に敏感に反応するんだ」
続々と正解を導き出す俺たち三人。
でもこれで自分たちがこれから何をやるべきかが段々と見えてきた。
「ここまで分かっているなら、もう説明は不要だね。つまり、この鈴を使って一気に彼らを誘き寄せて、集まった瞬間に一斉攻撃するというのが今回の作戦なんだ」
最後に結論を述べ、締めるリベル。
だがここで一つ疑問が出てくる。
「あの、一つ質問良いですか?」
「なんだい?」
「その、誘き寄せるだけに使うならわざわざ全員鈴をつけなくてもいいのでは? 一人囮役として前線に出て、他の者はどこかに隠れて潜伏。集まってきたところを一気に叩くという方法の方がバラバラで戦うよりは確実だと思います」
「囮作戦……か。なるほど、確かにそっちの方が効率が良さそうだね」
「すみません、仕切る立場じゃないのに偉そうなことを……」
「いや、いいんだ。むしろ僕は積極的に意見を言ってほしいと思っている。それがパーティーを組むという利点でもあるからね」
意見交換。
連携。
これがソロとパーティーとの違いだとリベルは言う。
確かに一人だと意見交換はできないし、己の力のみを信じるしかない。
仲間という存在が出来て、頼れる者たちと協力できるからこその経験と言えよう。
「じゃあ、今日はランスくんが提案してくれた作戦で行きたいと思う。異論等があるものはここで手をあげてほしい」
リベルは皆を見渡しながら最終確認。
誰も手を上げないことを確認すると、
「異論はなし……かな。よし、じゃあこの作戦で行こう!」
こうして作戦内容が決まった。
「後は囮を誰がやるかだけど……」
「俺が行きましょうか? そもそもこの作戦を考案したのは俺ですし……」
「いや、ここは僕が行こう。ランスくんは実力的に攻撃の方に回ってほしい」
「い、いいんですか? 囮だなんて……」
「構わないさ。それに僕は物理職だ。自衛手段に関しては魔法職よりも多く持っている。問題はないよ」
「わ、分かりました……」
そんなわけで囮役はリベルということに。
こうして、大まかな作戦内容は決定した。
「よし、後は実戦あるのみだ。何かあったらすぐに大声か、この鈴を鳴らしてほしい。無理だけはしないでくれよ?」
「「「「「はい!」」」」」
とまぁこんな感じで俺たちはモンスター討伐に向かったのだった。
♦
そして話は今に至る。
今ちょうどリベルが鈴を持ち、モンスターたちを誘き寄せようとしているところだった。
「あの鈴を鳴らしてモンスターが出てきた瞬間に叩けばいいのよね?」
「作戦ではそうなっているよ」
一応こちらが奇襲に失敗しても反対側にはボルさんとルナさんがいる。
無理だと思ったら下がってほしいとのことだ。
「な、なんか緊張します……」
「リラックスだ、ソフィア。大丈夫、何かあったら俺が絶対に守るから」
「ら、ランス……」
謎に見つめ合う俺たち。
それをじーっと背後で見る者が一人。
目を細め、呆れ顔で俺たちを見てくる。
「まったく……こんな時にイチャイチャしないでよ」
「べ、別にイチャイチャだなんて……!」
「そ、そうですよ! そもそもわたしたちは――!」
――チリンチリン
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