元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第57話 予行演習3

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「遅いですよ、せんせー!」
「わ、悪い……」

 男子生徒たちに遅かったことを指摘される。
 あまりに没頭していて時間をよく見ていなかった。
 
「それで先生。今から何を」
「ああ、それなんだが今からお前たちにもう一回飛んでもらう。それも実戦形式でだ」
「タイムトライアルってことですか?」
「そうだ。それと一個縛りをつける」
「縛り?」

 それはスピードを落とさずカーブを曲がるというルールだ。
 少しでも落としたら即失格。感覚を掴むまでやり直すといったものだ。

「で、でもせんせーそんなことできないっすよ。トップスピードでかつカーブを曲がりきるなんて」
「それを無理にでもやるんだ。何かあったら俺がなんとかする。結論を言わせてもらえばそれができなければお前たちに勝ち目はないだろう」
「うっ……!」

 そうだ。俺たちは優勝を目指している。
 たかが同学年にも勝てずして優勝はない。
 不可能を可能にしなければ届かない場所だと今日の予行演習を見てはっきりした。

「という事で分かったな。とにかく全力でぶつかっていけ」
「「「「「はい!」」」」」

 こうして俺たちの特訓は始まったのだった。


 ―――そして時を同じくして1年B組作戦会議室では……


「いいですね? 皆さん。我々が魔技祭で優勝するにはバンゴット先生率いる2年A組と”あの方”が率いる3年A組から勝利を勝ち取らないといけません。しかしですが私たちは彼らと比べるとまだまだ力不足な点が今日の予行演習で見当たりました。改善が必要です」

「そりゃそうだけどよラルゴ先生。A組の連中も中々あなどれんと思うぜ?」
「そうですわね。リアムの言う通りレイナード教授が率いるA組も危険視したほうが良いかと思いますわ」

 彼らはリンドリウム姉弟。
 B組の主力メンバーでフィオナやガルシアたちにも引けを足らない才能の持ち主だ。
 
「そーんなに危険視しなくてもいいんじゃなぁい? 目的はただ一つ、何がなんでもぶっ倒すことだけ考えればいいんだよ」

 この男勝りな雰囲気を醸し出す女子生徒はアグリ。
 B組主力メンバーの一人で騎士系貴族の名門家。
 多くの有能な騎士たちを輩出しており、彼女もまた逸脱した剣術と体術の持ち主だと言う。
 
「まぁまぁ、落ち着いてください。今はラルゴ先生のお話を聞きましょ?」
「ちっ、相変わらずあめぇなぁマリーナは」

 そしてこのいかにも優秀そうな女子生徒はマリーナ。
 B組主力メンバーの一人で魔術と錬金術の二刀流キャスター。
 実家は錬金術師の超名門家でその才能は計り知れない。まったく異なる分野である魔術も独学で会得するほどの潜在能力を有している。

「なるほど……では皆さんはA組を危険視しているのですね?」
「まぁな。今日の演習で俺と同じトップバッターだったあいつ……女といってみくびっていたが中々の強者だ」
「ええ、それに他の生徒たちもさすがA組と言える人材ばかりでしたわ」
「恐らく、今日の私たちの戦法を見たことによって対策を考えてくるはずです」

 彼らは一同にA組を警戒する。

「そうですね……確かに気にしなければならない相手かもしれません。なぜならあのレイナード先生が率いているのだから……」



 * * *



 ―――場所は移り、演習場。

「よし、そこまでだ」
「ふぅ……やっとかぁ」
「ああ、でも手ごたえは相当感じたぞ!」
「これならいけるかもですね!」

 彼らは今回の特訓で手ごたえを感じたようだった。
 確かに動きも良くなっており、ほんの数時間前のメンバーと同じとは思えないほど成長していた。
 元々才能がある連中のためか成長もそれなりに早い。

 これならB組の戦法に対抗できる。
 明々後日に再び行われる模擬戦には期待できそうだった。
 
「先生」

 話しかけてきたのはリーフだ。

「どうした?」
「あの……今日は特訓に付き合っていただきありがとうございました!」

 彼女はこれでもかというくらい頭を下げる。
 
「特訓に付き合わせたのは俺だ。こちらこそ無理言って悪かった」

 そういって俺はリーフの頭をポンポンとたたく。
 
 するとリーフは少し赤らめた顔をあげ、

「その……先生。明後日の模擬試合、絶対に勝ちます!」

 いつも奥手な彼女の真剣な眼を見るのは初めてだ。
 身体全体からやる気オーラが満ち溢れている。

「ああ、期待しているぞリーフ」

 俺は少し硬いながらも笑顔でそう返した。
 
 なんだろうか、身体も心もしんどいはずなのに疲れをあまり感じない。
 そもそも今の時間帯だととっくに帰宅をしているはずだ。
 成し遂げたいものが見つかるとこうも変わるものなのか……

 俺はその日、不思議な感覚を感じながら帰途を辿った。
 そして気が付けば明後日となっていた。

 今日はB組との空術競技最後の予行演習だ。
 
「せんせー!」

 空術競技の選抜メンバーたちが俺の所へと集まって来る。
 
「よし、集まったな?」
「はい、全員います」
「よし、今日はB組との最後の模擬試合だ。言っておくが少しでも気が緩めば勝利はない。特訓の成果を大いに見せてくれ」

「「「「「はい!」」」」」

 気合いは十分。
 他はなにも心配することはなかった。

「それでは両者、位置についてください」

 スターターが準備をするように促す。
 
 B組のメンツはあの時から変わっていない。
 順番もそのままだ。
 かくいうこっちもメンバーは変えず、スタート順もそのままにした。

「なるほど、そう来ましたかレイナード先生。ふふふ、面白くなりそうですね」

 ラルゴは笑みを浮かべながら位置につく生徒たちを眺める。
 
 さて……次はどうなるだろうか? 
 明確な予想がつかない。
 でも負ける気はしなかった。

 俺は晴天の空を見上げ、リーフたちを見守る。
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