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第2章 学園編

第17話「水舞祭 練習編」

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 とある王都近くの湖。名前はなんていっただろうか。
  とにかく長すぎて覚えられなかったため省略。

 「綺麗な湖だなー。日本の湖も綺麗な所が多いがここは別格だな」

  湖全体を見渡すと様々な生き物が目に入る。
  目を閉じて耳を澄ませば、小鳥たちの合唱が聞こえる。
  ここに立っているだけでなんだか魔法にかかったような心地よさを感じた。
  今日はとても暖かく、水舞祭すいぶさいに向けて練習するにはもってこいだった。

 「リュウタロウ様~」

  イルーナの声に反応し、俺は後ろを向く。

 (うおっ! これは!)

  その姿はこの世の天国という概念を尊重する姿であった。
  少しきつめのビキニに身を包んだイルーナの姿はまるで天使のようだった。

 「うう……少しきついですわ」
 「もうちょっと大きいのなかったの?」
 「これしかないらしくて……特に胸の辺りが……」

  イルーナはその豊満な胸の位置を気にしているのかなかなか落ち着かない。

 (すばらしい! こんなイベントが待っているなんて思わなかったぞ!)

  脳内で妄想に浸る俺。

 「リュウタロウー?」
 「リュウタロウさーん」

  ミルとアイリスも到着した。

 (お、おお……)

  こちらも中々レベルが高かった。基本的にこの3人は容姿に関しては100点満点なため、正直なにを着ていても似合うのだろうが、チョイスが絶妙であった。
  アイリスは巻きつけたスカートがセクシーさを際立たせているパレオ、ミルはオフショルビキニだった。
  この2人もやはりスタイルは抜群だった。
  この中で2番目にお胸の大きいアイリスは3人の中で最もスタイルがいいことを武器にセクシーさを感じられる水着を選んでいる。確かに俺が着せるとしたらこれ! という水着を見事に着てくれていた。

  ミルに関してはこの中では小柄な体型だが、スタイルは2人にも負けていない。
  初めて会った時に彼女のことを隠れ巨乳だと推測していたが、見事に予想は的中。
  2人に比べると豊満さは劣るが、決して小さいほうではなかった。というか一般的に見れば十分に巨乳である。
  2人がとにかくデカすぎなのだ。
  3人とも容姿、胸、体型の美しさという三拍子が揃っている。
  こんなの現実世界ではほぼあり得ない。今時のグラドルでもこんなにパーフェクトな人はいないぞ。

  さて、彼女たちの水着の考察は置いといて俺たちは早速水舞祭に向けて練習を開始した。
  出場するのは俺だが3人は泳ぎたいとのことだったので一緒に泳ぐことになった。

 「私が一番乗り―!」

  アイリスが思いっきり湖にダイブする。

 「わ、私も!」

  それに続くようにミルとイルーナがダイブ。

 「気持ちいいー! ほらリュウタロウも早く来なさいよ」
 「分かった分かったー」

  久しぶりの入水。
  ドボンと大きな音を立てダイブする。
  この水質、水温、ちょうどいい。泳ぐにはもってこいの環境だった。

 「ぷはっ! 気持ちいいな」

  俺は水を両手ですくいあげる。
  清く透明で不純物が何一つない。まさに聖水といっても過言ではないくらいだった。

 「この湖、凄い綺麗だね」
 「この水はシュラット山脈から湧き出た水が流れて此処に来るそうよ。天然水が汚染されないように汚染しない程度の魔術をかけているらしいわ」

  魔術ってホント便利だよな。
  ぜひ我が国にもその能力がほしい。
  これがあれば普段の水泳大会でも白く濁ったような汚い水で競泳をすることもなくなるだろうに。
  元競泳選手として水の質に関して敏感だった。少しでも汚ければすぐに気づくし、ちょっとした水温の変化とかも感じることができる。
  まぁ、ある意味魔法だ。

 「そろそろ練習するか」

  俺は勢いよく潜る。
  そして大きなワンストローク。
  まずはウォーミングアップにクロールから入ることにした。
  そして身体が慣れてきたら段々とスピードを上げていく。

