元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
95 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する

第93話 衝突

しおりを挟む

 ニーズベル・フォン・リッテンベルグ。
 2年A組の司令塔で主力生徒。
 容姿端麗成績優秀という才色兼備。リッテンベルグ家という魔術師の名家であることからその実力は王国魔術師団のお墨付き。
 その上きちんとした礼節を知る常識人ときた。

(付け入る隙がないとはこのことか……)

 まさに学園の中では上から数えても指折りの超人的存在。そのカリスマ性は周りの生徒をも巻き込み翻弄するまである。
 悪い要素を見つける方が苦労するくらいだ。

「レイナード先生。今日の魔技祭初戦、お互い良い勝負にしましょう」
「ああ、よろしく頼む」
「それでは失礼致します」

 ニーズベルは軽く会釈をし、走り去っていく。
 あの堂々とした立ち居振る舞い、かなり落ち着いているように見えた。
 緊張で身体が強張る……なんてことはなさそうだ。

(ふむ……こりゃ相手が悪いな)


 去っていく彼女のその後ろ姿を見ながらそう感じた。




 ■ ■ ■


 

 ―――魔技祭初戦開幕2時間前


「……よし、全員集まったな。これより作戦会議を行う」

 1年A組の教室で講師陣三人とA組生徒たちは一同に会していた。
 皆、本番初日ということもあり少々挙動がきごちない生徒たちも中にはいた。
 ちなみに例の天才3人組は相変わらずで緊張感持っているのかと疑うほど冷静さを保っていた。

「レーナ、例の資料を」
「はい」

 そういうとレーナは生徒各人に一枚のデータを配布していく。
 内容は初戦の相手、2年A組の選抜予想と要注意人物たちのデータだ。
 俺はこのデータを基に速やかに作戦内容を説明していく。

「―――ということだ。残念ながら今日の相手は小細工が通じるような相手ではない。正攻法でいき、勝ちをもぎ取ること以外は方法はないと思った方がいいと頭の中に入れておけ」

「―――ま、マジかよ……あの真紅の魔女相手に正攻法だなんて」
「―――ああ、ボッコボコなんてもんじゃないだろ」
「―――初戦から運がないなぁ……」

 クラス全体がざわめき始め、悲痛な叫びがあちらこちらに飛び交う。
 その時だ。

「みんな静かに!」

 こう叫ぶのはクラス委員長のフィオナだ。
 いきなり立ち上がったことによってクラス全体が一気に静まり返る。
 そして彼女は皆の方を向き、

「ねぇ……みんなは勝ちたいとは思わないの? 相手が強大だから、自分達じゃ届かないから諦めるの?」

 生徒たちは無言で俯く。
 だがそんなことはおかまいなしにフィオナは続ける。

「私は勝ちたいわ、なんとしてでも。今までそのために辛く険しい特訓に励んできたんだから……」
「で、でもよ、相手はあの真紅の魔女だぜ? しかも王国魔術師団ですら驚くほどの実力の持ち主らしいじゃないか」
「そ、そうだよフィオナ。俺たちだってそりゃ勝ちたいけど……格が違いすぎる」

 フィオナに対して否定的な意見が次から次へと出てくる。
 するとそんな姿を見ていたリーフが、

「……わ、わたしもフィオナと同意見です。諦めるのはまだ早いんじゃないかな……」
「り、リーフちゃんまで……」

 不安が強い彼らの心にはまだ二人の想いは届いていなかった。

 すると、


 ―――バンッッッッ!

 机を蹴り飛ばし、足を乗っけるはこのクラスの問題児ガルシア。
 そんなグダグダした様子を見ていたガルシアは弱音を吐く連中へ睨みながらこう言う。

「けっ、どいつもこいつも根性なしばっかだな。それでも魔術師(キャスター)候補かよ。全く家柄良い坊ちゃん、嬢ちゃんばっかでヘドが出る」
「……な、なんだと?」
「おいガルシアてめぇ、もう一回言ってみろ」
「ああ、何度でも言ってやるよ、この根性なし共が」
「くっ! このクソ野郎……!」
「てめぇ……」

 怒りを露わにした男子生徒たちがガルシアの元へ歩み寄る。
 凄い形相でガルシアを威嚇。しかしガルシアはそんなことはもろともせずガン無視し、さらに傷口は広がっていく。

「あわわわわ……せ、先生なんか喧嘩が始まっちゃいましたよぉ……」

 慌てるハルカに俺は肩をポンと叩き、「いいから見ていろ」と宥める。
 レーナはさすがというべきか何も動じず至って冷静だった。

「おいガルシア、今のは高等貴族階級の者に対する侮辱だ。今すぐに謝罪しろ」
「そうだ、俺らはお前と違って家柄が違うんだ。平民と変わらない下等貴族ごときが調子に乗るなよ」

