5 / 41
第1章 異世界転移編
第4話「相棒」
しおりを挟む「す、すごい賑わいだ」
ここはドール大陸、世界でも3番目くらいに大きな大陸だそうだ。
そして俺たちはドール大陸北部の王都「ベラード王国」に来ていた。
海に近いことから主に漁業が盛んでベラードの魚介といえば有名らしい。
立ち並ぶ露店型の市場、赤レンガで出来た西洋風を思わせる住宅街。
まさに漫画やアニメに出てくるような世界そのものであった。
「やばいこれは興奮する! 異世界の王都……想像通りの世界じゃないか!」
「あなたは王都に来たのは初めて?」
銀髪靡くこの美少女はアイリス・リーベンバッハ
王国騎士団長を兄に持つ、おそらくエリートな家柄の少女だ。
「え、うん。初めてだけど…」
「そう、じゃあまずこのマグを兄に渡しに言ったらこの都を案内するわ」
「ま、まじですか!? ぜひお願いします!」
「なんでそんな興奮しているのよ」
確かにこの時の俺は鼻息も荒く、正直気持ち悪かった。
だが、こんな夢にまでみた世界に自分が立っているという現実を前に黙っていろっていう方が無理がある。
前方にそびえるのはこの国の象徴、ベラード城。
青色の塗装、装飾されたこの城は存在感の塊であった。
その城の手前にあるひときわ大きい建物が騎士団本部だ。
「ここよ」
彼女は本部の中に入っていき、後に続いた。
「お~アイリス無事着いたか」
銀髪で長身のイケメンがアイリスの元へやってくる。
(い、イケメンだとお~!?)
まあなんとなく妹さんのお顔を見て予想はしていたが、お兄さんも普通にハンサムだった。
「うん、兄さん。例のアレを持ってきたよ」
「おお~新しいマグか! ようやくだな」
彼はマグを持ったまま目を瞑って動かなくなってしまった。
(ん? なにをする気だ?)
するとマグから青白いオーラがアイリス兄の身を包み込む。
「我が正義の意志に答えよ……呼応!」
蒼白いオーラがさらに濃く、強くなり、体全体を覆い隠す。
邪悪なものを一切感じない。
鋭い意志が光を通してこちらにも伝わってくる。
「なんだ? この心地よい光は……」
「兄さんの意志にマグが反応しているのよ」
「意志? じゃあこの光は」
「そう、兄さんの団長としての強い意志がオーラとなって表れているのよ。これが魔力の放流」
ものすごい力を感じた。
近くに立っているだけでなにかに身体を押されているような、そんな感じだった。
しかししばらくするとその光はだんだん弱まっていき、消えてしまった。
「あれ? 消えちゃったけど……」
「おかしいな、マグが呼応してくれない」
「やっぱりそうなのね」
「やっぱり? そういえば隣にいる男性はどちらの方なのかな?」
「え? ああ、彼はリュウタロウ。私が道中で盗賊に襲われているのを救ってくれたの」
するとアイリス兄は一気に表情を変えた。
「な、なに!? 盗賊に襲われただと? 大丈夫だったのか?」
「うん、大丈夫。彼が助けてくれたから」
「すまない、うちの妹が迷惑をかけた」
アイリス兄は深々と頭を下げた。
「い、いやいやいや頭上げてください!」
「いきなりのことでアイリスに護衛をつけることができなかった私の責任だ」
彼は自分の妹を傷つけてしまったということに大きな後悔があるのだろう。
「自己紹介が遅れてしまって申し訳ない。私はベラード王国、第1護衛騎士団『祇王騎士団』団長のバルク・リーベンバッハだ。宜しく頼む」
「財前 龍太郎です」
握手をしようとした時、俺は団長の右手に剣で切り裂かれたような古傷があるのを見つけた。
(か、かっけええ! 歴戦の古傷ってやつか!)
「ところでリュウタロウ、君は変わった格好をしているがどこから来たのだ?」
古傷ばかりに目がいってしまい、いきなり質問されたのでびくっとした。
「へっ? いやそのちょっと遠い所から」
「彼は放浪者なのよ」
アイリスがすぐに答える。
「なんと、さすらいの旅人というわけだな? ではここにきたのも初めてか?」
「あ、はい。まず王都に来たのが初めてですね」
するとバルク団長はニッコリと笑った。
「そうかそうか、ならアイリス。ベラードの町を彼に案内してあげなさい」
「この後行くつもりだったわ。ところでそのマグの事なんだけど……」
アイリスは道中で盗賊に襲われた所から俺がマグを使って撃退したことまでをすべて話した。
「なるほど、そういうことがあったのか。確かにこのマグは私しか使えないはず……」
バルク団長は俺の方を向き、先ほどのマグを手渡してきた。
「リュウタロウ、もう一度このマグを呼応されてはくれないか?」
「え。でも俺あの時は必死でどうやって使ったか覚えていないんです」
「それなら私が教えよう」
俺は魔力の放流の仕方を団長から教えてもらい、マグを握った。
「深呼吸するんだ! 気を心臓に集中させろ!」
「は、はい!」
「落ち着いたら自分の意志をマグに伝えさせるんだ。なんでもいい、自分が願うことをマグに伝えろ!」
自分の願い……それは!
マグが俺の意志を受け取り、大きな光の渦ができた。
やがて渦は巨大化し、俺の身を包み込む。
光の渦はとどまることを知らない。さらに大きく、激しさを増す。
「今だ! 唱えろ!」
「呼応!」
詠唱とともにその光が爆発的に膨れ上がる。
体が熱い、これがマグの力……!
「なんて魔力だ。こんなの今まで見たことがない」
「兄さん、彼の魔力は……」
「ああ、普通じゃない」
マグが蒼く強い光を放つ。
(この鼓動、高揚感。力が湧き上がってくる!)
力はどんどん膨れ上がる。
「よし、もうその辺にしておけ」
「え、え? ど、どどどうやって止めるんです?」
さっきより一層光が鋭くなる。
「気を静めるんだ。気持ちを落ち着かせろ」
「気持ちを落ち着かせる……」
すると光が収まっていき、渦が消えた。
「ふう……」
「すごい力だ。君は高級魔術師なのか?」
「いえ、魔法とか知りませんし……」
「な、なんだと!? では魔術は使えないのか?」
「え、ええ」
団長の表情は凄いを通り越して呆れていた。
「どうやらこのヘッズナイトは君を選んだようだ」
「え、まじですか」
「あのようなマグの輝きを私は一度も見たことがない。これは君に託そう」
そういうと俺はマグをそっと受け取った。
「これからそいつはお前の相棒だ。大事にしてやれよ」
[相棒……か」
(異世界へ来て初めての相棒……やばいニヤける)
俺はヘッズナイトを天に掲げた。
「よっしゃ~これからお前は俺の相棒だ! よろしくな!」
マグが蒼く輝き、俺に答えた。
0
お気に入りに追加
351
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる