不遇恩恵で世界最強~貰った恩恵が【経験力】だったので型破りな経験をしてみようと思う~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
上 下
5 / 13

5話 迷宮へ行こう!

しおりを挟む
 
 衝撃の事実から少しして。
 俺はアリスの家にお邪魔していた。

「お邪魔します」

「どうぞどうぞ~」

 俺はアリスの家の玄関を通ると、そのまま自室の方へ案内される。
 途中、アリスのご両親にも会ったので挨拶をしつつ。
 
「ちょっと待っててね。いまお茶とか持ってくるから」

「サンキュー」

 自室で待つように言われ、俺は近くに置いてあった丸テーブルの近くに座する。

「この部屋に入るのも久しぶりだな……」

 もう当分アリスの家には来ていなかった。
 最後に来たのは3年前くらいか?

 当時と比べると多少インテリアとかは変わったが、白を基調とした清潔な部屋は昔同様健在だった。

 俺とアリスは家はさほど遠くはない。
 なので学校も初等部の頃からずっと一緒に通っている。
 
 馴れ初めは親同士が仲が良かったことから始まった。
 最初は人見知りがすごくて、暗くて、付き合いにくい子だなと思っていたが、今ではその面影の片鱗もないくらい明るくなった。

 そして今もこうして良好な仲は続いている。

 俺にとっては、かけがえのない友人であり、大切な人だ。

「お待たせ。じゃあ、早速始めようか」

 アリスがお茶とお菓子を乗せたお盆を持って帰ってきた。
 アリスはお盆をテーブルの上に置くと、俺の真向かいにペタン座りする。

「なんか、こうやってアリシアくんが家にくるの久しぶりだね~」

「だな。前に来た時はまだ中等部に入る前だっけ?」

「うん。あの時は……ふふっ」

「わ、笑うなよ! あれは運が悪かっただけなんだって……」

「はいはい」

 掘り返されると、すぐに蘇ってくる過去の記憶。
 ぼーっとしていたら土手にハマってそのまま沼に落ちていったという、思い出すだけでも恥ずかしすぎる出来事。

 ちょうど、アリスの家の近くで起きたことだったからシャワーとかを借りたわけだ。
 
 でもアリスの家に上がったのはそれが最後。
 それからはお互い色々と忙しくなって学校が登下校くらいしか会わなくなった。

「なんか懐かしいね」

「ああ。ほぼ毎日、日が暮れるまで遊んでいた頃のことを思い出すよ」

 しばらく過去の懐かしさに浸りつつ。
 俺たちは茶菓子をポリポリと食べながら、談笑する。

 そんな時間が少しだけ続くと、

「そろそろ、例の話に移ろうか」

「そうだね。多分、このまま行っちゃったら時間忘れて話し込んじゃいそうだし」

 いよいよ本題へ。
 俺はアリスに自分が試そうとしていることや迷宮に入る手立てができたことを真っ先に話した。

「なるほど。事情は分かったけど……なんで迷宮なの?」

「迷宮にはモンスターがうじゃうじゃいるだろ? それを狩りまくるんだ」

「狩りまくる……?」

「そう。この【経験力】と恩恵がステータスボードに書かれていた概要通りなら、経験することで俺のステータスは無限に上がるということだ。そこに俺の天恵【根性】が加われば……」

「無限にステータスを上げられるかもしれない……そういうこと?」

「まぁ流石に無限は無理かもしれないけど、【根性】の天恵がある俺なら人の何百倍も動くことができるからな。人道を越えた極限の経験でステータスを爆上げさせることできるかもしれないってことよ」

「なるほど……」

「それと、もう一つ見てほしいものがあるんだ?」

「見てほしいモノ?」

 俺は自身のステータスボードの恩恵欄をアリスに見せ、そのすぐ下に小さな文字で書かれていた部分を指さした。

「経験ポイント……?」

「うん。これは推測だけど、この経験ポイントってやつを増やすことで能力か何かが貰えるんだと思う」

「能力って……【根性】や【経験力】以外の?」

「多分」

「じゃあ、もしアリシアくんの言っていることが正しかったとしたら……」

「ああ、アリスの察する通りだ」

 この【経験力】って能力はとんでもないものだってことが証明される。

 通常、能力は一人一つまでしか持てないことになっている。
 持てない、というか二つ以上持っている人が限りなく少ないってこと。

 俺みたいな例外も世の中には少なからずいるらしいからな。

 でもそういう人間でさえ能力は二つだ。

 三つも四つも持っている人間は多分、世界中どこを探してもいないだろう。

 ちなみに理由は役職を授かった時点で持てる能力は天恵で既に手に入れてしまっているから。
 役職を授かった者は天恵で貰った適性で自身の基本ステータスを高めることができる。
 
 だがその代わり、他の能力を得ることはできない。

 例えば【剣術適性】を持っている人間が【魔術適性】を手に入れようと努力しても、不可能だということだ。

 人は天恵という能力を手にし、恩恵という役職を手にした時点で人生が決まる。
 まるで神々が人を操って導いているかのように、レールに敷かれた人生を歩むことになるのだ。

 それが自分の望んだ人生でなくても。

 だが勘違いしてほしくないのは人生の分岐点は多少なりともあるというところ。
 例えば恩恵が【剣士】だからと言って冒険者に絶対にならないといけないわけじゃない。

 他にも【剣士】に需要がある仕事ならそれに関連した職につくことはできる。
 
 例えば街の憲兵とか、もっと大きく言えば国家騎士とかが挙げられる。

 人生が確定すると言うのはあくまで大まかに【剣士】として、ということなのだ。

「とにかく、一度試してみないことには結果は分からない。そこでアリス、お前に頼みがあるんだ」

「回復要員として付いてきてほしい……って言いたいんでしょ?」

「お、流石はアリス! 話が早くて助かる!」

 根性いう天恵を持つといっても、身体を酷使すればそれなりに反動が来るだろう。
 だろう……っていうのは今まで限界を超えて身体を痛めつけたことがないからだ。

 今回やることは正真正銘、初めての試みになる。

 だからもし何かあった場合、粗方回復系の魔法が使えるアリスがいた方が心強いってわけだ。

「ちなみに、どこの迷宮に行く予定なの?」

「ここから北に行ったところにあるコボルトの巣窟だ。昔は小さな洞窟だったっぽいけど、今は迷宮化していて、父さんはそこがいいだろうって」

 場所はこの辺りから北へ数キロほど離れた山岳地帯。
 そこにコボルトのみが出現する迷宮があるらしい。

 ちなみに父さんがこの迷宮を選んだ理由は単に出現するモンスターがコボルトしかいないから。
 コボルトは他にモンスターと比べて比較的に戦闘能力が低い。

 父さん曰く、現時点の俺の実力でも十分に倒せるとのことで、ここを選んだらしい。

 アリスは「分かったよ」と頷くと、即答でOKサインを出してくれた。

「じゃ、そういうことで。早速明日からでも大丈夫そうか?」

「全然大丈夫! 明日は長くなりそうだから、お弁当作って持っていくね!」

「おう、頼む!」

 こうして。
 俺とアリスの打倒アルゴに向けての特訓が始まったのだった。


 ■ステータスファイル

 名前:アリシア・アルファード
 役職:無職
 種族:人族ヒューマン 
 性別:男
 年齢:15歳
 身分:平民
 総合レベル:5

 天恵
 ○【根性】
 
 恩恵
 ○【経験力】
 
 取得能力なし
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...