68 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する
第67話 助手として……
しおりを挟む両者、一歩も譲らぬ攻防。互いに一歩も引かない勝負が演習場で行われていた。
(初めて戦っている所みたが二人とも中々だな)
レーナは基本的に白魔術を多用し、ハルカは白、黒、精霊魔術など多様な術式で迎え撃っている。
やはり一人の魔術講師としての技能は双方とも相当なものを持っているようだ。
(うーむ……これは総合競技の際に出場メンバーたちとタイマン張らせるってのもありかもな)
「ああ! やっと見つけはりましたで!」
「ん?」
遠くで二人の熱戦を見ていると背後にスカーレットの姿があった。
何やら不満を抱いているような表情だ。
「スカーレット……? あ……」
「忘れた……とは言わせまへんで」
(そ、そうだったー! 何か忘れてるなと思ったらこれだった!)
「い、いやすまんスカーレット! 忘れてたわけじゃないんだ。こっちも仕事があるしな!」
「へぇ……こない所でのんびりと人様の戦い眺めているんが仕事だとでも言いたいんですか?」
ぐっ……この女よりにもよって痛い所を突いてきやがる。まぁこいつにごまかしなぞ通じないことなんて承知の上だったが。
「はぁ……悪かった。完全に忘れてたわ」
「そんなことだろうと思ってはりましたよ。いいです、元英雄さんに免じて許したりますよ」
「ああ、すまん」
スカーレットは何も言わずに隣に座る。そして胸ポケットから葉巻を取り出し、火をつける。
「ふぅ……やっぱうめぇなこのシガーは」
「お、おい。学園内は禁煙だぞ?」
「男がそんな小さいこと気にするなって。大丈夫、フィーネはんにはもう許可取ってはるから」
肩をバシバシと叩きながら葉巻を吸うスカーレット。
実に勝手な奴だ。突如現れたかと思ったら好き勝手やっている。
見た目はそこそこ顔の整った女の子、なのに中身はチンピラみたいなものだ。
「あの二人はおまんとこの教え子か?」
「いや、違う。助手だ」
「助手やて? はっはっはっは!」
「何がおかしい?」
「いや、悪い悪い。お前さんみたいな一匹オオカミだった奴が良くもまあ魔術講師なんぞ引き受けたな」
言われればごもっともである。俺はこいつの言う通り組織内でもあまり馴れ合いを避けてた一匹オオカミ。今の俺は昔とは想像を絶する程様変わりしているのは自分でも自覚していた。
「訳アリだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「あっそう。それにしてもええなぁ~あんなに可愛い娘が二人も助手とは……な、もうやることは済んだんか?」
「は? やること? なんのことだ」
するとスカーレットは大声を上げ、腹を抱えて笑い出す。
「おまんまじか! その年になってまだ済ましとらんのかいな」
「だから何をだ!」
「ここまで言っても気づかんか。まぁいいや」
頬を歪ませ、ニヤリと笑う。
そしてスカーレットはゆっくりと立ち上がり、俺に葉巻を渡す。
「ん、どういうことだ? 俺は葉巻など吸わないぞ? それにお前はここへ何しに来たんだ?」
「まぁいいから吸ってみぃ。ごっつうまいからさぁ。それと……」
「……?」
「後で学園長室へと来い。うちがこない所までわざわざ足を運んだ理由を教えたる」
「なんだか……ただ事ではなさそうだな」
「ふっ、相変わらず鋭いな。まぁ後で来てくれや」
「分かった」
「ほなそゆことで」
スカーレットは俺に葉巻を持たせ、去っていく。
(あの雰囲気、嫌な感じだな)
俺は引き続き、二人の戦いを眺めることにする。
両者とももうボロボロになっていた。それでもまだ互いに立ち上がり勝負を続ける。
(こりゃ……決着つかないな)
「はぁぁぁぁぁ!」
「やぁぁぁぁぁ!」
魔術と魔術のぶつかり合い。それを見てると昔の自分を思い出す。
力で何とでも言わせていたあの時代。懐かしく思う反面、今のご時世ではあまり快く思われないので繰り返してはいけないとも思う。
英雄、そして引きこもり、そして一人の魔術講師として生きている今だからこそそう思えるようになったのだ。
(ま、過去のことなんかあんまり覚えていないだがな……そろそろやめさせるか)
俺は立ち上がり、レーナたちの元へ。
「二人ともそこまでだ」
「えっ? でもまだ勝負は終わって……」
「もう十分だ。二人ともいい動きだったぞ」
「で、でも……それじゃあ勝敗が」
双方ともまだ戦いたい様子だった。でもこのまま戦わせたらただの潰し合いになりかねない。
なら……
「勝敗はもう決している」
「じゃあもう勝者が……?」
俺はコクリと頷く。
両者の目線は俺に釘付けだ。
「それじゃあ発表するぞ……」
ゴクリ……
俺たち以外誰もいないこの広い演習場が二人の戦いが終わった途端、一気に静けさを取り戻す。
「勝者は……二人ともだ」
「……え?」
「先生、それは……」
「いわゆる引き分け。この三番勝負は五分だ」
俺の決断によって二人とも黙り始める。
まぁ勝敗をつけたかったからにこの判断はあまり適切ではなかっただろう……特にハルカはそうだ。
ハルカは俺に訴えかけるような目を向けてくる。
「先生、でもそれじゃあ!」
「あのなハルカ、俺は最初から二人が勝負すること自体が反対だったんだ。なぜかわかるか?」
「い、いえ……」
「そうか。ならこの際だから教えてやる。それは二人ともオレの大切な助手だからだ」
「大切な助手……ですか?」
「ああ。だから優劣とか言って二人で殴り合うことはもとから快く思っていなかった。オレは二人とも違った特色があって十分優秀だと思っている。現に今、オレは二人に助けられてばかりだ」
「そ、そんなことは……」
ないとでも言いたいのだろうか。そうだとしたら答えは否。
正直この二人がいなければ仕事にならない時が何度もあった。
二人にはとても感謝しているのだ。
「何を争ってこんなことを始めたのかは知らない。でももうこういうことで優劣をつけるのはなしだ。それでもというのなら仕事でつけてくれないか?」
「せんせい……」
「レーナもだ。分かったか?」
「は、はい……! すみませんでした……」
「分かったならいいんだ。すまないがオレはちょっと用事があるから外すぞ」
「お手伝いしましょうか……?」
「いや、大丈夫だ。すぐに戻る」
はいと頷き、俺は演習場を去る。
(はぁ……やっと片付いたな)
手に持った葉巻を近くのごみ箱へと捨て、俺は学園長室へと向かう。
そのころ……
「やっぱり……カッコいいなぁレイナード先生」
「は、ハルカ?」
「いよーし! こうなったら仕事で先生にいい所を見せなければ! 負けませんよレーナ先生」
「うん。ともに切磋琢磨してレイナード先生をサポートしましょう」
「はい! そしてゆくゆくは先生と……うふふふふ」
(ホントにレイナードのことが好きなのね……でも私だって負けない。だって私は……)
二人の関係は勝負を通じて良い方向へ結びつつあった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる