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第3章 スノープリンス編
第28話「潜入」
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氷の結晶体に囲まれ、街全体が輝いて見える。
俺たちはナパード公国の公都を訪れていた。
「街全体が眩しいな。これ全て氷の結晶体なのか?」
「そうです。ナパードが氷の国と呼ばれる由縁でもあるんですよ」
「綺麗な街ですねー」
「違う世界にいるみたいだわ」
違う世界にいるみたいというかむしろ違う世界にしか見えない。
幻想世界にでも迷い込んだのかと思うくらいだ。
大きなローブに身を包んだアルベルトが先導する。
「皆の者、とりあえず例の施設を探すぞ」
『えー、少しくらい街を堪能してもいいんじゃ……』
「残念だが、今は一刻も早くこの国の裏を暴かねばならない。全てが終わったら此処を案内しよう」
落ち込むヴィーレには少し可哀想だが、今はそんなことをしている暇はない。
あらかじめ確認しておいたポイントにマークを付けておく。
潜入は今日の夜に決行される予定だ。
「恐らくこの店の地下だ。研究施設は公国全体にまで広がっているが、中枢はこの辺で間違いないだろう」
「入り口の場所は分かってますの?」
「それは既に確認済みだ。問題はない」
とりあえず潜入の下見は1通り終わった。
あとは潜入するメンバーの選出を決めなければならないのだが……
* * *
「で、なんでこうなるんだ……」
「私がリュウタロウと一緒に行くわ」
「いいえ、ワタクシがリュウタロウ様と!」
「支援職である私は行くべきだと思います!」
誰が潜入のメンバーとなるか揉めている真っ最中だった。
今の所メンバーは俺、アルベルトさんが決定している。
ミンスリー姫はさすがに連れていくには危険なので隠れ家で待機することになった。
よって姫様を護衛する人が1人ないしは2人必要だった。
「リュウタロウ殿、譲さん方はいつもこんな感じなのか?」
「いや、まぁ……」
正直に言ってしまえば俺が姫様の護衛について3人が潜入に行ってほしいというのが本音なのだが、ギルドリーダーである以上、行かない理由がなかった。
「な、なぁ時間もないし誰が来ても……」
「リュウタロウは黙ってて!」
「あ、はい……すみません」
争いは収まりそうにない。
ここまできたらもう強引に決めるしかないな。
「イルーナとミル、2人は残ってくれないか?」
「えっ……?」
「今回の潜入作戦は少ない人数で行くのが妥当だろう。よって俺とアルベルトさん、アイリスの3人で行こうと思う」
「で、でもそれじゃあ……」
「姫様に万が一の事があったらいくらイルーナたちでも1人では対処できないかもしれない。だから2人で姫様を守ってほしい」
最後に一言、『これはギルドリーダーの命令だ』と言っておく。
あまり権力を無理矢理行使するのは好きではないが、仕方ない。
「わ、分かりましたわ……その代わり責任を持って姫様をお守りしますわ」
「はい。私も全力でここを守ります!」
「ありがとう、それじゃあ此処は頼んだぞ」
やっと決まった……ああ、疲れる。
日が段々落ちていくにつれて人の気配が消えていく。
そして日が完全に落ちた頃には人の姿はもうなかった。
「まだこんな時間なのに外に誰も人がいない……どういうことだ?」
2階にある小さな小窓から外を覗く。
「そろそろ来る頃合いか」
「そろそろ?」
すると城がある方角から仮面をつけた黒一色の集団が現れる。
構成人数は4~5人といった所だろうか。
「あいつらは……」
「ベラルーナの巡回部隊だな」
「ベラルーナ?」
「ん? お前さんベラルーナを知らないのか?」
話を聞く限りだと、この大陸では知らない人はいないぐらい有名な犯罪ギルドらしい。
しかしそれは規模がデカいからこそ知名度があるわけでベラルーナ本体までの情報は謎に包まれている。いわゆる名前だけってやつだ。
「でもなんでそんな奴らがこの国に……」
「あの女が秘密裏に雇っているんだ……この国では”あの1件”以来、夜の外出が制限されたからな」
「スノープリンス事件か……」
「表向きは治安部隊となっているが、誰も知らない場所で毎日誰かが奴らに殺されている」
「じゃあ今のは……」
「ああ、パトロールと称して研究所で使うための実験道具の調達だ」
「なんてひどいことを……」
「だからこそ正体を暴いてプリシアを討ちたい。そして姫様と民が安心して過ごせる国に造り直したいのだ」
アルベルトは唇を噛みしめながら、その大きな拳を強く握りしめる。
彼の国と姫様への強い思いを聞いて俺も気持ちが震えあがる。
「やりましょうアルベルトさん。俺たちも最後まで協力します!」
「……リュウタロウ殿……かたじけない」
決行時間だ。
俺たちは身バレを防ぐべく黒いマントを羽織って迷彩魔術を施す。
