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17.極秘会議

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「うわぁぁ~! 凄く似合っていますよ、ランス!」

「そ、そうか?」

「はい! とっても素敵です!」

 というわけでさっきお互いで買い合った防具を身に着けてみました。
 
 ちなみに俺がソフィアに買ってもらった防具は漆黒のマント。
 元々防具が黒一式で頭髪も黒髪なため、頭から爪先まで暗黒人になった。

 防具でマント? と思うかもしれないがこのマント、ただのマントではないのだ。

「本当にこんなので物理・魔法を無効化してくれるのか?」

 そう、このマント実はソフィアと同じ特殊加工が施された防具。
 そしてその恩恵が驚くことにある一定の物理・魔法を無効化するというのだ。

 そんなまさか~と思うだろう?

 俺もそう思った。

 でも実際それが売り文句だったらしい。
 
 あ、ちなみに気になっていたというのは単純にカッコイイなって思っていただけのこと。
 特に機能性を見ていたわけではなかったので、購入する際に聞いた時は凄く驚いたもんだ。

(着心地はいいな……)

 とはいってもこの防具は安心と信頼のカールトン製。
 インチキな物を売るとも思えない。

(ま、どうせこれからクエストを受けるんだし、試してみるのもアリだな……)

 俺は漆黒のマントをバサッと開くと、ソフィアの方を向いた。

「んじゃ、装備も買ったことだし、早速ギルドに行くか!」

「はい!」

 俺たちは新品ホヤホヤの高級防具を輝かせながら、ギルドへと足を運ぶのだった。


 ♦

 ランスたちがギルドへと向かおうとしている中、とある国のとある場所では要人たちが集まり、秘密会議が行われていた。

「で、フラムよ。例の件はどうなったのだ?」

「はっ。それがですが、先ほど王国へと派遣していた召喚術師サモナーたちが帰還致しました」

「ほう……それで、成果は?」

「ひ、非常にお伝えにくいのですが、その……失敗したとのことで」

 フラムという女性は言いにくそうに言葉を発する。
 それを髭の男が脇で肘をついて見ていた。

 その髭の男は少し表情を歪める。

「失敗だと? 原因はなんだ?」

「それが……召喚した魔物が何者かに瞬殺されたとのことで」

「なんの魔物を召還させたのだ?」

「A級危険指定のイェーガーウルフとのことです。召喚術師サモナーが6人がかりで呼び寄せたようで……」

「イェーガーウルフか……」

 髭の男は何か考え込むような仕草を見せると、話を続けた。

「で、そのイェーガーウルフが何者かに瞬殺されたと?」

「は、はい……」

「複数人の仕業か?」

「いえ、一人とのことで」

「一人……だと?」

 髭の男はさらに表情を険しくさせる。
 そしてモッサリと髭の生えた顎を触ると、フラムに問いた。

「何者なのだ? その者は」

「そ、それなんですが……不明なようで」

「不明だと? 分からないということか?」

「はい。召喚術師サモナーたちの話によれば冒険者っぽいとのことで。後は特徴として黒い髪を持っていたとか……」

「黒髪の冒険者か。正直、信じられん話だな」

「わ、私もそう思います。イェーガーウルフを単独で殺せるものなんてそれこそSランク冒険者でも厳しい所業。そんなことができるのは王国騎士長のアルバート・イグシュタイナーか魔法師団長のレイム=キルヒ・アイゼンくらいでしょう」

「よせ! その名を出すな!」

 髭の男はバンッとテーブルを強く叩いた。
 フラムはビクッとし、一瞬身を引くとすぐに謝罪をした。

「も、申し訳ありません! ダウト閣下!」

「ちっ、あの忌々しい騎士と魔女め。奴らのおかげで我が国はどん底まで追いやられたのだぞ!」

「じゅ、十二分に存じております」

 完全に身を縮め、震え声で話すフラム。
 髭の男は一旦「ふぅ」と息を吐くと、再び口を開いた。

「フラム。貴様に新たな命令を下す」

「は、はい! なんでございましょう?」

「王国へ出向いてその黒髪の冒険者とやらを調べてこい。手段は問わない。見つけ次第、私に報告しろ」

「か、かしこまりました! ではすぐに王国へと出発致します!」

 そういうとフラムは即座に立ち上がり、その場を後にする。
 そして残った要人はたちは揃って喋りだした。

「閣下、良いのですか? あのような娘一人に任せてしまって」

「構わん。どちらにせよ、計画は予定通り行うつもりだ。だが、極力不安要素は排除しておきたい。聞いたところによればその黒髪の冒険者とやらは我々の障害になりかねないからな。それに、奴の代わりなどいくらでもいる。発見さえしてくれれば後はじっくりと料理してやればいいしな」

「な、なるほど! 流石はダウト閣下!」

「よくお考えで!」

 他の者たちは揃いも揃ってダウトを持ち上げる。
 だがダウトは一瞬たりとも表情を緩ませることなく、ゆっくりと椅子から立ち上がった。

「いいか、貴様ら。我々がこの5年間、血と汗で考え抜いてきたこの計画は我が国を再び列強諸国へと昇格させるためのものだ。絶対に失敗は許されない。まだ準備段階ではあるが、気は抜けん。各々心しておくように!」

「「「「「はっ! 閣下の仰せのままに!」」」」」

 他の者たちはもはやもうダウト様万歳状態。

 おバカさんばっかりである。
 
 ダウトは後ろを向き、「ふっ」と不敵な笑みを浮かべると、

「今日の会議は以上だ。近いうちに詳細の開示を行う」

 それだけ告げるとダウトは一人、闇の中へと消えて行った。
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