元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第84話 乙女心

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「なんだと、フィオナが?」
「あ、はい。突然倒れてしまって……」
「今はどこに?」
「日陰のある所で休ませています」
「分かった。レーナ、ハルカ、二人は準備をしていてくれ」
「わ、私も行きます」
「そうです! そんな一大事、副担任として見過ごせられません!」

 これは多分何言っても聞かないな……
 フィーネには悪いが、ちょっと抜けさせてもらうか。

「よし分かった。二人も来てくれ」
「「はい!」」

 俺は近くの設営担当に一言告げるとリーフに案内され、フィオナがいる所へと向かう。
 彼女が寝ていたのは演習場近くに生えている木の下だった。そこにはA組の生徒たちがフィオナ囲みながら心配そうに見つめている姿があった。
 
「ちょっと、どいてくれ」

 生徒たちをかき分け、倒れているフィオナを見る。
 
「おい! 大丈夫か!?」
「……んん、んんん」

 弱体化して言葉もまともに話せない、そんな症状だった。
 そして何かに魘されているかのように苦しそうな表情をする。

「魔力の欠乏……それと熱中症の症状も見受けられるな」

 脈や関節の動きなど調べられることは全て試してみる。
 どうやら他に異常はなさそうだった。

「レイナード先生、フィオナは……」
「ああ、今見た限りだと魔力の使い過ぎと暑さのせいによるものだな。とりあえず医務室に運ぶぞ。ハルカ、今は生徒たちを頼む」
「わ、分かりました!」
「それなら私が運びます」

 レーナはフィオナを抱きかかえ、俺と共に医務室へと向かう。
 
 演習場からは比較的近くに医務室があるため、運ぶのには苦労しなかった。
 あとは……

「ミキ! いるか!」
「うおおおっ!? び、びっくりしたぁ……」

 良かった。これで治療が受けられるな。
 
 ひとまずホッとする。

「ど、どうしたんですかそんなに慌てて」
「急病人だ。こいつを見てやってくれないか? うちのクラスの生徒だ」
「こ、これは……わ、分かりました、すぐに!」

 フィオナはすぐさま治療室にあるベッドへと寝かせられ、ミキの治療を受ける。
 
「すまなかったレーナ、力仕事をさせてしまって。もう戻って大丈夫だ。後はオレが見る」
「は、はい……あ、あの……!」
「ん?」
「えっと……フィオナは大丈夫なのでしょうか。私……心配で」

 そういうとレーナは胸に手を当て、祈るように俯く。
 レーナの生徒想いな所はそのまま仕事にも良い方向へと反映されている。
 彼女も今のフィオナと同じくらい心を痛めていることだろう。

(こういう時、どうすればいいのか分からないが……こうするしかないか)

 俺はレーナの頭に手を乗せる。

「ふにゃ!……れ、レイナード何を……」

 猫の鳴き声のような可愛らしい声が医務室に響く。
 落ち込んでいる相手がいたら頭を撫でる。すると大体は解決すると神魔団時代の時にドリル女が言っていた。当時は半信半疑だったが今となれば理解ができる。
 前にもオルカはハルカの頭を撫でた時も二人とも嬉しそうな笑みを浮かべていた。
 
(ある意味、魔法のような行為だよなこれ)
 
 俺はその手をゆっくりとレーナの頭の上で転がすように動かし始める。

「……気にするな、フィオナは大丈夫だ」
「そ、そうですよね……」
「ああ。ホントにお前の生徒想いな所は脱帽だよ。ま、オレはお前のそういう所に割と好意を持っているがな」
「そ、そそそそれはつまり……私のことをす、す……」
「す?」

 レーナは何を感じたか、いきなり挙動不審になる。
 その上顔も真っ赤に染め、目が合うとすぐにそらす。
「どうした」と声を掛けるも目をそらしたまま返事はない。

「だ、大丈夫か……?」
「ひゃ、ひゃい? だ、大丈夫れす」

 呂律がまわっていないとこからして大丈夫なようには見えない。
 顔も数秒前よりも紅色になっていた。

「れ、れー……」
「す、すみません! わ、わたし仕事に戻りますね!」
「おい!」

 レーナは俺の言葉を大声で遮り、そのまま逃げるようにして医務室を去っていった。
 
(な、なんなんだ一体……)

「彼女も乙女ですねぇ……」
「み、ミキ……」

 白衣を身に付けたミキが肩を抑えながら治療室から出てくる。
 普段はかけていない赤いフレームの眼鏡が彼女の大人っぽさをさらに際立たせていた。

「ミキ、フィオナは?」
「そーのーまーえに、先生はちゃんと彼女の気持ちを分かってあげているんですか?」
「ん、彼女? 一体誰の事だ?」

 するとミキは呆れるように溜息をつき、腰に手を当てる。
 
「はぁ……ホントあなたって人は。レーナちゃんのことですよ」
「レーナ? レーナがどうかしたのか?」
「ホントに分からないんですか? 演技とかじゃなく?」
「な、何を言っているんだミキ。 演技だ? オレはそんな面倒なことはしない」
「はぁ……こりゃ重症ね」

 重症? 何のことだ? 全く分からん。
 前にも誰かから似たようなことを言われたような気がするが……思い出せん。
 
 俺はミキに理由を尋ねる。

「どういうことだ? オレはレーナの気持ちなら分かっているつもりだぞ?」
「そうには見えませんでしたけどね……レーナちゃんが気の毒です」
「むっ……」

 別に教えてくれてもいいじゃないかと思う。でもミキは教えたら意味がないといい口を割ろうとはしなかった。
 ただ一つ思ったのは『オトメゴコロ』という単語(ワード)が頻繁に出てきたことだ。
 
 オトメゴコロ……言葉だけならドリル女が口酸っぱく言っていたので存じてはいるが意味自体は分かっていない。

(オトメゴコロとは……一体なんなのだ?)

 確かに先ほどのレーナは様子がおかしかった。それもそのオトメゴコロとやらに関係しているのだろうか? くそっ、頭が痛くなってくる。

 頭を抱えてながら考えていたその時だった。

「あ、あの……先生?」
「待て! オレは今ちょっと忙し……フィオナ?」

 そこに立っていたのはふらつきながらも近くの手すりで体勢を整えるフィオナの姿だった。
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