「譲さん方、姫様をどうか頼む……」
「任せてください!」
「はい、リュウタロウ様たちが帰ってくるまで守りきってみせますわ」
「心強い……では2人とも行くぞ!」
外にはベラルーナの巡回部隊もいる。
彼らも魔術が使える故に、少しでも大きな音を立てたら致命的となる。
あらかじめ確認しておいた最短ルートを慎重に進んでいく。
そして順調に目的地の前まで到着した。
「裏の扉から入るぞ」
裏の路地に回り、扉の前へ。
「解放」
―――カチャ。
「よし開いたぞ」
俺たちは周りを警戒しつつゆっくりと店の中へと入る。
「待って2人とも」
アイリスがいきなり2人を止める。
「虚偽解放」
アイリスは解除魔術を周りに張り巡らせ、トラップがないか確認する。
そして彼女の読み通りいたるところにマジックアイテムやら工作魔術によるトラップなどが設置されていた。
「こんなにもトラップが……ナイスアイリス!」
「べ、別に……大したことないわよ」
少し照れ気味で彼女は答える。
まぁ暗い所にいたので声だけの推測だが。
「アルベルトさん、解除できますか?」
「ああ、容易いさ」
アルベルトさんとアイリスの活躍によってトラップは全て解除され、中へと進む。
「ここだ」
案内されたのは特に変わったところが見当たらない本棚の前だった。
「下がっていてくれ」
アルベルトはこう言って袋からマジックアイテムらしき物を取り出す。
そのお札のようなマジックアイテムを本棚に張り付けて詠唱を始める。
「神々の結界をも壊す大精霊の加護よ、いまこそその力を解き放て。ホーリースピリット!」
詠唱とともにマジックアイテムが発動。
そして本棚の奥から新たな道が姿を見せる。
「『精霊の領域』を持っているなんて……」
「ん? さっきのマジックアイテムの事?」
「え、ええ。あれはL7級に匹敵するスーパーマジックアイテムよ。普通の人間なら持つことも発動することもできないわ」
「お、嬢ちゃんよく知っているな。これは俺の恩人から貰った贈り物なんだ。いつか必ず役に立つ時がくるって言われてな。発動する詠唱能力を身に付けるのに5年はかかったな」
「ご、5年!?」
だが、アイリスが言うには5年かかっても早い方らしい。
魔術に多少は才がある者でも何十年もかかるのだそうだ。
「とりあえず先に進むぞ」
俺たちは暗闇に続く地下への階段を一段一段と降りていく。
数分歩くと目の前の薄暗い一筋の光が見えた。
「やっとか……」
そして足を踏み入れた先にとんでもない物が目に入った。
「なんだよ、これ……」
そこにあったのは魔獣が大量に保管された大型保管庫だった。
俺たちはナパード公国の公都を訪れていた。
「街全体が眩しいな。これ全て氷の結晶体なのか?」
「そうです。ナパードが氷の国と呼ばれる由縁でもあるんですよ」
「綺麗な街ですねー」
「違う世界にいるみたいだわ」
違う世界にいるみたいというかむしろ違う世界にしか見えない。
幻想世界にでも迷い込んだのかと思うくらいだ。
大きなローブに身を包んだアルベルトが先導する。
「皆の者、とりあえず例の施設を探すぞ」
『えー、少しくらい街を堪能してもいいんじゃ……』
「残念だが、今は一刻も早くこの国の裏を暴かねばならない。全てが終わったら此処を案内しよう」
落ち込むヴィーレには少し可哀想だが、今はそんなことをしている暇はない。
あらかじめ確認しておいたポイントにマークを付けておく。
潜入は今日の夜に決行される予定だ。
「恐らくこの店の地下だ。研究施設は公国全体にまで広がっているが、中枢はこの辺で間違いないだろう」
「入り口の場所は分かってますの?」
「それは既に確認済みだ。問題はない」
とりあえず潜入の下見は1通り終わった。
あとは潜入するメンバーの選出を決めなければならないのだが……
* * *
「で、なんでこうなるんだ……」
「私がリュウタロウと一緒に行くわ」
「いいえ、ワタクシがリュウタロウ様と!」
「支援職である私は行くべきだと思います!」
誰が潜入のメンバーとなるか揉めている真っ最中だった。
今の所メンバーは俺、アルベルトさんが決定している。
ミンスリー姫はさすがに連れていくには危険なので隠れ家で待機することになった。
よって姫様を護衛する人が1人ないしは2人必要だった。
「リュウタロウ殿、譲さん方はいつもこんな感じなのか?」
「いや、まぁ……」
正直に言ってしまえば俺が姫様の護衛について3人が潜入に行ってほしいというのが本音なのだが、ギルドリーダーである以上、行かない理由がなかった。
「な、なぁ時間もないし誰が来ても……」
「リュウタロウは黙ってて!」
「あ、はい……すみません」
争いは収まりそうにない。
ここまできたらもう強引に決めるしかないな。
「イルーナとミル、2人は残ってくれないか?」
「えっ……?」
「今回の潜入作戦は少ない人数で行くのが妥当だろう。よって俺とアルベルトさん、アイリスの3人で行こうと思う」
