無能と蔑まれし魔術師、ホワイトパーティで最強を目指す

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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2巻

2-3

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 ◆ ◆ ◆


「魔物討伐の次は救援活動かよ!」
「仕方ないだろ。あの様子じゃ、どうも只事ただごとじゃないみたいなんだから」

 俺たち東班は西班への救援へと急いでいた。

「ていうかマルク、浮遊魔法って本当にあるんだな! 魔法共有……だっけ? 俺、初めて空を飛んだよ」
「俺だって初めてだよ。魔法職ではあるけど、浮遊魔法は扱うのにかなり技量がいるからな」

 俺たちは今、浮遊魔法でできた翼を羽ばたかせながら空を飛んでいた。
 西班担当の区域はやや遠く、木々の生い茂る地上よりも空中を移動した方が速いためだ。
 しかし、いざ移動しようとなったところで、問題が一つ発生した。
 浮遊魔法を使えるのは、錬度の高い魔術師だけということだ。
 物理職のカイザーはもちろん、魔術師の俺でも扱うことはできない。
 そこで魔法共有という手段を使うことになった。
 魔法共有とは、使用者が他の相手に一時的に同じ効果を持つ魔法を付与できるというもの。付与できる魔法には制限があるが、これなら誰でも浮遊魔法を使うことができる。
 実力ある魔術師の中でも一握りしか使えないが、今回のメンツならそれが可能だった。
 驚くことに、各パーティにそれぞれ浮遊魔法と魔法共有のどちらも行使できる人材がいたのだ。流石は一線級の冒険者である。何か起きる度に予想を超えてくることばかりだ。
 ちなみに俺たちのパーティは、エリーとステラさんが魔法共有を行うことになった。

「俺もいつか使えるようになりたいな」

 そう呟くと横にエリーがやってくる。

「マルくんの魔力量ならどっちもすぐ使えるようになるよ。これこそ、結構な魔力を使わないといけないからね」
「浮遊魔法の操作も同時に行っているんだっけ? 大丈夫なのか?」

 結構な魔力消費に加え、浮遊魔法の操作も共有主がやらないといけない。だからエリーやステラさんの負担はとんでもないはずだ。

「大丈夫だよ。ステラと魔力を共有して負担は半減させているから」
「お気になさらず、マルクさん」

 エリーのすぐ横を飛んでいたステラさんもニッコリと笑いかけてくる。
 俺はステラさんに「無理しないでくださいね」と一言言って、エリーの方にも目を向けた。

「本当に、無理するなよ」

 そっと小さな声で言うと、エリーはニコリと微笑んだ。

「うん、ありがと。やっぱり、マルくんは優しいね」
「べ、別に……幼馴染として心配するのは当然だろ」

 俺にとって彼女は幼馴染である以上に、恩人なのだ。心配しないわけがない。

「それにしても、向こうで一体何が起きたんだろうな」
「分からない。けど、壊滅するまで追いやられるくらいだから、何か予期しない事態が起きたのかも」

 エルガさん曰く、途中で共鳴魔法が途切れたから詳細は分からないが、魔物の襲撃があったらしい。
 あまり詳しくは知らないが、向こうもSランクパーティで固められた精鋭だったのは間違いない。
 経験豊富な人が多いって聞いていたから、エリーの言う通りイレギュラーなことがあったのだろう。
 ではそのイレギュラーが何なのか……真っ先に思い浮かんだのは例の災害指定級だった。
 それなら西班壊滅の説明がつく。
 いくらSランクパーティとはいえ、災害指定級の討伐はあまり前例がない。むしろ全滅させられてもおかしくないのだ。

「なんだか胸騒ぎがするな……」

 嫌な予感が脳裏をよぎる。
 もし予想が正しければ、間違いなく苦戦を強いられる戦いになるだろう。
 そんな中で、俺なんかが役に立てるのか? こんな優秀な冒険者が揃ってる中で……

