元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第2章 おっさん、旧友と会う

第25話 危機的かくれんぼ

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「うう……」

 俺は再度目を覚ます。

「また寝ていたのか……」
 
 ゴソゴソっとベッドから出る。
 カーテンを開き、外を見てみるとすっかり夜になっていた。

「くっ……頭が痛い。さすがに寝すぎたか」

 寝室を出て顔を洗うべく洗面室へと向かう。

「それにしても広い屋敷だ。洗面室まで1秒の俺の家とはわけが違うな」

 広い屋敷を1分くらい歩き、洗面室に到着する。

「ふぅ……」

 顔面いっぱいに水をかけ、脳に刺激を走らせる。
 顔を洗った後、俺は隣の部屋に浴室があったのを思い出す。

「あとで入るのは面倒だから風呂にも入っておくか」

 隣の部屋に移動する。
 二人で住むには広すぎるほどの脱衣所で服を脱ぎ、浴室へ入る。

「ああ~めっちゃ気持ちいいな」

 疲れが蓄積した身体にちょうどいい薬だ。
 ドンドン疲れが引いていく感じがする。

「ったく、こんな環境で毎日を過ごせるとかあり得ないだろ」

 自分の質素な生活と比べて大きな格差があるのに不満を抱く。
 
「そろそろ出るか……」

 十分に疲れを癒し、身体が温まったことで浴室を出ようとした時だった。

 ―――ガチャ。

「ガチャ?」

 誰かが脱衣所に入ってきたようだ。
 レザード……か? いや違う。

 

 扉越しから見えたシルエットから察するに……レーナだ!




「ま、まずいな……」

 そういえば、客間にいた時にセントレアがなんか言っていた気がする。
 風呂に入るときは、中から施錠か札をかけておくようにと。

「しまった……あれはそういうことだったのか」

 とりあえず今はこんな所に突っ立っているわけにはいかない。
 俺は浴室内を見渡す。

「隠れられる場所は……ないか」

 なら答えは一つしかない。
 そう、魔術でやり過ごすしか!

 ガチャっと浴室の扉が開き、レーナが入ってくる。

 俺は浴室の端の方で身体全体を透明化する魔術を駆使し、身を潜めていた。

(鼓動さえ聞かれなければバレることはないだろう。レーナにそこまでの技量があるとは思えんしな)

 身体の一部を透明化するのは一般的な魔術師でも比較的簡単にできるが、身体全体をすっぽりと透明化するには相当の技量がいる。
 よってそれを見破るのも相当な技量を有した魔術師でないと無理なわけだ。

「はぁ……気持ちいい……」

 レーナが浴槽に入る。

 それにしてもスタイルがいい。
 衣服越しに見てもスタイルがとてつもなくいいのに、服を脱ぐとそれが顕著になる。
 胸も大きいし、背も低すぎない。手足は長く、顔は小さい。

 パーツ一つ一つがバランスよく整っている。
 
(こんなに完璧なのに恋人とかいないのか?)

 いや、いかんいかん。何を考えているんだ俺は!

 変な妄想が膨らみかけたのを慌てて抑え込む。

(くそ……身体が)

 時間が経つにつれ、身体が怠くなってくる。
 元々風呂に入って体温が上がっていたのをこの熱気とした室温でさらに上がる。

 魔術も身体の状態に応じて魔力の消費量が変化するため、より一層身体に負荷がかかる。

「ふぅ……そろそろ出ようかな」

 レーナが浴槽から出ようとする。

(や、やっとか……)

 長きに渡ったかくれんぼがようやく終わりを告げたと思ったその時だった。

 ―――ガチャ。

(ん? 誰だ?)

 もう一人が脱衣所に入ってくる。
 そしてとてつもないスピードで服を脱ぎ、浴室内に入ってくる。

「レーーーーナちゃーーーーん!」
「せ、セントレアさん!?」
(ゲッ! ドリル!)

