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第5章 おっさん、優勝を目指す
第124話 裏の事実、そして衝撃の真実
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お久しぶりです。お待たせしてしまい、申し訳ありません。
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「最初に結論から言おうか。実はつい最近、十数年に渡って封印されてきた力が解かれたんだ」
「封印されてきたって……まさか!」
「そう、魔王だよ」
ルーカスはただ淡々とその言葉を口にする。
が、私にとってはその一言だけでも衝撃だった。
「ま、魔王って……本当なんですか!?」
「ああ、本当さ。そしてその復活した魔王の一派がレイナード先生の命を狙っている。さっき俺が言った言葉はこのことだったんだよ」
「魔王の一派がレイナード先生の命を……? でもなんで……」
「ん、君は知らないのか? あの先生の秘密を」
「先生の……秘密?」
レイナード先生に秘密が……?
でもそんな素振りは一度も……
「ふむ。その様子じゃ知らないみたいだね」
「何なんですか? その秘密って……」
「うーん、これは俺の口から言っていいものか分からないけど、まぁいいか」
そういうとルーカスは一旦間を挟み、再び口を開く。
「最初に言っておくけど、レイナード・アーバンクルスという名は彼の本名じゃない。彼にはまた別の本当の名前がある」
「ほ、本当の名前……?」
「そう。そしてその本当の名前は――アーク・シュテルクスト」
「アーク・シュテルクスト……ってまさかあの!?」
「その通り。かつて魔王を封印し、英雄としてその名を轟かせた天才魔術師。魔術師を志すものなら誰もが知っている人物だろう」
そう、魔術師を志すならば一度は耳にする人物の名だ。
アーク・シュテルクスト。
当時の年齢は確か16歳。
その歳にしてたった一人で魔王を倒し、封印した歴代史上最強の魔術師として名高い存在。
当時は稀代の天才として多くの人に祀り上げられ、今では学生用の教材や学術書にその名が掲載されるほど時の人となった。
そして彼の影響で魔術師になった者も数知れないほど多くいる。
だが……
「でも、お方は魔王を封印したすぐ直後に病死で……」
「この世から去ったはず……そう言いたいんだね?」
「は、はい……」
当時はかなり衝撃的なニュースになったという。
まだ将来性ある人物の突然なる訃報。
病死という仕方のない死因とはいえ、あっけなさ過ぎた。
そして多くの人たちがその死を弔った。
でもルーカスの話が本当だとするならば、この死は嘘の情報となる。
「本当に……レイナード先生があの英雄、アーク・シュテルクスト様なのですか?」
「信じられないかい?」
「正直、現時点では……」
もちろん、死んだ人間が生き返るはずもない。
でもあの時、本当に死んでおらず何かの意図があって世の中に拡散されたフェイクニュースだったとしたら……
「わざと死んだことにした……」
「お、中々鋭い考察だね。実は俺もそう思っているんだ」
「え……?」
「レイナード先生は何らかの意図があって昔の自分を捨てた。そして今、素性を隠して魔術講師をしている。これは正直なところ、彼と神のみぞ知ることだけど、何らかの問題があったのは間違いない」
「問題……?」
「うん。まぁ例えば、自分を祀り上げる世の中にうんざりした……とか?」
これまた極端な……
でも確かに何らかの重大な問題がなければ、そんな回りくどいことはしないだろう。
「あの、ルーカス生徒会長」
「なんだい?」
「貴方はなぜそんなことを知っているのですか? どこでその情報を……」
「ふふふっ、知りたいかい?」
「……いえ、特には」
不敵な笑みを浮かべ、こちらを見てくるルーカス。
まぁ正直色々と問いただしたいことはある。
だがそれよりもまずは……
「一つお聞きしたいことがあります。その魔王の一派というのはこのアロン祭に乗じてどこかに潜んでいるのですか?」
この質問にルーカスはう~んと首を傾げた。
「それは俺にも分からない。でも、命を狙っているのは間違いない。もしかしたらもうすぐ近くまで来ているかもしれないし、こうしている間にも……」
「……さっきからずっと聞きたかったですけど、貴方はどっち側の人間なんですか?」
「どっち側……とは?」
ウイスキーの入ったグラスを傾けながら、彼は問う。
彼のそこ底知れない笑みが私の中に疑惑を種をまいていく。
が、今はそれを問いただすべきじゃないと思い――
「いえ、何でもありません。突然変なこと言ってすみません」
そういうとルーカスは店内に置いてあった巨大クロックを眺め、
「おっと、もうこんな時間か。すまない、これから少し用事があるんだ。そろそろこの辺で俺は失礼させてもらうよ」
「はい。色々と教えてくださり、ありがとうございました」
「いえいえ。じゃ、健闘を祈るよ。フィオナさん」
ルーカスはそう一言いうと勘定をテーブルの上に置き、店を去っていった。
この大人な空間漂う店内で一人取り残された自分。
色々と考えなきゃいけないことが多いけど、とにかく今は……
「先生たちのところに戻らないと。そして真実をレイナード先生に……!」
私は心の中でそう決心すると、すぐに店を飛び出し、レイナードの元へと急ぎ戻るのだった。
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「封印されてきたって……まさか!」
「そう、魔王だよ」
ルーカスはただ淡々とその言葉を口にする。
が、私にとってはその一言だけでも衝撃だった。
「ま、魔王って……本当なんですか!?」
「ああ、本当さ。そしてその復活した魔王の一派がレイナード先生の命を狙っている。さっき俺が言った言葉はこのことだったんだよ」
「魔王の一派がレイナード先生の命を……? でもなんで……」
「ん、君は知らないのか? あの先生の秘密を」
「先生の……秘密?」
レイナード先生に秘密が……?