「マールくん」
「ん、エリー? どうした、そんなに顔を近づけてきて」

 もう少しで鼻と鼻が触れ合うんじゃないかという近さだ。

「なんか思い悩んでいる感じがしたから」
「え……」

 どうにも俺は考えていることが、顔に出てしまうタイプらしい。
 自分では出してないように思っていたんだけどな……

「ごめん。少し不安になっちゃって……」

 正直に答える。

「わたしも不安じゃないって言ったらウソになるよ。今回の依頼は普段と違うから」

 エリーは続けた。

「実を言うとね、わたしもマルくんやカイザーくんと同じような気持ちだったの。災害指定級の話を聞いた時には不安でいっぱいだったし、断ることも視野に入れていた」

 エリーは何かを考えるかのようにうつむくと、更に続けた。

「でもね、それでもやろうって思えたのは、信頼できる仲間とマルくんがいるからなの」
「俺が……?」

 エリーの立場的に仲間の存在が大きいのは分かるけど……

「マルくんは前にわたしとリナさんの争いを止めてくれたでしょ?」
「ああ、あの時か……」

 リナとエリーがぶつかった時は本当にとんでもなかった。もはや常人にはできない高度な喧嘩けんかだった。俺も止めるのに無我夢中だったから、あまり記憶にないけど……

「もしマルくんが止めてくれてなかったら、わたしはどうなっていたか分からない。完全に頭に血が上って冷静な判断ができてなかったから」
「エリー……」
「それに、あの時に思ったよ。やっぱマルくんはすごいなって」
「そ、そうか?」
「うん。だって、あの状況をたった一人で収めちゃったんだもん。自分で言うことじゃないけど、わたしが感情的になったら、普通の人じゃ止められるものじゃないよ」

 さらっと自慢? っぽいことを言ってくる。
 まああれを止められたのは、俺自身も驚いていることだ。正直言って奇跡に近い。

「だからマルくんには期待しているの。また、何かあった時に必ず助けてくれるって」
「も、持ち上げすぎだって……」

 すごいプレッシャーを感じるんですが……

「ふふふっ、でもこれは本心だよ。わたしと魔法の特訓を始めてから、どんどん成長してるし」
「あまり実感がないな」

 自分の成長に自分では気が付かないのは、よくある話だ。
 今のところ自覚はないけど、そう言ってもらえるのは素直にうれしい。

「ありがとう。なんか少し不安が解けた気がするよ」
「ホント?」
「うん。期待に応えられるかは分からないけど、全力で頑張るよ。エリーに特訓の成果を見せる為にもね」

 自分ができることなんて些細ささいなことかもしれないけど。
 俺はエリーの、Sランクを冠するパーティのメンバーの一員なんだ。できることが少ないなら、それを全力でこなせばいい。やれないことであっても、おくすることなく挑戦すればいい。
 エリーの言った通り、くじけそうになった時は仲間が守ってくれるから。

「その意気だよ、マルくん! 皆で頑張ればきっと大丈夫だから!」
「ああ、そうだな!」

 俺の心の奥底から、何とも言えない感情がき上がってくる。
 これが〝希望〟という奴なのだろうか。
 その正体はよく分からなかったが、おかげで俺の心の中に潜んでいた不安はいつの間にか消えつつあった。
 そんな話をしているうちに、俺たちは西班の調査区域に入っていた。

「これは……」

 区域に入った途端、俺たち一行はその異変をすぐに感じ取った。
 辺り一面に霧のようなものが発生していたのだ。
 それも普通の白い霧ではない。紫色をした不快極まりないものだった。

「なんだよ、この霧は。てか吸っても大丈夫なのか?」

 カイザーが毒霧か何かを疑っているようだが、その可能性はある。
 今のところ、身体に変化はないが……

「ここもすごい魔力濃度だね。下手したらさっきよりも濃いかも」

 確かにさっきとはどうも雰囲気が違う。
 辺りに魔物の気配もないし、一体どうなってるんだ?