 このタイミングでドリルことセントレアが入ってきた。
 
「もう出ちゃうのー? お姉さんと一緒にもう少しだけ入ろうよー」

(お姉さんだと? いい歳したBBAババアが何を言っていやがる)

 だが、今はそんなことは関係ない。
 このままでは第2ラウンドに突入することになる。

 なんとかあの二人の目をごまかしてそっと浴室から出れればいいのだが……

「やっぱりレーナは大きいねぇ」
「そんな……やめてください! セントレアさんの方が大きいですよ~」
「そんなことないわよ? レーナは若い分ハリがあるし、羨ましいわ」
「もう……何をやっているんですか!」

(何をしていやがるんだ。こいつらは……)

 目の前でよからぬことが行われている。
 しばらくの間、大人のじゃれあいが始まり俺は目を反らす。

「形も中々……」
「いつまで触っているんですかセントレアさん!」

 セントレアはとどまることを知らない。

(……いつまでやっているんだ、あのバカは!)

 そんな時、セントレアの動きがピタリと止まる。

「レーナ、静かに」
「えっ?」

 彼女は目を瞑りだす。

(あの女まさか……)

 そして目を開き、俺の方を向いてくる。

「あなた、そこで何をしているのかしら?」



(……! バレたか……)



 そう思った時だった。

「なんだ、バレていたのか」

 隣からいきなりレザードが姿を現した。

(は?)

「れ、レザードさん!? いつから……」
「お前と同じタイミングで入った。どうしてもお前が成長しているか確認したくてな」
「レザード……あなた何をしているのか分かっているの?」
「ああ、もちろんだ。年頃の娘というものは親と一緒に入るのを拒絶する傾向があると聞いた。本当は隠れたりしたくはなかったのだがな」
「いや、そういうことじゃなくて……」

 想像の斜めを行く展開に思わず、口が漏れる。

「バカだ……こいつら」

 二人が言い争っている隙に俺は静かに退出する。

「ちょっと待てセントレア。これは卑猥な意図では……」
「反省しなさい!」

 二人の争いは廊下まで響き渡っていた。

 そしてその後の夕食では、

「おお、こりゃ凄いな。これ全部レーナが作ったのか?」
「あ、はい。お口に合うか分かりませんが……」

 テーブルの上にはこれでもかというほどのご馳走で溢れていた。
 見るからにおいしそうな肉料理。色とりどりなサラダ。
 パンにパスタに丸ごと鳥からダシを取ったスープなど食材をフルに活かした料理ばかりだった。

 全員集まった所でレーナは、

「皆さん手を合わせてください」

 レザードとセントレアも当たり前のように手を合わせる。

「ん? 何をするつもりだ?」
「いいからレイナードも手を合わせて」
「わ、分かった」

 そして彼女は一言。

「それでは、いただきます」
「いただきます」
「……なんだ?」
「レイナードも言って!」
「あ、ああ……いただきます……」

 皆が一体何をしているのか俺には理解できない。
 と、ここでセントレアが、

「これはレーナの家系が代々やってきた礼節だそうよ」
「礼節?」
「ええ、人の食料になるべく犠牲になった動物たちへの感謝の気持ちが込められているの」
「初めて聞いたな……」

 だが、筋は合っているなと思った。
 食材がなければ人は餓死をしてしまう。
 そして食料を得るための背景には生き物の命が関与しているのも理解できる。
 まぁ……覚えておくか。


 セントレアから説明を受けた後、隣でレザードが何やらぶつぶつと言っていることに気付く。
 

「……俺は……間違っていたのか……」

 あの後、セントレアにこってりと絞られたらしく無表情ながら落ち込んでいた。
 まぁ俺は助かったのだが……

「レイナード、顔が赤いようですが大丈夫ですか?」

 どうやら俺も顔が少し赤くなっているようでレーナが心配する。

「ん? ああ、問題ない。少し長風呂をしてしまったようだ」
「あれ? レイナード、いつお風呂に入ったんですか?」

(あ、しまった! つい……)

「い、いや、さっき早急に入ったのだ。そんなことよりレーナも少し赤いみたいだが大丈夫なのか?」
「あ、はい。私も長風呂してしまって」
「そ、そうか」

 なんとか話を反らすことができた。
 だが、

「怪しいわね……」

 そこには俺の動揺した姿を見て目をギラつかせるセントレアの姿があった。

「おい、止めろ。俺はそんなことはしない」

 真顔で必死に隠そうとする。

「うーん……まぁレイナードはチキンだからそんなことできないか」
「お、おう。その通りだ」

(こいつ……)

 相変わらず腹が立つ言い方である
 レザードには申し訳ないが、なんとかバレずに済んだ。


(これからは人の話にも多少は耳を傾けねばな……)


 俺はこの出来事で一つ、新たな教訓と礼儀を学んだ。
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