無能と蔑まれし魔術師、ホワイトパーティで最強を目指す

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第5章

104.心にしまって

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 お待たせしており、申し訳ございません。
 久々の更新です!

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「え、エリー……」
「ダメ、マルくん! 見ちゃダメぇぇっ!」
「うおっ!?」

 恥ずかしさのあまりエリーが俺の目を塞ぐ。
 
「と、とにかくエレノアさんはこれを羽織って試着室に行ってください!」

 この声はウィスだろうか。
 俺の視界はこの声と同時に鮮明になると、エリーの姿はなくなっていた。

「もうっ! 今のは何なんですか!」

 ウィスを含め、他の女性陣の鋭い目がカイザーと店主に向く。
 
「ちょ、ちょっとみんな顔が怖いよ! 俺たちはただみんなに似合う水着を……なぁ店主? ……ん
ん?」

 彼女たちの殺意を感じ取ったのだろう。
 さっきまでそこにいたはずの店主が既に消え去っていた。

「お、おいジロー! てめぇ裏切り――」
「「問答無用ッッ!」」
「「うあぁぁぁぁぁぁ!!」」

 その悲鳴は店内に大きく響く。
 それからしばらくして、着替え終わったエリーが試着室から出てきた。

「はぁ……」
「大丈夫ですか? エレノアさん」
「え、ええ。なんとか……」

 エリーはどんよりとした顔で疲れ切っていた。
 まぁあんな姿でみんなの前に曝け出せば、そうなるのも無理はない。

「エリー、その……大丈夫か?」
「っっ!」
「え?」

 声をかけた途端、エリーは顔色に比例しない素早い動きで物陰に隠れてしまった。
 
「あ、あの……エレノアさん?」
「ま、マルくん! 今のは忘れてっ! 絶対にっ!」
「忘れてって……さっきのビキニ――」
「言わないでっっ!」
「すみません……」

 怒られてしまった。
 俺に見られたことが相当ショックだったのだろう。

 確かに同性ならともかく、異性に見られるとか地獄でしかないもんな。
 同性に見せるだけでも恥ずかしかっただろうに。

 出来れば俺も忘れてやりたい……

 でも……

 ……そう簡単に忘れられるわけないんだよなぁぁぁぁ!!

 あの極限にまで無駄を省いたフォルム。
 そして相手がエリーだからこそ、映える肉体美。
 ほんの一瞬だったが、今でも鮮明に残っている。

 ごく一般的な男があれを見て忘れろということが無理に等しいのだ。

「あぁ……その顔は忘れるなんて無理っていいたげな感じですね」
「そっ、そんなことは……!」
「マルク、変態」
「……」
「変態じゃない! あとクレアさんとステラさんもそんな目で俺を見ないでください!」

 ゴミを見るような目……とまではいかないが、あまり快くない眼差しを向けられているのは分かった。
 さっきカイザーに向けられた殺気よりも幾分かはマシだが。

「ホント、最低な店です。皆さん、他の店に行きませんか?」
「そうですね。奥で縛っておいた変態さんが起きる前にここを出ましょう」

 たち……?
 その言葉が気になり、奥の方をちらりと見ると、いつの間にか店主も吊り上げられていた。
 二人は泡を吐きながら、仲良く並んでミノムシ状態になっていたのだ。

「……俺もいこ」

 気づけば、女性陣は店内から姿を消していた。

「ま、マルくん!」

 だが何故かエリーだけは店の前で俺を待ってくれていた。

「あの、エリー……さっきはその――」
「マルくんも……好き……なの?」
「え?」

 俺が言う前にエリーに言葉を遮られる。
 
「好きって何が?」
「その……ああいうみず……」
「みず?」
「や、やっぱりなんでもない! さ、早く行くよ! みんなに怒られちゃう」
「あ、ああ……」

 ボソッと言っているからか聞き取れなかった……というのは嘘だ。
 でもなぜ彼女がそう聞いてきたのは分からなかった。

「……ちくしょう。そりゃ好きに決まっているだろ……」

 なんて。
 そんなこと言ったら軽蔑されるんだろうな。
 この心は奥深くにしまっておこう。

 そう、俺は誓うのだった。

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 いつもご愛読ありがとうございます。
 だいぶ更新まで期間が空いてしまい、申し訳ございません。
 前々話でもお話した通り、現状書き溜めの段階にあるので、更新も少しずつになってしまうかと思いますが、
 頑張ってやっていこうと思っておりますので、これからも応援のほどよろしくお願い致します。
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