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2話 謎の恩恵
しおりを挟む「――おい見ろよ。あいつ」
「――あ、役職なしって言われたやつだろ?」
「――可哀想に……これからどうするつもりなのかね~」
帰り道。
俺は大勢の人の注目を浴びながら、アリスと共に帰途についていた。
もちろん、悪い意味での注目だ。
対してアリスは【大神官】という将来性諸々含めて伸びしろしかない大物。
対応の違いは一目瞭然だった。
「くそっ……! 揃ってみんな俺のことをバカにしやがって……!」
拳を握り、悔しさを滲ませる。
アリスはそんな俺の手をギュッと握りながら、宥めてくれた。
「あんなの気にすることないよ、アリシアくん」
「で、でも……」
悔しい。死ぬほど悔しい。
今だったら勢いだけで自殺すらもできてしまうかもしれない。
だって俺はこの時をずっと待っていたんだ。
それだけにこんな無様な結果になるなんて。
……いや、考えてみればこの結果は必然だったのかもしれない。
俺が抱いていたのはあくまでそんな必然を打ち破るような期待に過ぎなかった。
本来、恩恵というものは天恵と関連のあるものを授かることになっている。
だからこの【経験力】という謎恩恵は俺の天恵に関係のあるものということ。
ちなみにこの恩恵を授かったのは俺が初めてらしい。
それに役職なしの代わりに第二の能力を授かったということも前代未聞の出来事だそう。
「はぁ……俺はこれからどうすればいいんだ」
溜息を吐きながらそういうと、アリスが静かに口を開いた。
「アリシアくんは中等部を卒業したら、どうするつもりなの? 高等部に行くの?」
「今のところは高等部行きかな。どうせ、無職ならそうした方がいいだろうし」
「その【経験力】っていう恩恵は他のことに使えそうにないの?」
「いや、分からない。まだ確認していないからな」
ショックで恩恵内容なんて見る気もなかった。
役職なしという時点でロクでもないだろうなと思っていたからだ。
「なら、確認してみようよ。もしかしたら物凄い恩恵かもしれないよ?」
「……そうだな。見てみるか」
あまり期待はしていないが。
俺は懐にしまっていたステータスボードを取り出す。
ステータスボードというのはその名の通り、自分に持つステータスが全てが分かる携帯型魔道具だ。
現代では略してステボなんて呼ばれている。
生まれた時に一人一台貰え、体内に流れる魔力によって魔道具とリンクしているため、リアルタイムでステータスが反映されるようになっている。
自分の身元証明や連絡手段にも使えるので非常に便利な魔道具だ。
俺はすぐにステータスボードの恩恵欄のところを参照する。
右上には役職欄があるが、そこには『無職』と書かれていた。
恥ずかしいことにデカデカと。
■アリシア・アルファードの恩恵【経験力】
○経験した数だけステータスに反映。
○経験の度合いによっては何倍にもステータスが膨れ上がる。
○経験する事の内容は問わず、経験したものに関する技能並びに才能のパラメーターを上昇させる。
○技能・技術、またはそれに準ずるものを得た場合、新規能力としてステータスに追加される。(能力取得に関する上限はなし)
とまぁ参照すると、こう書かれていた。
「なんだ、これは……」
「要は何かを経験すればするほど、その分だけステータスに反映される……ってことじゃないかな?」
「経験……か」
と言ってもいまいちピンと来ない。
それに俺の天恵とどこに関連性があるのだろうか。
続けて天恵の方も見てみることに。
■アリシア・アルファードの天恵【根性】
○何事も諦めない鋼のメンタルでどんな所業もこなす。ただし、技術を求めるような行為に関しては効果を発揮しない。
○根性発動中は身体への精神的負荷を無効、身体的負荷を大幅に軽減される。
○精神的負荷、身体的負荷を感じた際に自動発動される
と、こんな感じ。
これは何度も見たことがあるから、内容は知っている。
恩恵を手にしたから変化でもするのか、と思ったが、全く変化なしだった。
「全く分からない。どこに関連性があるんだ?」
「う~ん……」
しばらく二人で考えてみるが、中々これといった答えが出てこない。
そんなことをしている内に俺のさっきまで感じていた強い悔しさはどこかに消えていた。
多分これは俺の持つ天恵のおかげ。
【根性】が発動したのだろう。
自分でも立ち直りの速さだけは誇りに思っている。
おかげで今まで鬱になったことが一度もない。
まぁ、俺も人間だからバカにされたら悲しむし、落ち込んだりはするけど。
ある意味、俺の天恵は嫌なことがあった時の為の薬みたいなものなのかもしれないな。
「とにかく、経験をしまくればいいんじゃないかな?」
「経験をしまくる……?」
「そう。説明欄には経験を得ることでステータスが増加するって書いてあったでしょ? それに経験の事柄については問わないってあったから、何かしらすれば結果が出るんじゃないかな?」
「なるほどな。……いや、待てよ。しまくるだって……?」
この時。
俺はふとあることを思った。
俺の持つ天恵と、今日貰った恩恵。
一見、関係がないように見えるが、思うのだ。
俺の持つ根性で誰にもできないような極限の経験をしたら、どうなるんだろう、と。
「お、そこにいるのは無職確定のアリシアくんじゃないか!」
と、その時。
後ろから何者かに声をかけられる。
振り向くと、顔見知りの男を筆頭に複数の男衆が俺を見て嘲笑っていた。
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