「おい、あれ見ろよ!」

 前方に見える黒い影――倒れている者が数名いた。しかし、西班のメンバーではなさそうだ。
 俺たちは一旦いったん地上に降りると、倒れている者たちへと近づく。

「気絶しているだけみたいだな。命に別条はないようだが」

 エルガさんがそう言った。
 とはいえ、完全に昏睡こんすい状態にされているようだ。

「不自然だな。傷跡一つないぞ」

 エルガさんはそう口にすると、周囲に指示を出す。

「他に倒れている者がいたら報告してくれ。治癒組は回復魔法を……すまないが、【聖光白夜ルークス・ホーリーホワイト】のメンバーは西班メンバーの捜索に当たってくれないか。何かあったらすぐに共鳴魔法で報告してほしい。ここならまだ繋がるはずだ」
「分かりました」

 エリーが快諾し、パーティでの捜索を行うことになる。
 エルガさんのパーティメンバーも、手分けして森の奥へと散らばっていった。

「さて、わたしたちも行こっか」

 エリーを先頭に捜索が始まる。
 俺たちは現在地点から南を捜索していく。

「なんだか、気味が悪いな」

 カイザーがそう口にした。
 元々薄暗い空間に、この紫色の霧が相まって、余計に不気味さが際立っていた。
 この霧の正体は何なのだろうか? 謎の不快感、でも今のところ人体に害はない。
 となれば、この霧が果たしている役目は――

「おい、あそこにも人が倒れているぞ!」

 カイザーが指差す方向に、倒れた二つの人影が見える。
 近づいていくと、俺たちは目に入った光景に唖然あぜんとした。
 周りは血痕けっこんで赤く染められており、本人たちも大量の出血で地に伏していたのだ。

「シンさん、ゼファイドさん!」

 エリーが駆け寄る。
 どうやら顔見知りのようだ。

「すぐに回復を! ステラもお願い!」
「分かったわ!」
「エリー、俺も手伝うよ」

 エリーの指示に、俺も手伝いに加わる。一応俺も、中位の回復魔法くらいは使えるからな。

「ありがとう、マルくん。シンさんの方をお願いしてもいい?」
「分かった!」

 回復魔法が使える者が手分けして二人の治療を始める。
 俺はシンさんという人に近づくと、すぐに生死の確認を取った。

「良かった。息はある」

 血だらけではあるが、脈は動いていた。
 これだけの負傷をしながらも、生きているとは驚いたものだ。
 とはいっても、瀕死ひんし状態であることに変わりはない。すぐに回復魔法を行使する。

迅速回復スウィット・ヒール

 めくれたローブから、俺と近い年代くらいの若者の顔が見えた。

「頼む、意識を取り戻してくれ!」

 そう願いながら、回復魔法をかけ続ける。

「ん、んん……」

 半開きであるが、目を開け始めた。

「お、おい。大丈夫か!?」
「に……げるん……だ……」

 震える声で完璧かんぺきには聞き取れなかったが、確かにそう聞こえた。

「ヤツ……が来る! 早く……!」
「ヤツ……?」

 初めは何を言っているか、さっぱりだった。
 だがその言動の意図をすぐに知ることになった。

「みんな構えて! 何かが来る……!」

 突然、エリーの叫び声が聞こえてきた。
 その瞬間、スタスタと小さな足音が耳に届く。

「な、なんだ……?」

 構える俺たち、足音はどんどんと大きくなっていく。
 霧のせいで先は見えないが、足音だけは鮮明に聞こえてくる。
 少なくとも魔物の足音じゃない。これは――

「またネズミが入ってきたみたいね」

 どこからか、聞こえてくる謎の声。
 同時に、霧の奥から人影のようなものが見えてきた。

「何者ですか!」

 エリーがそう言い放つと、人影は答えた。

「アタシは何者でもない。アタシはただ、果たすべき使命を全うする為の道具……」

 その一言と共に霧の中からそっと現れる。
 鮮明に姿が見えるようになると……


 ドクンッ!


