元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第5章 おっさん、優勝を目指す

第99話 勝利を願って

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 アロン魔道技術祭最終日の朝、俺たちは1年A組はとある施設の一室に集結していた。

「遂にこの時がきた。お前、気合いは十分か!?」

「「「「「はい!」」」」」

「よし、良き返事だ。では早速今日の昼に行われる決勝戦に向けての最終ミーティングを行うとしよう」

 生徒たち一人一人の目つきが鋭くなる。もう勝負に向けての心構えが出来ていると見た。

(中々いい顔している。練習開始当初とは比べ物にならないくらいだ)

 一人一人の様子に気を配りつつミーティングを開始する。
 ミーティングとは言ってもそれは名ばかりで実際は決起集会のようなもの。
 簡単な作戦だけ伝えてあとは雑談するなり自由な時間を設けることにした。

 これには本番前にいかに気楽な状態で戦いに臨めるかという意図を含んでいる。
 次なる相手が相手なだけに厳しいどころか一方的な苦戦を強いられる戦いとなる確率が非常に高い。緊張感を持つことは確かに重要なことだがそれによって身体がガチガチになってしまうのでは意味がない。

 なので少しでも身も心も軽い状態で臨むのが一番望ましいという結論からこのような方針を取ることにした。
 そして―――

「―――と、いう具合だ。相手は未知数、小細工でどうこうできるような相手じゃないことだけ頭に入れて置け。とにかく正攻法でやるしかない。お前たちの底力を見せつけてやれ!」

「「「「「はい!」」」」」

 ミーティングは予定通り数分ほどで終わった。その後は昼過ぎの決勝戦まで身体を休めるなり祭りを楽しむなりして時間を使えと指示を出す。
 俺たち講師陣も同様に決勝戦までゆっくりと羽を休めることにした。











「……決勝、次の一戦で全てが決まるわけか……」

 俺御用達の学園屋上にある展望デッキのベンチに座り、そう呟く。
 スカーレットから貰ったシガレットを口に銜え、火を点ける。
 
 今日の昼には待ちに待ったひきこもりニート生活に向けての総仕上げが行われる。

「ここで勝てば夢の引きこもり生活か……」

 そのために俺は魔技祭までの数週間、クラスの生徒たちを必死に教育してきた。
 もちろん俺の辞書に敗北という単語はない。それは今も昔も変わらないことだ。
 現役魔術師の時代は負けなしだった俺にとって敗北という結末は味わったことがなかった。なので勝つという結末しかあり得ないと思っている。

 それが教える立場となり、自分自身が戦うわけではなくとも同じことだ。勝つという結果こそが全てでありこれ以上の理由は存在しないだろう。

「よっしゃ、やったる!」

 自らの頬を平手でパンパンと叩き、気合いを入れる。
 少し強く叩きすぎたせいか顔が少々ピリピリとした。
 すると、

「気合入っていますねぇ~レイナード先生」
「……なんだ、何か用か?」
「いえ、特に重要な用はないのですがせめて応援の言葉だけは述べに行こうと思いましてね。先生の美女側近のお二方に話を聞いたらここにいるのではと言われたので……」

 話しかけてきたのはB組のラルゴ・ノートリウム。彼のクラスは準決勝で3年A組にその圧倒的力を見せつけられ、敗退している。
 目覚ましい成長を遂げていたB組だからこそ一方的な敗退には驚きが隠せなかったがそれほど相手の力の方がまさっていたのだろう。

「……で、応援の言葉とは一体何を伝えにきたのだ? わざわざここまで来るのは何か言いたいことがあってきたんじゃないのか?」

 そう問うとラルゴは少し苦笑しながら、

「やはり分かっていましたか。私が単にここへ来たわけではないということを……」
「ああ、それしか考えられないからな」
「酷いですねぇ……単純に応援したいという気持ちがあるのは事実ですのに」

 少し落ち込んだかのような表情を見せる。
 そして数秒たち、ラルゴの表情は真剣さを増し、キリッと切り替わる。
 
「まぁそれはさておいて本題にいくとしましょう。私がレイナード先生に伝えたいことは決勝戦の相手、3年A組についての情報です」
「……情報?」
「はい。先生は魔技祭優勝を最大の目標にしていらっしゃると美女お二人が申していたものですから」
「そ、そうか……」

(あいつら……気を遣っていたのか)

 確かにA組のデータ分析に頭を悩ませていたのは事実だ。
 しかし寄りにも寄ってこの男に頼ることになるとは……
 
(まぁ……今は少しでも情報がほしいのも事実だからなぁ……)
 
 猫の手ならぬバカの手も借りたいぐらいだ。仕方がない。
 
「……それで、その情報とやらはいくらで買うんだ?」

 こう俺が問うとラルゴは首を傾げ、

「いくら……とは?」
「もちろん無償で情報を与えるってわけではないのだろう? 情報がほしいのなら何か対価となるものを差し出せというのではないのか?」

 情報屋から情報を得る際には必ず取引が行われる。相手の得た情報を仕入れるには対価を払うことは絶対だ。
 だがラルゴはふふふといきなり笑い出し、

「その必要はありませんよ。無償で教えるつもりでしたので」
「なんだと? 対価を必要としないのか?」
「ええ、これは私の良心と我が1年B組の仇を撃ってほしいという単純な願いからです。A組の皆さんにはぜひともあの化け物集団を撃退してもらいたい。情報提供の代わりにね」

 ラルゴはそう言いながら俺の方を向く。
 その眼差しに嘘偽りはなかった。本気で奴らを倒してほしい……その願いは口だけではないようだ。

 俺は彼のそう言った意図を受け止めると「分かった」と頷き、情報提供をしてもらうことに。


 そしてその運命の一戦は刻々と近づいていき……
 

 

 
『皆さま、いよいよこの時がやってまいりました! この6日間の激闘を通し勝ち上がってきた2チームによる決戦が今始まろうとしています! 両チーム入場後、盛大な拍手でお迎えください!』

 司会者が場を雰囲気を盛り上げ、コロシアム内はどよめきのあまり施設ごと揺れ動いていた。
 そしていよいよ決勝戦が始まろうとしている。

 俺たちは勝利という最大の願いと共に入場ゲートの前に立ち、ただその瞬間をひたすら待つばかりであった。
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