 「速いですわ! さすがリュウタロウ様」
 「あまり期待していなかったけど、ここまで速いなんて」
 「これだったら優勝できるかもしれませんよー」

  100mほど泳いだだろうか。
  とりあえず一息つく。

 「リュウタロウ様は泳ぎがとてもお速いのですね」
 「すごいわ! これならいけるかもしれないわよ」
 「ま、まじ? でも久々だから身体がなまってるなあ」

  そう、競泳選手は練習を怠れば怠るほど廃れていく。
  1日練習を怠れば2日分の練習をサボった身体が出来上がる。
  ようするに3日ほどサボればその2倍、6日分練習をしていないことに匹敵するわけだ。
  俺はこっちの世界に来て約1か月ちょいだから……
 ま、まあ相当なまっていることになる。

 「ねぇリュウタロウ、私と勝負しない?」

  アイリスいきなり勝負を持ち掛けてきた。

 「え? いいけど」

  するとミルが、

 「アイリスは手ごわいですよ。なにせ学園でもトップレベルの泳ぎの速さですから」
 「ほう、それは戦ってみたいな」

  これは元競泳選手として負けられない。

 「それじゃあ行きますわよー」

  ルールはとりあえず向こう岸まで競争。
  ざっと50mほどか。現実世界の長水路プールと同じくらいだった。

 「いちについて……」

  俺はぐっと身体を前のめりに構える。
  この感覚、久方ぶりだ。

 「よーい、ドン!」

  この合図と同時に俺とアイリスは勢いよくダイブする。
  ドルフィンキックを蹴ってアイリスよりも早く浮き上がりに成功する。
  そして全力でバタ足、腕を大きくストロークして泳ぎ始める。

  スピードに乗ってきたところであとは推進力に身を任せる。

 (よし、順調に差を広げているな)

  アイリスとの差はどんどん広げる。
  これでも現実世界では部活内でエース的存在だった。
  簡単に負けるわけにはいかない。しかも異性の子に。

  残り25mに差し掛かった。
  あともう少しだ。
  やはり少しずつ身体に乳酸がたまり始める。

 (泳いでいないつけが回ってきたか……)

  だが、もうラスト10m。
  これは勝った。そう確信した時だった。

  ―――ドビューンンンン!

  大きな水しぶきを上げて何かが横を通った。

 (な、なんだ?)

 「やったあ! 私の勝ち!」

  ん? なんだ一体何が起こったんだ?
  岸につけばもう既にアイリスは地上に上がっていた。
  さっきまで大幅に差を広げていたはずなのに……

「ぷはっ! い、一体どういうことだ?」

  不思議な顔をする俺にアイリスたちは答える。

 「この水舞祭は魔術の使用を禁じていないのよ」
 「は……?」
 「使える魔術は限られていますけど……」
 「あとゴール地点の10m手前までは魔術が使えないというルールもありますが……」

 (おいおい、なんだそのチートルール。魔術使っていいとか正気か?)

 「いやでも、それはズルじゃないのか? なんだってありじゃないか」
 「公式で認められているからズルじゃないわ。というかラストの場面で魔術を使わない人なんていないと思うけど」
 「ま、まじか……」

  考えてみればここは異世界だ。現実世界とはわけが違う。
  現実世界と異なった概念があるのは当たり前のことだ。
  不満は置いといてとりあえずこの世界の掟に従うしかない。

 「それで、どんな魔術が使えるんだ?」
 「自身の身体を強化するための魔術なら基本なんでもいいわ」
 「自身を強化?」

 「はい。使ってはいけないのが物理的にスピードを上げたり、ワープをしたりするのは禁止ですわ」
 「さらに言うなら自分を強化できる魔術を会得していないと到底勝ち目はないですね」

  なるほど、つまりデバフ作用のある魔術が使えないといけないと。
  だが、今の俺に自身強化する魔術なんて会得していない。

 (いや、無理じゃんか!)

  内心そう思ったが、よく考えてみると今まで会得した魔術は皆、感覚だけで習得してきたということを思い出した。
  俺はもしかしたらと思い、再度湖へダイブする。

 「リュウタロウ? どうしたの?」

 (俺の推測が正しければ結果はこうなるはず)

  精神を研ぎ澄ませ、身体の内にあるエネルギーを放出させる。
  するとどうだろうか。みるみる推進力が上がっていく。
  ものすごいスピードだ。
  俺は今、未だかつてない速度で泳いでいる。

 「す、すごい……いわれた途端にできるようになるなんて……」
 「リュウタロウ様の元々の速さに魔術が加われば怖いものなしですわ」
 「はい、これなら勝てるかもですね!」

  明後日に迫った水舞祭すいぶさい
  久しぶりの大会だ。しかも異世界という最高な地で。
  俺は心の中で静かな闘志を燃やしていたのだった。
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