イセオタ(異世界オタク)が異世界にて王国をつくるようです。

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第1章 異世界転移編

第7話「初登校」

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 俺は今、リーベンバッハ家のお屋敷の前にいる。

  今日からここで居候をさせてもらうのだ。
  玄関から既に雰囲気がヤバい。

  俺は期待を胸に、屋敷の中に入る。

 「おかえりなさいませ。お嬢様」

  入った途端出迎えたのは、大人数のメイド軍団。
  ひらひらでピンク色に輝くメイド服に身を包んだ美少女軍団。

 (メイド……ホンモノだぁ~!)

  異世界物ラノベでしか感じたことのない世界に俺は感動した。

 「おかえりなさいませ。お嬢様方」

  メイド軍団の中に1人、筋肉質なのが服の上からでもわかる老紳士が姿を現した。

 「バートン、彼がリュウタロウよ」
 「おお、そうでございましたか。ようこそリーベンバッハ家へ」

  老紳士は近づき、一礼をした。

 「は、はじめまして、財前 龍太郎といいます」
 「私はこの家で執事をしているバートンというものです。これから身の回りのお世話をさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します」

  丁寧でしっかりとした礼節。その姿には隙がなかった。
  これぞ異世界貴族家の執事!

 「それでは部屋に案内させていただきます」

  バートンは自分が先導し、部屋へと案内した。

 「こちらが今日からリュウタロウ様にお泊まりになられる部屋になります」

 (ま、まじか……)

  何畳あるだろうか? 感覚的にだが少なくとも俺の部屋の数百倍……いや、数千倍はあった。
  とにかくアホみたいに広い。
  おいおい、どこの西洋貴族だ? というくらいゴージャスな装飾品で彩られていた。

 「この部屋は今日こんにちよりリュウタロウ様の部屋となります。好きなようにレイアウトを変えてもらっても結構でございます」

  異世界にいきなり転移してこんなことあるだろうか。
  美少女助けて、魔法使えるようになって、モンスター倒して、学校に通えることになって、しまいには立派なお屋敷の部屋で異世界ライフを満喫できる。
  やっぱり異世界は夢の世界なんだなと心底思った。

 「それと、学園の方からリュウタロウ様宛てにこんなものが」

  バートンが手渡したものはこれから通う学校の制服だった。
  どこぞのアニメの魔道士を連想させるような……とにかくロマンくすぐるようなカッコイイ制服だった。

  バルク団長の粋な計らいで明日から学校に通えることになった。
  明日から楽しみで仕方がない。学校にいくことに楽しみを覚えるのなんて何年ぶりだろうか。
  おそらく俺が「学校たのしー」って思っていたのは小学校2年生までだったか。

  それ以降、学校というものの辛さ、残酷さを知るようになった。俺は誰よりも早く子供をやめていたのだ。
  毎日だるい、行きたくないの一点張り。
  だからこそ今のこの感覚は懐かしく感じたのだ。

  その夜、俺は楽しみのあまり全く寝れなかったことはとてもではないが言えない。

* * *

「リュウ……リュウタ……」

  誰かが俺の名前を呼んでいる。
  なんだ、母さんがくるってことはもう朝か。
  今日も1日、つまらない日常が始まる……

「ねえ、リュウタロウ! 早く起きなさい!」

  俺はその耳元に響く大きな声で飛び起きた。

 「はっ! あれ? 母さんじゃない」
 「あんた何寝ぼけているのよ。今日から学園始まるのよ?」

  そうだった。俺は今、異世界の住人として生きているのだった。
  今日から異世界での学園生活が始まるのだ。
  俺は急いで起き上がり、服を脱ぎだした。

 「ちょ……あんたいきなり何脱ぎだしているのよ!]

 アイリスは慌てて目をそらす。

 「え? そりゃ着替えるために決まっているでしょ」
 「着替えるならそういいなさいよ! バカ!」
 「ご、ごめん……」

  なぜあそこまで恥ずかしがるのか俺には分からなかったが、とりあえず気を悪くしたようなので謝った。

 「着替え終わるまで外で待っているから」
 「わ、分かった」

  元々現実世界できていた制服を脱ぎ、新たな制服に袖を通す。

 (ああ、1年ぶりだな。この感覚)

  なんだかんだ言って高校入学時にも同じような感じだった。
  新しい制服を着て、いざ、高校生活!
  っと、思ったものの始まって1か月くらいで撃沈した。

  そんな苦い思い出もあって後々の学園生活を充実したものにするためには最初が肝心だと思っている。

 「アイリス終わったぞ~」
 「もう、着替えるの遅いわよ」
 「ちょっと懐かしい気分になってさ」
 「どういうことよ」
 「それで、どうかな俺の制服姿」
 「ええ、似合っていると思うわ」

  これから俺は新しい制服を着て、生涯2回目の学園生活がスタートする。
  朝からボリュームたっぷりの高級ブレックファストを済ませ、俺たちは学園は向かった。

 「じゃあリュウタロウ飛ぶわよ」
 「はい……?」

  飛ぶ? なにそれどういうこと?

