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第3章 おっさん、冒険をする
第33話 ゲッコウ・スメラギ
しおりを挟む行く先は段々と人気のない所へ。
そして繁華街の裏手にある貧民街へと場所を移す。
「どこの国でもこのような場所はあるんですね」
「そうですね……貧民はどこの国でも抱える大きな悩みですからね。解消されることはほぼ無いに等しいです」
繁華街とは一変した風景だ。
辺りも薄暗く、先ほどのような活気を全くもって感じない。
天国と地獄。
まさにこの言葉がふさわしいほどであった。
そしてそこへ流れ込むようにして邪悪な気配が近づいてくる。
「来たぞ」
その瞬間、複数の影が姿を現した。
「やっぱり……スメラギ家のニンジャ隊でしたか」
「ニンジャ? 家の護衛兵か?」
「そのような物です。おそらく入国した時からつけられていたようですね」
なんとも物騒なこと。
入国の時ということは馬車で降りた所だろうか。
あそこは見渡しも良く、高台から監視ということも容易にできる地形だった。
たまたま家内の人間がハルカを目撃したのだろう。
「囲まれたな」
影は次第にヒト型に変わっていき、紺色の装束を纏った奴らが目の前に立ちはだかった。
「これまた変な格好をしている奴らだな。剣士でも魔術師でも錬金術師でもないみたいだが」
「彼らはニンジャと呼ばれる者たちです。忍術を用いた戦闘を得意としています」
忍術? ああ、噂には聞いたことはある。
語法活動や窃盗などの隠密活動に長けた術が豊富だと聞いたことがある。
盗賊などが用いるトレジャースキルと似たようなものだそうだ。
ニンジャたちはジリジリと距離を縮めてくる。
「さて、どうしますかね~」
「思ったより人数が多くてびっくりです」
「二人とも冷静すぎますよぉ……私なんか怖くて怖くて」
その割に震えたりする様子はない。
魔術講師をやっているだけあってそれなりの覚悟はあるようだ。
先手を取ったのはニンジャ隊だった。
「―――忍法、影縫いの術」
何か起こった気配はない。
その瞬間、ニンジャは俺たちの影に向けて何かを投擲した。
投げられたものが影にあたる。
その瞬間、
「なに……動けないだと」
「しまった、影縫いですか……!」
身動きが全く取れない。
まるで何かに縛り付けられている感覚だ。
「悪趣味な術だ。動きを止めてコテンパンにする戦法か?」
「まずいです……! このままでは」
いきなりピンチだ。
身体がまったく動かないので魔術を発動させることもできない。
二人の顔に焦りが出てくる。
「れ、レイナード! なんとかならないんですか!?」
「そうだなぁ……」
「せ、先生! このままじゃ死にますよ!?」
呑気な俺に二人はさらに焦りだす。
レーナの猫耳もピンと尖り、心境がすぐに分かる。
相変わらず分かりやすいな……あの猫耳。
相手の事をもう少し知りたかったが、まぁ仕方がない。
とりあえず動けるようにする。
「≪アンロック・グラヴィティ≫」
瞬間。身動きがとれるようになる。
「……!?」
ニンジャたちも驚きを見せている。
「う、動ける……?」
「……一体何をしたんですか?」
「ちょっと重力を弄ってみただけだ」
軽ーい感じで言う俺に二人は唖然とする。
「重力を弄るって……普通の人にそんなことが……」
「おい、話している間に次が来るぞ」
動きに関しては隙が無い。
ニンジャたちは素早く集まる。
「―――忍法、分身の術」
一人が二人、二人が三人へと増えていく。
「幻像魔術みたいなものか……くだらん」
全員が分身したことによって40~50人近くまで人数が増える。
「先生、さすがに逃げないとまずいです!」
「ん? そうか?」
未だに余裕を見せる俺。
レーナも先ほどと比べたらかなり冷静だ。
だが、それとは真逆に余裕のないハルカ。
でもまぁ、どっちにしろ逃げることはできないだろう。
この人数に追いかけられてかくれんぼをするよりここで叩いた方が後が楽だ。
俺は二人の周りにいかなる攻撃をも無効化する結界を張る。
「これは……結界?」
二人がスッポリと入るくらいの結界だ。
「二人はその中でじっとしていろ。オレがやる」
「き、危険です先生! 流石にケガだけじゃ済みません」
こう言われるが俺は聞く耳を持たない。
「まぁ見ていろ」
この一言だけで返答。
ニンジャたちも舐めやがってと言わんばかりの姿勢を見せる。
言葉で通じ合わないのなら俺もそれに従うことにする。
片手を差し向け彼らに手招きをして挑発をする。
その後、瞬時にニンジャたちは動き出し、攻撃をしてきた。
何十人ものニンジャが繰り出す連撃をいとも簡単にかわす。
(少し期待したんだが……この程度か)
予想以上の弱さで残念に思う。
「はっ!」
体術スキル≪波紋≫によって分身諸共吹き飛ばす。
「……圧倒的ですね……」
「やっぱりレイナードは凄いです……」
圧倒的な力を見せつけられ、言葉を失う。
分身を消されてもなお抵抗を続けるニンジャたち。
もちろん攻撃が当たるわけなく、後ろに下がる。
(疲れてきたし、そろそろ終幕とするか)
俺がフィニッシュをかけようとする。
すると、
「そこまでにしておけ」
どこからか男の声がする。
決して遠くはない。
と、そこへいきなり花吹雪が舞う。
そしていつの間にか目の前に一人の男が立っていた。
「もういい。お前らは下がれ」
謎の男はニンジャ隊は指示を出すと早々に去っていった。
その男は俺の方ではなく、ハルカの方へ歩み寄った。
「久しいな、ハルカ」
「―――ゲッコウ……様」
(ゲッコウだと? ということはこの男が……)
その姿は人間とは思えない数体のデカさだった。
その上、ひしひしと伝わってくる屈強なオーラが男を包み込んでいた。
なるほど、どうやら普通のゴリラ野郎ではなさそうだ。
するとゲッコウはハルカに向けて、
「ハルカ、今すぐ屋敷に戻ってこい。婚約相手が見つかった」
「えっ……」
重苦しい空気が走る
まるで夜風に乗って運ばれてきたかのようだった。
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