 俺の中で大きく脈が打たれた。
 ただ一瞬だけ、一点を見ただけなのに。

「おい、あれって……」

 カイザーが声をあげる。
 紫色のローブ姿に顔には狐型の仮面。頭上には二つの山ができている。
 そして何より目についたのは、ローブ下からこっそりとのぞかせていた太い尻尾しっぽだった。

「間違いねぇ、あれは獣人族ビーストだな」

 カイザーがそう言う。
 だがそれよりも俺は、さっきの強い衝動に驚きを隠せずにいた。
 ……なんだったんだ、今のは……




 第二章 死闘


 混沌こんとんとした状況の中、現れたのは仮面をつけた獣人族ビーストだった。
 体格は人間とさほど変わらないが、その尻尾が大きな存在感を示している。

「ネズミは駆除しないと。そうしないと、使命を果たせない」

 仮面の獣人族は言う。

「ネズミって俺たちのことか?」
「多分そうだろ。状況的に」

 でもまさかこの獣人族が今回の騒動の黒幕なのか。
 目的はなんだ? 一体何のために……それに、さっきの衝撃は一体……
 今では少しずつ収まってきたが、未だに脈拍は速いままだ。

「う、ううっ……」

 すると、身構える俺たちの後ろで、俺たちに治癒をしてもらった例の二人が立ち上がっていた。

「ゆ、油断するなエレノア殿。ヤツは只者じゃないぞ!」

 そう言ったのは老人魔術師だ。
 エリーが確かゼファイドさんって言っていたな。

「まだ、立ち上がれる気力があったなんて。見上げた根性ですね」
「こんなところでくたばるわけにはいかないからね。せっかく仲間も駆けつけてきてくれたのに……ぐっ!」

 シンさんはそう言うが、その場でガクッとひざをついた。
 まだ完全に傷が癒えきっていなかったのだ。

「二人とも無理はなさらず、ここはわたしたちにお任せください! 治癒班は引き続き、お二人の手当をお願いします! 戦闘班は準備をして!」

 メンバーに指示を出しつつ、エリーは詠唱準備に入る。
 俺たちもその指示に従って、各自戦闘態勢を取った。

「貴方の目的は何なんですか? なぜこのようなことを……」

 エリーがそう尋ねると、仮面の獣人族は答えた。

「お前たちが知る必要はない。どうせ、ここで死ぬのだから」
「要するに教える気はないと?」

 仮面の獣人族はそれ以上は何も言わなかった。
 でもこれは想定の範囲内だ。初めから素直に教えてくれるような相手なら、苦労はしない。

「無駄話はこれで終わりだ。ネズミは駆除する。一匹たりとも、のがしはしない……」

 仮面の獣人族は右手を前に突き出す。

「行け。奴らを駆逐するのだ」

 その声と同時に、背後からもう一つ影が迫ってきた。
 今度はかなりデカい影だ。ドスドスと重い足音を響かせ、少しずつこちらに近寄ってくる。

「来たか……バケモノめっ!」

 背後のゼファイドさんが苦々しく言ううちに、その影の姿が鮮明に見えてくる。

「お、おい……マジかよあれ」
「なんだ、あれは……」

 現れたのは、角の生えた牛のような頭と人のような身体を持つ、異形のバケモノ。
 背中には黒い翼、右手には白金はくきんに輝く大鎌を持ち、刃の先端には血痕が色濃く残っていた。

「魔人アステリオス……!?」

 エリーがボソッと口にする。

「魔人って、あれが?」
「そうだ。そしてあれが災害指定級の正体……この森を邪悪に染める元凶。我々を襲ったのも全て奴らの仕業だ」

 俺の疑問に、ゼファイドさんが答えた。
 環境をも変えてしまうという伝承を持つ、強力な魔人。
 まさか本当に存在するなんて……悪い予感は的中してしまったみたいだな。

「エレノア、すぐに他の班員に共鳴魔法を――」
「無駄だよ。この魔力濃度じゃ、共鳴魔法は使えない」

 ステラさんの提案を遮り、否定する仮面の獣人族。
 だがその話は嘘ではなかった。
 俺も他のメンバーも何度も行使してみるが、誰一人使えるものはいない。
 完全に外界との通信が断たれた。まるでこの場所だけ別世界になったかのように。

