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三章 「刻印消し」

29.六星魔道団

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「貴様ら、何者だ」

 ボルのその一声でリーダー格の男は返答する。

「おや、あなた方はお二人のお知り合いか何かで?」
「質問に答えろ。我はそのようなことは聞いていない」

 いつものような高圧的な態度で相手に歯向かう。
 相変わらず初対面の相手でも容赦がないな……

(まぁそういう度胸があるのもボルのいい所であったり悪い所であったりもするんだけど)

「おっと、これはこれは申し訳ない。無駄口を叩きすぎてしまいましたかな?」

 高圧的な態度でも爽やかな笑顔で返答。
 金髪金眼のイケメンであるが故にその笑顔がさらに際立っていた。

「さて、まずは自己紹介といきましょうか。私はザンバード王国直属の特務魔術師団『六星魔道団』という師団を率いるバルターというものです。以後お見知りおきを」
「ザンバード王国……だと?」
 
 ザンバード王国と言えばこの水都ゼヴァンのあるヘルーミナ共和国のすぐ隣国にある貴族国家だ。
 多数の貴族がその地を収め、経済・産業共に著しい発展を遂げている大国家。

(そこの軍隊が何の用なんだ?)

 そのバルターとかいう男は頭を下げると丁寧に事情を語り始める。

「いきなりお邪魔して申し訳ございません。ここにクローレ様がいるとの情報を聞いたものですから」
「クローレだと? 一体どういうことだ?」
「おや? あなた方は彼女がどのような立場の人間か把握していないのですか? 彼女は我がザンバード王国第一王女、クローレ=セナ・ザンバード様でありますよ」
「……なんだと?」

 初めて……というか聞いたことがなかった。
 確かに只者じゃないというオーラだけは感じた。それはメロディアも同じだ。

 だけどまさか王国の跡継ぎだったとは……

「ご、ごめんなさいレギルスさん」
「ん?」
「黙っているつもりはなかったんです。でも……」
「なんかわけありみたいだな。だが今は説明している暇はないみたいだぞ」

 なにせ目の前にはがい白ローブを着た六人の魔術師がいる。第一王女にケガを負わせてまで連れて行こうとする連中だ。
 まず善人であるわけがない。

「とりあえず、今はこいつらの始末だな。やるぞボル」
「初めからそのつもりだ」

 珍しくボルがやる気だ。
 本心からクローレを助けようと思っているのか、刻印に絡むことだから助けるのかは定かではないけど。

 だがメロディアはそんな俺たちの言動を聞くと、

「まさか、お二人とも彼らと戦うおつもりですか?」
「ん、そうだけど?」
「何か問題があるのか女よ」
「いやだって彼らは王国一、いや……中には大陸一強い最強の六人と言われるほどの魔術師たちですよ。A級モンスターも六人でかかればほんの数秒で討伐できるレベルの強さです。普通の魔術師たちとは格が違いすぎます」
「ほー、そりゃ楽しみだ」
「ああ、戦闘種族として大好物だな」

 何言っているんだこの人たちは……みたいなきょとんとした目で見るもメロディアは自分が救われた時のことをふと思い出す。
 そして少し考え込むような動作を取るとメロディアは口を開いた。

「分かりました。レギルスさん、ボルゼベータさん、ここは頼んでもよろしいでしょうか?」
「もちろん。な、ボル」
「問題はない」
「ってことだ。メロディア、お前は奥の部屋でクローレを治療するんだ。見た所、結構ヤバい状態だ。出血も酷い。できるな?」
「だ、大丈夫です!」
「よし、じゃあ早くクローレを連れて行くんだ。ここは任せとけ」
「お、お願いします!」

 メロディアは目の前で倒れるクローレを抱きかかえると一目散に屋敷の奥の方へと走っていった。
 
(よーし、後はこいつらの始末だな)

「お話はおしまいですかからは?」
「ああ、待たせたな白ローブ。ここからは俺たちが相手になるぜ」

 俺とボルは一歩前に出ると臨戦態勢を取り、戦う意思があることを示唆する。
 バルターもそれを見ると残り五人の魔術師を前に出し、杖を構えさせる。

「……本当によろしいんですね?」
「何がだ?」
「このままクローレ様を手渡していただけるのならあなた方に危害を加えずに済むのです。我々も無駄な殺傷は避けたいのでね」
「それはそれはお気遣い感謝だな。だが断る」
「どうしても……ですか?」
「もちろんだ。誰からの命令かは知らんが護衛兵が王女に傷を負わせてまで持ち帰るなんておかしな話だ。そんな輩にクローレを渡すわけにはいかない」

 しかもこのバルターとかいう男は個人的にどうも気に入らなかった。
 常時気持ちの悪いほど笑顔を絶やさない上にイケメン、そして接し方も丁寧ないかにも善人という感じが好かない。

(本当の中身はどろっどろなんだろうけどな、特にこういう裏を見せない奴に限っては)

 よって色々と腹立つからある程度懲らしめることにする。
 本当は捕縛して事情を詳しく聞き出したい所だが面倒ごとになるのもご免なので止めることにした。

「なるほど。では我々はあなた方を計画の障害となるということで殺傷対象にいたしますがよろしいでしょうか?」
「問題ない。戦ってみれば分かるさ」
「貴様らのような雑魚に構っている時間はない。早くかかってこい」

 ボルの挑発で火がついてしまったのかバルターの顔から徐々に爽やかな笑顔が消え去っていく。

「……ちっ、下手に出てみれば調子に乗りやがって。おいお前ら!」

 バルターの号令でもう五人ほど物陰からスッと姿を現す。
 恐らく雇われ冒険者ってやつらだ。
 
 それにしてもあのバルターとかいう男。
 さっきとはまるで別人かのように人柄が変わった。
 先ほどまでの爽やかさから一転、凶暴さが一気に増す。

 恐らくあれが奴の本性ってやつなのだろう。ああ、怖い怖い。

 バルターは他の十人のしもべたちに指示を出すと大声を張り上げ、

「遠慮はいらねぇ! この二人を殺してクローレ様を見つけ出すんだ!」
「「「「「おう!」」」」」

 どうやら準備は万端のようだ。
 俺たちもそれぞれ武器を構える。

「さ、久々の戦闘だ。一応屋敷の中だからそれくらい配慮しろよ?」
「戦闘に関しては徹底的にやらせてもらう。貴様の指示には従わん」
「あっそ、相変わらずの戦闘おバカさんだこと。行くぞ!」
「貴様に言われずとも我だけで全て始末してやる」

 戦闘開始!
 俺たちは低位の強化魔法を自身に付与させると、十人の兵を目掛けて突進していく。
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