 散々な言われ様。だがガルシアは目を瞑ったまま何も言わない。

「……くそっ、舐めやがって!」

 一人の男子生徒の拳が彼の頬めがけて狙いを定める。
 周りの生徒たちは唖然とするが、ガルシアは動じない。

「覚悟しろよ、ガルシアぁぁ!」

 男子生徒はそのを握りしめた右手をガルシアへ向けて振り下ろす。
 見ていられないと目を瞑る女子生徒たち。

 だが、その男子生徒の拳はガルシアの頬の手前でピタリと止まった。

「……ぐ、ぐぬぬぬ」

 ガルシアはパッと目を見開き、男子生徒を見る。

「どうした、殴らないのか?」
「くっ……」

 男子生徒の拳はピタリと止まったまま動かない。
 するとガルシアはフッと笑い、

「そうだ、それが今のお前らの現実だ」
「な、なに……!」
「目上の者には盾突けない。お前は自分の実力が俺よる劣るから殴らなかったのだろう?」
「……ッ!」
「今、貴様たちが抱えている不安はそれと同じだ。相手は真紅の魔女と言った異名を持ち、実力も王国公認という破格のスタッツを持つ相手だ。規格外な相手だからこそ、皆戦う前から諦める。誰しも負けるということを快く思う者はいないからな」

 クラス全員の視線がガルシアに向かう中、彼ははそのまま話を続ける。

「……だがな、俺は最初から諦めるつもりは全くない。俺には誇りがあるからな」
「ほ、誇りだと?」
「ああ、貴様たちも何か思う所があるから今まで頑張ってきたんじゃないのか? 俺が見ている限りでは特訓中にサボっている者は一人も見当たらなかった。貴様たちは無意識に何かの原動力によって突き動かされている。違うか?」
「……」

 黙り始めるA組生徒たち。
 だがここで一人の女子生徒が、

「わ、わたくしは王国魔術師団に入りたいと夢見て頑張って参りましたわ! まだまだ未熟ですが……」
「お、俺も同じだ! 強くなって、そして王国で魔道兵士になりたいと夢見てここへ来た」
「ぼ、僕はよ、弱い自分を変えたくて……それでそれで……」

 次々と生徒たちが立ち上がり、自らの意志を声に出す。
 男子生徒はその光景を見ると何も言わず、ただ立ち尽くす限りだった。

「貴様はどうなんだ? 叶えたいものはないのか……」
「お、俺は……」

 下を向く男子生徒。クラスメイトたちの視線は一気にそちらの方へと集まる。

「……強くなりたい」
「……ん?」
「俺は強くなりたいんだ! どうしても! もう……家柄だけに囚われる人間にはなりたくない! 俺はそのために遠い辺境の小国からアロナードまで来たんだ! だから……」

 拳を握り、思いのたけをぶつける男子生徒。
 その姿をガルシアは少し笑い、

「……だったら理由はいらないんじゃねぇか? 強くなるためにやってきた。その成果を見せたいだろ?」
「……ああ、当たり前だ! 俺だって……プライドがある。本当は負けたくない」
「ふん、だったら気張れや。あまり女々しいことを言っていると今までの特訓がくだらんお遊びに思えてくるだろうが」
「ああ、すまんガルシア。悪いことを言ったな」
「理解できただけでまだマシだ。次くだらんこと言ったらそん時は覚悟しておけよ」

 最後の最後で棘のある言い回しだが、なんとか和解できたようだ。
 クラスの雰囲気もガラリと変わった。あの問題児のおかげで……

「みんな、相手がどんに強大でも私たちならきっとやれる! 最後まで諦めないで全力でぶつかっていこう!」

「「「「「おおおおおおお!」」」」」

 一念発起し、再度クラスが一つになる。
 そんな姿を見ていたレーナは小声で耳打ちをする。

(これも計算の内ですか? レイナード)
(どうだろうな。だがあいつはもう問題児という枠からは外さなきゃならんみたいだ)
(そうですね。私もガルシアの意見に賛成です。成長しましたね)
(ふん、さすがにいつまでもガキでは困る)
(そんなこと言って……彼に更生にあなたが一役かっているのは知ってるんですよ?)
(はて、何のことだか……)

 予想以上に彼らの心は大人へと近づいていた。
 これなら強大な敵であろうと屈せず立ち向かうことができるだろう。

 そんなことを心の中で思いながら俺は彼らを見つめていた。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...