上 下
34 / 160

34.影の正体

しおりを挟む

「ら、ランス! 一体どこに向かっているのですか!?」

「ちょっと人気のないところにね」

「人気のないところって、なぜ……」

「俺たち、ちょっと追われているみたいなんだ」

「追われてる? ストーキングされているってことですか?」

「そういうこと。だから誘き出してみようって思ってね」

 ソフィアの手を引っ張りながら街中を駆ける。
 俺はその謎の追手を誘き寄せるため、とある場所まで誘導していた。

「誘き寄せると言っても、その追手はついてきているのでしょうか?」

「大丈夫、ついてきているよ」

「分かるんですか?」

「まぁね」

 探知魔法にはバリバリ引っかかっている。
 というか俺たちが走り出したからか、向こう側も走って追ってきている。

 最も、俺たちからは姿を見せないように上手くやっているみたいだが。

(一体、目的はなんだ?)

 一つ考えられるとすればソフィアの存在だ。
 こうして当たり前のように一緒にいるが、彼女はこの国の王女。

 当然、色々な人間に目はつけられている。

 その中にはソフィアのことをよく思わない者もいるはずだ。
 
 例えば、貴族間の派閥争いとか。

 前に王権派と貴族連合の間で揉めてるって話を聞いたし。

(まぁ、ぶっちゃけ政治とか興味ナッシングなんでそこのところはよく分かっていないけど……)

 だが俺たちが追われる理由を考えられるとすれば、ソフィア目的が一番濃厚だろう。

 もしかしたらソフィアの命を狙う暗殺者かもしれない。

 どっちにせよ、ソフィアの身だけは何としても守らないといけない。

「こっちだ、ソフィア」

「は、はい!」

 街角を巧みに使い、相手を翻弄しつつも、少しずつ誘導していく。
 
 そして辿り着いた先は――

「こ、ここは……都内公園?」

「そう。この時間なら人は誰もいないからね」

 向かった先は王都の最南端にある都内公園。
 時間的に人気は一切なく、街灯も一つしかない薄暗い場所だ。
 
(ここなら相手も出やすいだろう)

 そう思い、中央にたった一つ聳え立つ街頭に歩み寄る。
 
 その時。

「はぁ……はぁ……はぁ…」

 ……お、来たな。

 俺たちの背後から現れる黒い影。
 その影は少しふらふらとしながら、俺たちの元へと歩み寄ってきた。

「何者だ。なぜ俺たちを追う?」

 俺はその謎の影に理由を問う……が、

「なん……で……」

「ん……?」

 ふらつく影は震えた声で言葉を発する。
 なんか息切れもしている感じだ。

 そのせいか言葉が途切れ途切れになり、まともに聞こえなかった。

「お、おいお前――」

 少し心配になり、その影に寄ろうとした――その時だった。

「なんで……」

「え?」

「なんで逃げるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ええっ!?」

 突然の大声で俺もソフィアも超びっくり。
 そして同時に街頭の光でその影の正体が露わになる。

「お、女の子……?」

「お、お前なのか? 俺たちを追っていたのは……」

「そうですよ! 声をかけようと思ったら二人とも逃げるんだもん。追いかけるのに大変だったわ」

 街頭の光に照らされ、露わになったのは赤色のロングヘアに碧色の瞳を持った美少女。
 
 年齢は多分俺と同じか少し下か。

 彼女もソフィアと同等くらいに美形で、雰囲気的には貴族令嬢って感じだった。

「まぁ……確かに最初は尾行しようと思ってたんだけど……」

「えっ?」

「ああ、いや! 何でもない何でもない! 最初は尾行しようと思っていたなんてこれっぽっちも思ってないから!」

「そ、そうか……」

 バリバリ本音が出てしまっているのだが……。
 でもどうやら見た感じ、暗殺者とかではなさそう。

 いや、もしかしたらこう見えても暗殺者の可能性はあるか。

 警戒は怠らず……だな。

「それよりも、俺たちに一体何の用だ? ちなみにセールスならお断りだぞ」

「セールス? 何ですかそれ? わたしはただ、貴方に会いにきただけなのですが」

「貴方……?」

 少女の目線はソフィア……ではなく、俺の方に向いている。
 
 ってことは……

「目的は……オレなのか?」

 そう聞くと少女は「うんうん」と頷き、

「そのとーり! わたしはランス様にお会いしに遠路遥々帝国から来たのです!」

「な、なぜ俺に……」

「え、だって……」

 少女はここで一旦間をあけると、再び口を開いた。

「わたしは貴方のファンなんですもの」

「…………………………え?」

 この少女の一言を聞いた途端、俺は一瞬だけ、思考停止に陥ったのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます

長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました ★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★ ★現在三巻まで絶賛発売中!★ 「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」 苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。 トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが―― 俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ? ※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた

せいめ
恋愛
 伯爵令嬢のフローラは、夜会で婚約者のレイモンドと義妹のリリアンが抱き合う姿を見てしまった。  大好きだったレイモンドの裏切りを知りショックを受けるフローラ。  三ヶ月後には結婚式なのに、このままあの方と結婚していいの?  深く傷付いたフローラは散々悩んだ挙句、その場に偶然居合わせた公爵令息や親友の力を借り、ざまぁして逃げ出すことにしたのであった。  ご都合主義です。  誤字脱字、申し訳ありません。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

処理中です...