「エレノア殿、君たちだけでも早く逃げるのだ。あいつは我々の手に負えるものでは――」
「そうはいきません」

 エレノアはゼファイドさんの言葉を遮り、断る。

「ここでわたしたちが背を向ければ、被害は増える一方です。それにお二人を置いて逃げろだなんて、わたしにはできません」

 きっぱりと言い切った。

「たとえ逃げたとしても、向こうはわたしたちを見逃してくれないみたいですし」

 バケモノの赤く光る鋭い眼は、完全に俺たちをとらえていた。
 どんなに頑張ったところで、あれからは逃げられない。
 確証はないが、俺もそう感じる。

「やるしかないみたいだな」

 俺は一歩前に出ると、エリーの隣に並んだ。

「俺も全力で手伝うよ。こんなの見せられちゃ、黙っていられないからな」
「マルくん……」
「団長がそう言うなら、俺も御供しますよ! ぶっちゃけ、怖いですけど!」

 カイザーも剣を片手に持ちながら、俺の隣に並んだ。
 最後の一言は本音だろうな。俺も同じ気持ちだけど。

「カイザーくんも」
「私たちも想いは同じですよ、エレノア」

 レックスさんやハクア、ステラさんも、エリーの言葉に賛同する。
 もうこれからやることは決まったみたいだ。

「みんな……」

 俺はエリーの肩にそっと手を乗せる。

「やろう、エリー。こいつをぶっ倒して、みんなで帰るんだ」
「……うんっ!」

 エリーの眼差しがキリッとしたものに切り替わる。
 みんなの想いは一つになった。

「行くよ、みんな!」

 エリーのその一言で、俺たちパーティはバケモノに刃を向けるのだった。


 戦いが進む中、カイザーが悪態あくたいをつく。

「くそっ、なんなんだあいつは……」
「物理攻撃も効かないどころか、魔法も受けつけないなんて……」

 魔人の大鎌が地を抉り、咆哮と共に俺たちへと威圧感を与えてくる。
 一方で俺たちの攻撃は、一切魔人に通っていなかった。
 剣での攻撃も、魔法での攻撃も同様だ。

「《大炎雨フィル・フレイム》!」

 エリーが高位の炎属性魔法を放つが……
 ジュッッ!!

「やっぱり、効かない……」

 謎の壁のようなものに遮られてしまう。
 どんなに高位の魔法だろうが、関係なかった。

「どうなってやがる。なんで攻撃が届かない!」

 嘆くカイザーに俺は仮説を唱えた。

「多分、あらゆる攻撃を無効化する障壁みたいなものが張られているんだろう」
「あらゆるって、そんなことがあり得るのか?」

 人間の常識で語るなら、普通はあり得ないことだ。
 でも魔人であるなら、あり得ない話ではない。

「お前たちに勝ち目はない。今のこいつを制御できるのはこの世に私しかいないのだから」

 仮面の獣人族は再び魔人バケモノに指示を出す。

「さぁ、恐怖に脅えるがいい。その心臓諸共、握りつぶされるその時まで」

 ――GYUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!
 禍々まがまがしい咆哮が耳に鳴り響く。
 その咆哮を放つやいなや、魔人は白金の大鎌を振り下ろしてきた。

「ぐぅっ……!」

 振り下ろされたそれは地面を大きく削り、その衝撃と粉塵ふんじんで身動きと視界を奪われる。 
 そのすきをつくように、魔人は攻撃を浴びせてきた。

「きゃああっっ!」
「エリー!」

 エリーの懐に魔人の一撃が入る。

「うわっっっ!!」
「あぁぁぁぁっっ!」

 続けてカイザーたちにも大鎌が振るわれる。

「くそっ、《炎弾雨フレイムレイン》!」

 ダメ元で魔法を放つが、当然のように弾かれる。

「何度やっても無駄ですよ。貴方がた程度の力では、この剛体には触れることさえできません」
「くっ……!」

 悔しいが、今のままじゃあの仮面の獣人族の言う通りだ。
 何か策はないのか? 奴を打ち破る策は……


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