元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第48話 アロン大魔道技術祭

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 ―――コンコン。

「はーい、どうぞー」

 俺は静かに扉を開ける。

 ―――ガチャ。

「よう」
「あら、レイナードじゃない。早かったわね」
「順調に事が運んでな。予定より早く帰れた」
「それは良かったわね」

 学園長、フィーネ・アロナードの目線はすぐさまオルカの元へ向いた。

「で……その子は?」

 フィーネが質問するとオルカが、

「あ、こんにちは。お初にお目にかかります学園長さん。私は娘のオルカ・アーバンクルスと申します」
「えっ……?」
「は……?」
「ん……?」

 場の空気が一瞬だけ静寂に包まれる。

「え、えっと……どういうことかしらレイナード先生? 確かあの時、学問研究という形で遠征の許可をしたはずですが……?」

 フィーネの顔が引きつっている。
 紛れもなくお怒りモードである。

「いや、ち、違う誤解だ! オルカは遠征先で奴隷として扱われていた所を救ったのだ!」
「へぇ……貴方、いつからそんな寛大な人柄のなったのでしょう?」
「ぐ……」

 確かに、今までの俺では決して成さなかった行為だ。
 当時の俺に慈悲なんてなかった。敵ならなり振り構わずに冥界送りにしたし、奴隷を助けるなぞもってのほかだった。

 くそ……過去の所業が裏目に……

 俺が頭を悩ませていると、

「が、学園長先生!」

 ハルカが申し立てる。

「ん? どうしたのハルカ先生」
「あ、あの……レイナード先生が言っていることは本当です。じ、実は……」

 ハルカは少し震えた声で遠征の真相を全て打ち明けた。

「なるほど……そういうことだったのね」
「す、すみませんでした! 私が……悪いんです……」

 ハルカは必死に頭を下げる。

「俺からも謝罪しよう。嘘をついて悪かったフィーネ」

 俺はハルカの前に出る。

「れ、レイナード先生?」

 ハルカは俺に頭を下げながら俺の方を向く。

「お前が悪いんじゃない。そうしようと言ったのはこのオレだ」
「で、でも……」
「気に病むな。オレが代わりに罰を受ける」

 そう言うとフィーネが、

「分かった。許すわ」
「ふぃ、フィーネ学園長?」
「本当はダメよ? 今度はしっかり言って頂戴ね」
「あ、ありがとうございます! 学園長先生、レイナード先生」

 ハルカは俺とフィーネにこれでもかというくらい頭を下げる。

「それで、報告は以上かしら?」
「あともう一つある。ハルカを正規講師に格上げするのとオルカの初等部への入学を許可してほしい」
「えっ……? 私が?」

 ハルカはまさかの一言に動揺する。

 だが、フィーネは、

「オルカちゃんのは大丈夫だけどハルカ先生は実習期間が足りないわ」
「オレが一講師として許可する。彼女に実習なぞ必要ない。それ相応の技能は持っている」
「それは貴方の判断……かしら?」
「ああ、そうだ」

