45 / 160
45.○○な朝(前)
しおりを挟む朝になった。
が、目覚めた途端事件は起こった。
「こ、これは……!」
俺の目線の先にはすらりと艶やかな銀の髪。
そして柔らかい感触が俺の身体全体を包み込む。
「な、なぜこうなった……!?」
これは俺にとって事件の何ものでもなかった。
そう……今、俺の上には今ソフィアがうつ伏せで寝ているのである。
対して俺は仰向けでソフィアを抱えるように寝ていたらしく、いつの間にかとんでもない態勢が構築されていた。
(そうか。確か俺もあの時に寝落ちして……)
蘇って来る記憶。
だが今はそんなことなどどうでもいい。
(ど、どうする!? この状況から脱却するには……)
少しずつ動いてぬるっと切り抜ける……いや、起きる確率が高い。
だがこの状況だと一度ソフィアを俺の身体の上からベッドに移す必要がある。
かなり難題だが……
(少しずつ動いて抜ける方法しかないか……)
俺はそっと身体を動かし、ソフィアを起こさないように少しずつベッドの端の方へ。
(そっとだぞ……そっと……)
今のところかなり順調。
地に足さえつければ後はどうとでもなる。
(ゆっくりだ……慌てるな)
そう自分に念じながらもぞもぞと動く。
ソフィアは依然として熟睡状態。
相当疲れていたんだろう。
可愛い寝息がすっと耳に入って来る。
てか普通に寝顔が可愛い。
できることならずっと見ていたいくらいである。
が、もし起こしてしまったら一巻の終わり。
この状況を知れば流石のソフィアも怒るだろう。
そうなれば今まで築いてきた関係が崩れかねない。
(それは嫌だ!)
ならばこの状況を何事もなかったかのように切り抜けるしかない。
俺はそう思いながら慎重に慎重に動いていく。
それにしても……
(動く度にソフィアのむ、胸が……感触が……!)
服の上からでも十分に分かる柔らかな感触。
胸元にふかふかのクッションでも抱えているかのような感覚だ。
(……ダメだ。意識するなオレ!)
とはいっても俺だって男だ。
欲がないと言えば当然ウソになる。
ちょっとくらい……なんて感情も時折脳裏を掠める。
(無だ。そう……無の心だ。これが魔法の鍛錬だって思えばいい)
魔法もより高度なものにするには”心”による影響が大きく出る。
強く真のある心を持てばより強力な魔法が。
逆に冷静沈着に落ち着いた心を持てば繊細かつ高精度な魔法を放つことができる。
要はこれもいわゆる心の訓練だと思えばいい。
(そうすれば疚しいことなんて考えない……はずだ!)
そう自分にひたすら言い聞かせ、身体をベットの端へ寄せていく。
(よし、ここまで来れば足が……)
身体を少しだけ捻って足を延ばす。
それも慎重に……慎重に。
そして――
(よし、足が地面についた!)
後はゆっくりと身体を傾けてスルッとその場から出るだけ。
これならソフィアも起きないだろう、多分。
どうやら脱出は上手くいきそうだ……
そう思っていた、その時だった。
――コツコツコツコツ
(ん、なんだこの音……足音?)
耳を澄ませば部屋の外から聞こえてくる誰かの足音。
(音的にヒールの踵の音……ってことは……!)
もしかして……アリシアさんか!?
1
お気に入りに追加
1,516
あなたにおすすめの小説

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる