元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
42 / 127
第3章 おっさん、冒険をする

第42話 賢者の間

しおりを挟む

「オルカ、ハルカの居場所の目処はつくか?」
「はい、恐らく賢者の間かと」

 オルカ救出後、俺たちは彼女の情報を頼りにハルカの捜索を再開していた。
 今の所誰かに見られてはいない。
 とりあえず誰かに見つかる前にハルカを発見したい。

 俺たちはゲッコウの屋敷を駆け回る。

「賢者の間……?」
「そうです。あそこの間は特殊な結界で覆われています。隔離されているのならば可能性が高いと思います」
「場所は分かるのか?」
「大丈夫です。幸いにも使用人としての仕事をしていた頃に一度だけ見たことがあります」
「心強い。頼むぞオルカ」
「はい!」

 賢者の間は屋敷の裏側に独立した講堂の中にあるという。
 だが周りには人払いの結界が張られており、許可のない者が立ち入れば一瞬にして業火の渦に飲み込まれてしまうらしい。

 にしてもしんどい。
 オルカは足と手を鎖で縛られているため、歩けても走れない。
 よって抱えながら走っているわけなのだが、体力が持たない。

「くそっ……少しくらい運動しておくべきだったな」
「あ、あの……その……ごめんなさい。重たいですよね」

 オルカが申し訳なそうに目を見てくる。
 
 だが俺は特に顔色変えず、

「いや、問題はない。オルカこそ邪魔じゃないか? よかったら鎖を千切るが……」

 しかしオルカは首を振る。

「それはダメなんです。この鎖には特殊な魔術が込められています。無理矢理千切ってしまうと……」
「魔術が発動してそのまま天国行きってことか……」
「は、はい……」

 参ったな……正直辛い。
 あのゴリラ野郎……ふざけた細工しやがって。

 すごくきついが表情を変えるとオルカにバレてしまうので何とか踏ん張る。

「そういえば、レイナードさんって女性……ですよね?」
「え?」

 ああ、そうだった……今は俺の姿ではなかった。
 汚点だ。ナチュラルに素の自分を出してしまった。

 いや……今は誤魔化そう。変な事を言えば混乱を招くだけだ。

「へ、変か?」

 俺はオルカに恐る恐る問いてみる。

 するとオルカは、

「いえ、凄くかっこいいです! 同じ女性なのに芯の強さと太さというか……女性とは思えません」
「そ、そうか……なら良かった」

 実際は男なんだがな……後でなんて言おうか……

 幼い子を騙しているようで少しばかりの罪悪感を感じる。

 まぁ……いい。後でレーナにも協力してもらって適当な理由でもつけよう。

 ちょうど屋敷の裏側まで来るとレーナが、

「レイナード、あそこじゃないですか?」

 レーナの指さした方向にはひと際大きな建物があった。

「そうです、あの建物が講堂です」

 オルカも言う通りあの建物が講堂のようだ。

「何とか誰にも見られずに着いたな」

 運がいいのか知らないが、面倒なことにならずに目的地まで辿りつくことができた。
 とりあえず今は講堂の周りにある結界が問題だ。

 隠れながら講堂の良く見える所へ移動する。

「周りの護衛兵は……いないな。それに静かだ」
「そうですね……よほど結界による効果が強いでしょうか?」
「それもあるかもしれないです。講堂に張り巡らされている人払いの結界はゲッコウ様が作りだしたものらしいので」

 となると検証が必要だな。
 俺は二人に、

「二人とも、ここで待機だ。誰かが来たら知らせてくれ」
「レイナード、何を?」
「結界の強度を調べてくるだけだ。すぐ帰って来る」
「きょ、強度を調べるんですか!? 危険すぎます! それに、一人の手で簡単に壊せるものじゃ……」

 俺を止めようとするオルカにレーナがそっと言う。

「大丈夫よ。レイナードはこう見えても凄い人なんだから」

 こう見えても……って……
 まぁ、この姿を見れば強そうには見えないよな。
 
 複雑な感情だが仕方ないと受け止める。

「じゃあ頼むぞ」
「はい」「わかりました」

 俺は二人に見張り番をやらせて結界へと近づく。

「ふむ……結界が張ってあるのは本当のようだな。だが妙だな……この程度の結界なら中級魔術師でも破壊できるレベルだ。オルカの言っていたことは間違いだったのか?」

 しかし、これくらいなら突破は容易だ。
 俺は二人に此処へ来るよう呼びかける。

「レイナード、どうでしたか?」
「問題はない。薄い結界さ、護衛にしては貧弱だ」
「それならすぐにハルカの所へ」
「ああ」

 俺は結界を軽々と破壊し、講堂の中へと入っていく。
 
 中に入るとそこはとてつもなく広い空間が続いていた。

「なんだこれは……」
「スゴイですね……無限に続いているようです」
「講堂では召喚研究が行われていたと聞いたことがあります。今は使われてないみたいですが」

 なるほど……どうりで広いわけだ。

「レイナード、早く賢者の間へ」
「ああ、そうだな。オルカ、案内を頼む」
「はい!」

 俺たちは賢者の間へと急ぐ。
 そして……

「あそこが賢者の間です」

 視線の先には特になんの変哲もない大きな扉が一つあった。
 周りに人の気配はない。

 後は扉が開いているかどうかだ。
 俺は開くかどうか確認をする。

 ―――ガチャ。

「ん? 開いているぞ」

 扉は施錠されておらず開いたままだった。

「ということは誰かが……」
「ああ、その可能性は高いな。気を付けていくぞ」

 慎重に中へと入る。
 中は真っ暗で何も見えない暗闇の空間だった。

「これじゃ何も見えんな。二人とも大丈夫か?」

 俺が声をかけた次の瞬間だった。

 ―――ビューン!

「……!? なんだ?」

 地面が揺れている。
 これは……吸い込まれている?

 揺れと同時に足が地面へとめり込んでいくのを感じる。

「ちっ、転移結界か」

 逃れようと試みるがビクともしない。
 動けば動くほど足が地面にめり込んでいく。

「くっ、ハメられたか……」

 
 俺はそのまま地面に吸い込まれ、意識を失った。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...