 うーんと首を傾げながら考えるレーナ。
 しばらく沈黙が続き、一つの結論が出る。

「はぁ……よし、分かった。許可するわ。その代わりレイナード、貴方が彼女に責任を持って教えるの。いい?」
「分かった。約束しよう」

 話はまとまった。
 オルカは来週から初等部へと入学することが決まり、ハルカはアロナードの魔術講師として新たな人生を歩むことになった。

「他にはないかしら?」

 俺たちは首を振る。

「分かった。じゃあ今度は私からいいかしら」
「なんだ。話があるのか」

 俺は早く帰りたいがため残念な顔をする。

「そりゃあるわよ。今の時期を考えなさい」
「今の時期……?」

 今の時期と言われても俺には見当もつかない。
 だが、レーナはこれに気付いたようで、

「ああ! アロン祭ですね!」

 アロン祭だと? 確かさっき誰かがそんなこと言ってたような……

 数十分前の話をもう忘れる。
 だがなぜかハルカは異国人にも関わらず、その祭りを知っているようだった。

「その通り。今年も盛大にやる予定よ」
「大魔道技術祭ですよね! 私一度見てみたかったです!」

 ハルカが少し興奮している。

 大魔道技術祭だと? 初めて聞いたぞ。
 だが、なぜ異国人のハルカが知っているのだ? それほど有名な祭りなんだろうか。

「知らんわそんな祭りって顔ね」

 俺の顔を見てフィーネはすぐさま反応する。

「ああ、初めて聞いた。そんなに有名なのか?」

 するとハルカが俺の腕をガシッと掴む。

「し、知らないんですか!? 大魔道技術祭を!」
「あ、ああ……」
「ま、マジですか……」

 普段より何十倍も勢いのあるハルカに言葉が出ない。
 フィーネも少し呆れた表情をしているし、レーナも苦笑いをしている。

 なんか世間知らずのレッテルを張られた気分だ……いや、張られたのか。

「で、その祭りはなんなんだ?」
「もう、仕方ないですね。あ、フィーネ学園長、私が説明をしてもよろしいでしょうか?」
「え、ええ。大丈夫よ」

 彼女はこのイベントに熱い想いがあるようだ。
 とりあえずここは黙って聞くことにする。

「えーコホン。まずアロン大魔道技術祭とは年に一度、アロン祭の一環として行われる魔術競技祭です。アロナード学園の生徒全員が参加する一大イベントで毎年多くのギャラリーがつめかけ、アロン祭のメインイベントと言っても過言ではない最高にして至高のイベントなのです!」
「な、なるほど……」

 とりあえず何か反応する。
 腕を掴まれたまま、声を張り上げて説明してくるので脅迫されている気分だ。

「その歴史は今から数千年に遡り……」
「あ、あの~ハルカさん、そこまでに……」

 関係のないことを語りだした瞬間にフィーネが止めに入る。

「えっ……? あ! す、すみません! わたしったらつい……」

 自分の世界に入り込んでしまっていたことに気付き、顔を赤らめる。

「残りは私が補足説明するわ」

 そんなわけでフィーネに詳しい情報を話してもらった。

「ほう……要するに学年関係なしにクラス対抗で魔術を用いた競技をすると」
「そういうこと。優勝クラスには賞金とクロード国王から何でも一つ願いを言う権利を与えられるわ」
「しょ、賞金だと!? いくらだ?」

 願いを言える権利より、金の方に目がくらむ。

「ホント、金に関しては目がないのね。5000万フラムよ」
「ご、5000万フラムだと!? たかが祭りだぞ」
「それだけこの国が繁栄しているってことよ。それにアロン祭は建国者、アロン・フィ―バル・クロードの誕生を祝す重大イベント。たかがとかいうと国の連中が怒っちゃうわ」

 5000万フラム……それに願いも言える権利も与えられる……
 もし願いで賞金をもっとほしいと願えばさらに稼げるのではないか? そうしたら1億越えも夢じゃない。

 頭の中で夢の構造が出来上がっていく。

 これは元の生活チャンス! ガッポリ貰っておさらばしよう。

「ちょっと、レイナード先生聞いてるの? おーい」
「んあっ!? ああ、フィーネか」

 マイワールドに入ってしまい、周りが見えていなかった。

「大丈夫? そんなわけで準備しといて頂戴ね。あと、魔技祭に向けて講師陣は準備もあるから参加を忘れないように」
「ああーはいはい。分かった分かった」

 俺の頭の中は金のことでいっぱいだ。
 他のことを考えている余裕などなかった。

「ホントかしら……? ああ、一つだけ言っておくけど不正行為は禁止よ? あと準備に参加しなかったらクラス点を引いておくから」

 ちっ……マジか……
 なんとか理由を付けてサボろうと思ったが、そうもいかなくなってしまった。

「と、いうことでズルしたりサボったら身を滅ぼすってことを理解しておいてね。分かった?」

 俺たちは静かに頷く。

「じゃ、私からは以上よ。ごめんなさいね休日に来てもらっちゃって」
「全くだ。くそったれ」

 こう言うとフィーネがじーっと見てくる。

「あれぇ~? そんなこと言うと減点されちゃうかもよぉ~?」
「なっ!」

 軽く脅される。
 
 くそっ……卑怯者め。このロリババア!

 とりあえず今ぶつけたい言葉は心中にとどめておく。

「それじゃ、解散ってことで。お疲れさまー」
「お疲れ様です」「お疲れ様ですっ!」

 俺はフィーネに背中を向ける。

 よし、これから作戦を練らねばな。

 こうして、俺たちは学園長室を後にした。
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