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第2章 おっさん、旧友と会う

第28話 驚愕の一言

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 ―――カーンカーン。

 授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
 
 と、同時に生徒たちがハルカを囲み始める。

「―――どこから来たんですか!」
「―――綺麗な髪ですね!どうやってお手入れされているんですか?」
「―――スリーサイズを教えてください!」

「ええ……」

 質問攻めに遭うハルカ。
 それを他人事のように横目でみる俺。
 事態は次第に悪化していき、噂を聞き付けた他のクラスの人も姿を現し始めた。
 
(これは……助けようにも自分が飲まれてしまうな)

 助けようと思うが断念。
 
 俺はハルカに、

「じゃあハルカ、後で講師室に来い。雑務を教える」
「え?」

 俺はナチュラルにハルカを置いて教室を出て行く。

「あ、レイナード! もう……フリーダムなんだから」

 代わりにレーナがハルカを助ける。

 そして数十分後、事態はようやく収まった。
 二人はリラクゼーションルームで休憩をしていた。

「はぁ……ありがとうございます。レーナさん」
「レーナで大丈夫ですよ」
「それでは私の事もハルカと呼んでください」

 二人は会話を交わしていく内に仲良くなっていく。

「そうなんですか! わざわざ東の国から」
「はい、向こうは此処とは違って黒髪黒眼が普通ですから」
「確かにクロードで黒髪の人はエルナー先生以外にあまり見たことがないですね」

 エルナーは黒髪とは言ってもハルカのように真っ黒というわけではなく、灰色がかかったような感じなので少し異なる。
 基本的にクロードには黒髪を持つという人はあまりいないのだ。
 ちなみにエルナーは東の国とは無関係である。
 
「お、ようやく解放されたか」
「あ、レイナード先生」

 会話している所に俺が入ってくる。
 ハルカの隣にドサッと座り、
 
「災難だったな」
「そう思うなら助けてくださいよぉ……」

 ハルカはジト目でジリジリと見つめてくる。
 だがそれは仕方がないことなのだ。
 新任講師でおまけに美人と来たらそりゃあもう生徒たちは食いつく。
 学園の講師陣ですら食いついているのだから間違いない。
 
 噂によると学園の男性講師たちは俺が美人講師二人を助手にもらっていることをあまり快く思っていないらしい。
 特に授業終わりに講師室に行ったときは酷かったものだ。
 
 男性講師たちがこちらを見て歯ぎしりをしていたり、ぶつぶつと何かを言っていたりするのを耳で聞いていた。
 デスクに座っても沢山の視線を感じるため仕事ができず、此処へ逃げ込むことを余儀なくされたというわけだ。

「まったく、こんなことで大騒ぎとはくだらん」

 俺は望んで助手をしてもらっているのではない。
 ぶっちゃけると被害を被っている。
 彼女たちに罪は全くないのだが、美人というステータスが俺にとってはマイナスに働いてしまっているのだ。
 もしこれが美人ではなかった場合、こんな騒ぎにはならないだろう。
 二人がそんじゃそこらの女とは格が違う絶世の美女なためが故の結果なのだ。

 ただし……例外も存在する。

 
 
 ―――バン!

 扉が思いっきり開き、一人の男が姿を現す。

(出たぁ……)

「聞きましたよレイナード先生! 新しい美女をまた従えたと!」
「……何の用だラルゴ」
「よくぞ聞いてくれましたっ!」

 そう。何かあるごとに突っかかってくるブロンド髪で長身かつイケメンの自称有能魔術講師、ラルゴ・ノートリウムである。
 相変わらずのテンションとオーバーリアクションで温度差を感じる。
 一緒にいるだけで非常に疲れる男である。

「なんだ今度は。また決闘デュエルか? 勘弁してくれ」
「いえ、先ほど講師室で仕事をなされていた時に疲れていたご様子でしたのでこれを渡しに……」
「なんだこれは」

 渡されたのは一本のドリンク剤だった。
 透明の瓶に謎の蒼い液体が入っている。見た目だとポーションみたいな感じであった。

「そのドリンクはワタクシの友人が作った栄養剤でございます。レイナード先生の疲れを癒してくれるかと」
「大丈夫なのか?」
「もちろんでございます! ワタクシの友人は皆、自分含め格式高い優秀な人たちばかりです」
「あっそ」
 
 安定の塩対応である。
 さらっと自分も優秀だと言ってしまう時点で既に問題が発生しているのだが、試してみる価値はある。
 これでこの疲れが吹き飛ぶのなら安いものだ。

「まぁ一応もらっておこう。すまんな気を使わせてもう下がっていいぞ」

 こういうと彼は目線をハルカの方へシフトする。

(おい無視か)

「おお! あなたが新任のハルカ・スメラギ先生ですね!」
「あ、はい……そうですが」
「おい、ラルゴ……」
 
 俺は早く去ってもらおうとするが無理だった。
 このノリは今のハルカにはまだ早い。
 ハルカの今後のためにも止めねば、というか面倒なことになる前にこいつを葬らなければ。

 止めようするが彼の勢いは止まらない。

「エクセレント! さすが噂通りのべっぴんさんですねぇ」
「は、はぁ……」

 ハルカが彼のスピード感溢れる会話に押されている。
 というかべっぴんってなんだ? 
 俺はここにまず疑問感じる。

「はっ! 申し遅れました。ワタクシはラルゴ・ノートリウムと申します。午後出勤な故、ご挨拶ができず申し訳ございません」
「あっ、いえ。お気になさらず」
「どうかワタクシの親友であるレイナード先生をよろしくお願い致します」
「おい、オレとお前はいつ親友になった。というか何様だお前は」

 ラルゴはこれ以上は何も言わずに背を向ける。

「それでは皆さん、ワタクシはこの辺りで失礼いたします。グッドアフターヌーン!」

 こういうと彼は疾走の如く去っていった。

「……なんなんだあいつは一体……」

 するとここでハルカが、

「あの……レイナード先生。ちょっといいですか?」
「ん? なんだ?」

 彼女はスッと立ち上がりこっちに来てほしいと言う。

「ごめんなさいレーナ。ちょっと先生をお借りしますね」
「あ、はい……」

 そう言って連れてこられたのは学園の展望デッキであった。

「おい、ハルカ。こんな所に連れてきて一体何を……」
「あの、先生!」
「っ! な、なんだいきなり」

 突如大きな声で呼ばれたためびっくりする。
 しばらく沈黙の時間が続き、彼女は俺の目を見てこう言った。




「私と結婚してください」


「……は?」


 

 俺はその場に呆然と立ち尽くした。
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