 「あ、そうか。まだ浮遊魔術を習ってなかったのよね」
 「魔術で空も飛べるの!?」
 「当たりまえよ。学園から一番遠い所からくる子で100キロの道のりを飛んでくる子もいるのよ」
 「ひゃっ、100キロ!?」

  そんなの現実世界だったら学校へ行くだけで旅行気分になれる。
  魔法が使えるこの世界だからこそというものだ。

  でもまあその内覚えなければいけないものだ。
  俺はダメ元でやってみた。

 「なあアイリス、浮遊魔術ってどういう風にやるの?」
 「気の使い方をマグで勉強したわよね? その要領で空を飛びたいという思いを込めるのよ」
 「こうか?」

  気を落ち着かせ、それを飛びたいという意志を込める。
  するとみるみる身体が浮いて、空高く舞い上がった。

 「おっしゃ~! できたぞアイリスー」
 「ホントあなたって型破りな男よね」

  この魔術もL4(ランクフィーア)レベルの常用魔法で人によっては習得するのに1か月かかる人もいるらしい。

  俺たちは学園に向けて出発した。
  刀のように腰に差した相棒、ヘッズナイトが日の光でより一層輝いて見える。

 「そういえばあなたマグを変わった形で持ち歩くのね」
 「えっ……ああ、そういえばアイリスってどこにマグを閉まっているの?」

 「ここよ」と言って手からマグがにょきっと出てくる。
  そういえば、前回に例の化け物と戦った時もそんな感じで召喚していた。
  これはどうやら自身の魔力で別の異次元空間を生み出し、物を収納できるスペースが作れるらしい。

 (いやいやどこの収納王だよ)

  この世界では俺の思っていた以上に魔法を便利道具のように利用していた。
  でもまあ、俺は腰に差している方がなんかしっくりきた。
  異世界LOVEとはいえ、日本男児としての風習は失っていなかった。

  数分飛ぶとあっという間に目的地に着いた。

 「うわ、でけえ!」

  東京ドーム何個分だか分からないくらいの大規模な建物が姿を現した。

  ここ、王立セントバーナー魔術学園は初等部から高等部まであるベラード王国最大の魔術学校なのだ。

  俺はここの高等部2年としてこれから通うことになる。
  空からは沢山の生徒が学園目指して飛来してくる。
  異様な光景で普通の人なら違和感を覚えるだろうが、異世界というジャンルをこよなく愛し妄想にふけっていた俺だからこそ受け入れるのも早かった。

 「そろそろ降りるわよ。魔力を徐々に抑えて」

  学園の手前で着地するため魔力を徐々に抑え、着地に備える。
  皆、慣れたような魔力さばきで次々と着地する。

  だが、魔力の扱いに慣れていなかった俺はスピードが落とせず、そのまま地面めがけて突進していった。

 「リュウタロウ! なにやっているのよ魔力を抑えなさい!」
 「いや、んなこと言われても……うわー!」

 「きゃっ!」

 (あれ? 痛くない……しかも誰かとぶつかったか?)

  目の前が真っ暗で何も見えない。
  どういうことだ? まさか俺……死んじまったのか!?

 「ねえリュウタロウ……あなた入学初日から何やっているのかしら……?」

  あれ? アイリスの声が聞こえる。じゃあここは?

 「あ、あの……すみません。顔どかしていただけませんか?」
 「えっ!?」

  どうやらそこは死の世界でもなんでもなく、女の子のスカートの中だったようだ。

 「う、うわっ! ご、ごめんなさい! わざとじゃないんです!」

  周りの視線は一気に俺の方に向いた。
  後ろではアイリスがずっと俺の方を見て睨んでいる。

 (あ、終わったわ……俺の異世界学園ライフ……)

  ショックを通り越して苦笑い。

 「ご、ごめん! じゃ、じゃあ!」

  俺はその場からなんとしても立ち直るため1人学園の方へ突っ走っていった。

 「あ、リュウタロウ待ちなさいよ!」

  あとからアイリスも追いかける。

  こうして俺の異世界学園生活は初日から波乱の展開で幕開けするのだった。
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