「で、でもそれじゃあ……」
「姫様に万が一の事があったらいくらイルーナたちでも1人では対処できないかもしれない。だから2人で姫様を守ってほしい」
最後に一言、『これはギルドリーダーの命令だ』と言っておく。
あまり権力を無理矢理行使するのは好きではないが、仕方ない。
「わ、分かりましたわ……その代わり責任を持って姫様をお守りしますわ」
「はい。私も全力でここを守ります!」
「ありがとう、それじゃあ此処は頼んだぞ」
やっと決まった……ああ、疲れる。
日が段々落ちていくにつれて人の気配が消えていく。
そして日が完全に落ちた頃には人の姿はもうなかった。
「まだこんな時間なのに外に誰も人がいない……どういうことだ?」
2階にある小さな小窓から外を覗く。
「そろそろ来る頃合いか」
「そろそろ?」
すると城がある方角から仮面をつけた黒一色の集団が現れる。
構成人数は4~5人といった所だろうか。
「あいつらは……」
「ベラルーナの巡回部隊だな」
「ベラルーナ?」
「ん? お前さんベラルーナを知らないのか?」
話を聞く限りだと、この大陸では知らない人はいないぐらい有名な犯罪ギルドらしい。
しかしそれは規模がデカいからこそ知名度があるわけでベラルーナ本体までの情報は謎に包まれている。いわゆる名前だけってやつだ。
「でもなんでそんな奴らがこの国に……」
「あの女が秘密裏に雇っているんだ……この国では”あの1件”以来、夜の外出が制限されたからな」
「スノープリンス事件か……」
「表向きは治安部隊となっているが、誰も知らない場所で毎日誰かが奴らに殺されている」
「じゃあ今のは……」
「ああ、パトロールと称して研究所で使うための実験道具の調達だ」
「なんてひどいことを……」
「だからこそ正体を暴いてプリシアを討ちたい。そして姫様と民が安心して過ごせる国に造り直したいのだ」
アルベルトは唇を噛みしめながら、その大きな拳を強く握りしめる。
彼の国と姫様への強い思いを聞いて俺も気持ちが震えあがる。
「やりましょうアルベルトさん。俺たちも最後まで協力します!」
「……リュウタロウ殿……かたじけない」
決行時間だ。
俺たちは身バレを防ぐべく黒いマントを羽織って迷彩魔術を施す。
「譲さん方、姫様をどうか頼む……」
「任せてください!」
「はい、リュウタロウ様たちが帰ってくるまで守りきってみせますわ」
「心強い……では2人とも行くぞ!」
外にはベラルーナの巡回部隊もいる。
彼らも魔術が使える故に、少しでも大きな音を立てたら致命的となる。
あらかじめ確認しておいた最短ルートを慎重に進んでいく。
そして順調に目的地の前まで到着した。
「裏の扉から入るぞ」
裏の路地に回り、扉の前へ。
「解放」
―――カチャ。
「よし開いたぞ」
俺たちは周りを警戒しつつゆっくりと店の中へと入る。
「待って2人とも」
アイリスがいきなり2人を止める。
「虚偽解放」
アイリスは解除魔術を周りに張り巡らせ、トラップがないか確認する。
そして彼女の読み通りいたるところにマジックアイテムやら工作魔術によるトラップなどが設置されていた。
「こんなにもトラップが……ナイスアイリス!」
「べ、別に……大したことないわよ」
少し照れ気味で彼女は答える。
まぁ暗い所にいたので声だけの推測だが。
「アルベルトさん、解除できますか?」
「ああ、容易いさ」
アルベルトさんとアイリスの活躍によってトラップは全て解除され、中へと進む。
「ここだ」
案内されたのは特に変わったところが見当たらない本棚の前だった。
「下がっていてくれ」
アルベルトはこう言って袋からマジックアイテムらしき物を取り出す。
そのお札のようなマジックアイテムを本棚に張り付けて詠唱を始める。
「神々の結界をも壊す大精霊の加護よ、いまこそその力を解き放て。ホーリースピリット!」
詠唱とともにマジックアイテムが発動。
そして本棚の奥から新たな道が姿を見せる。
「『精霊の領域』を持っているなんて……」
「ん? さっきのマジックアイテムの事?」
「え、ええ。あれはL7級に匹敵するスーパーマジックアイテムよ。普通の人間なら持つことも発動することもできないわ」
「お、嬢ちゃんよく知っているな。これは俺の恩人から貰った贈り物なんだ。いつか必ず役に立つ時がくるって言われてな。発動する詠唱能力を身に付けるのに5年はかかったな」
「ご、5年!?」
だが、アイリスが言うには5年かかっても早い方らしい。
魔術に多少は才がある者でも何十年もかかるのだそうだ。
「とりあえず先に進むぞ」
俺たちは暗闇に続く地下への階段を一段一段と降りていく。
数分歩くと目の前の薄暗い一筋の光が見えた。
「やっとか……」
そして足を踏み入れた先にとんでもない物が目に入った。
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