でもそんな素振りは一度も……
「ふむ。その様子じゃ知らないみたいだね」
「何なんですか? その秘密って……」
「うーん、これは俺の口から言っていいものか分からないけど、まぁいいか」
そういうとルーカスは一旦間を挟み、再び口を開く。
「最初に言っておくけど、レイナード・アーバンクルスという名は彼の本名じゃない。彼にはまた別の本当の名前がある」
「ほ、本当の名前……?」
「そう。そしてその本当の名前は――アーク・シュテルクスト」
「アーク・シュテルクスト……ってまさかあの!?」
「その通り。かつて魔王を封印し、英雄としてその名を轟かせた天才魔術師。魔術師を志すものなら誰もが知っている人物だろう」
そう、魔術師を志すならば一度は耳にする人物の名だ。
アーク・シュテルクスト。
当時の年齢は確か16歳。
その歳にしてたった一人で魔王を倒し、封印した歴代史上最強の魔術師として名高い存在。
当時は稀代の天才として多くの人に祀り上げられ、今では学生用の教材や学術書にその名が掲載されるほど時の人となった。
そして彼の影響で魔術師になった者も数知れないほど多くいる。
だが……
「でも、お方は魔王を封印したすぐ直後に病死で……」
「この世から去ったはず……そう言いたいんだね?」
「は、はい……」
当時はかなり衝撃的なニュースになったという。
まだ将来性ある人物の突然なる訃報。
病死という仕方のない死因とはいえ、あっけなさ過ぎた。
そして多くの人たちがその死を弔った。
でもルーカスの話が本当だとするならば、この死は嘘の情報となる。
「本当に……レイナード先生があの英雄、アーク・シュテルクスト様なのですか?」
「信じられないかい?」
「正直、現時点では……」
もちろん、死んだ人間が生き返るはずもない。
でもあの時、本当に死んでおらず何かの意図があって世の中に拡散されたフェイクニュースだったとしたら……
「わざと死んだことにした……」
「お、中々鋭い考察だね。実は俺もそう思っているんだ」
「え……?」
「レイナード先生は何らかの意図があって昔の自分を捨てた。そして今、素性を隠して魔術講師をしている。これは正直なところ、彼と神のみぞ知ることだけど、何らかの問題があったのは間違いない」
「問題……?」
「うん。まぁ例えば、自分を祀り上げる世の中にうんざりした……とか?」
これまた極端な……
でも確かに何らかの重大な問題がなければ、そんな回りくどいことはしないだろう。
「あの、ルーカス生徒会長」
「なんだい?」
「貴方はなぜそんなことを知っているのですか? どこでその情報を……」
「ふふふっ、知りたいかい?」
「……いえ、特には」
不敵な笑みを浮かべ、こちらを見てくるルーカス。
まぁ正直色々と問いただしたいことはある。
だがそれよりもまずは……
「一つお聞きしたいことがあります。その魔王の一派というのはこのアロン祭に乗じてどこかに潜んでいるのですか?」
この質問にルーカスはう~んと首を傾げた。
「それは俺にも分からない。でも、命を狙っているのは間違いない。もしかしたらもうすぐ近くまで来ているかもしれないし、こうしている間にも……」
「……さっきからずっと聞きたかったですけど、貴方はどっち側の人間なんですか?」
「どっち側……とは?」
ウイスキーの入ったグラスを傾けながら、彼は問う。
彼のそこ底知れない笑みが私の中に疑惑を種をまいていく。
が、今はそれを問いただすべきじゃないと思い――
「いえ、何でもありません。突然変なこと言ってすみません」
そういうとルーカスは店内に置いてあった巨大クロックを眺め、
「おっと、もうこんな時間か。すまない、これから少し用事があるんだ。そろそろこの辺で俺は失礼させてもらうよ」
「はい。色々と教えてくださり、ありがとうございました」
「いえいえ。じゃ、健闘を祈るよ。フィオナさん」
ルーカスはそう一言いうと勘定をテーブルの上に置き、店を去っていった。
この大人な空間漂う店内で一人取り残された自分。
色々と考えなきゃいけないことが多いけど、とにかく今は……
「先生たちのところに戻らないと。そして真実をレイナード先生に……!」
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