9 / 44
一章 「二人の少女」
08.決闘1
しおりを挟む「一騎打ち……ですか?」
「そ、俺から一対一(サシ)の勝負で勝てたなら全てチャラにしてやるよ。ただ……」
次の言葉まで少々の間があく。
ジョセフは余裕そうにニヤリと笑い、さらに続けた。
「もしお前が負けたなら……その時はそこにいる女二人だけじゃ済まねぇかもな」
「一体何をする気で?」
「そりゃあ言えねぇな。そうなってからのお楽しみってことで」
憎たらしいそのアホ面を向け、俺を煽るジョセフ。
ま、企みなんて探らなくても分かる。だって顔になにかやりますって書いてあるのだから。
もちろん聞いたところで答えるわけがないことは承知の上。話が通じるような相手でもない。
だがメロディアたちがいる以上、下手な真似ができないのも事実。
(正直こんな奴ら眼中にないのだがここは……)
奴らのルールに乗っ取って行動することにする。
「どうだ? お前にとっちゃ悪い提案じゃないと思うんだが」
「……ああ、悪い提案じゃない。むしろ願ったり叶ったりだ」
「ふん、やけに自信ありだな。じゃあ提案を受け入れるってことでいいんだな?」
「もちろん、構わないぜ」
俺はその提案を受け入れ、明日にとある場所にて決闘(デュエル)が執り行われることになった。
ルールは一対一の無制限マッチ。武器使用、魔術使用なんでもありという分かりやすい内容だ。
「……じゃあ明日、さっき話した場所に集合だ。時刻は正午、もし遅れたらその時はお前の不戦敗や」
「分かった」
「ふっ、身の程知らずな男だ。せいぜいその後ろにいる女どもと最後の夜を楽しむといいさ。はっはっはっは!」
A級パーティーの長とは思えないほど下品な高笑いを上げる。他のメンバーたちからも所々で笑い声や罵倒するような声が聞こえた。
ジョセフは蔑むような横目で俺たちをチラッと見ると、仲間たちを引き連れその場を去っていった。
「―――身の程知らずはどっちだ、この外道が」
今はその怒りの感情を心中だけに留めておくことにする。
そして明日、俺は彼らから指定された場所に足を運ぶこととなった。
♦
―――冒険者宿『アレスの鉄槌』2階自室
「すまんメロディア、指導の約束があったのにも関わらずこんなことに……」
「謝らないでくださいレギルスさん。それに、私たちがいたばかりにあんなことに……」
「いや、そんなことはない。謝らなければならないのはこっちの方だ。本当にすまない」
「何があったの。あの人たちは一体何者?」
クローレの問いに俺は静かに答える。
「あの冒険者集団は俺が元所属していたパーティーのリーダーとそのメンバーだ。一昨日辞めたばかりだけど」
「なんで辞めちゃったんですか?」
そう聞くのはメロディアだ。
なんでか、と言われても中々答えられるもんじゃない。俺だってプライドはある。
赤の他人にボロクソに言われて平然とできるほど俺は大人ではない。
「まぁ色々あってな」
ただこの一言で理由を片づける。
メロディアもクローレも何かを察したのか二人とも悲しそうな顔で俯く。
その姿を見ると俺はすぐに、
「ま、まぁ俺は気にしていないから大丈夫だ。だからあまり気を遣わないでほしい」
「は、はい……」
微妙な空気になってしまったのでとりあえず弁解。俺なら大丈夫だアピールを二人にしていく。
「レギルスさんは明日のお誘いに行くのですか?」
「ああ、提案を受け入れたからな」
「でも相手はA級冒険者なんでしょ? どう考えてもE級冒険者のあなたには勝ち目なんて……」
「いや、レギルスさんなら大丈夫ですよ」
メロディアはクローレを遮り、真剣な顔でそう言う。
「な、なんでそんなことが言えるのよ。普通に考えたら……」
「私は見たんだクロ。あの日、私たちがトロールに襲われた時に助けてくれた時のレギルスさんの力を。本当に凄かった、回復術師とは思えないほどの俊敏性と攻撃への切り替えの速さだった。正直その辺りにいるA級冒険者以上の実力を持っていると私は思っているわ」
「そ、そんなに……?」
「うん、だからレギルスさんなら大丈夫。私はそう信じる」
メロディアは決して嘘はついていなかった。クローレもその話を聞いて疑うことをしなかったのだ。
俺はそんなメロディアの必死な様子をつい見入ってしまった。
するとメロディアはすぐに俺の視線を感じたようで、
「あ! ご、ごめんなさいレギルスさん。私、凄く偉そうなことを……」
「気にするな、逆に励まされたよ。ありがとうメロディア」
慌て始めるメロディアに微笑みかけながら頭に手を乗せ、優しく撫でると、
「ふぇ!? れ、レギルスさん!?」
変な声が出てしまい、顔を真っ赤に染めるメロディア。
俺はすぐさまメロディアの頭から手を引っ込める。
「あ、すまん。頭を撫でられるのは苦手だったか?」
「い、いえ! ちょっと驚いただけです」
「そ、そうか……」
やばい、つい撫で癖が出てしまった。
ガキの頃はよく小動物を撫でるのが好きで次第にそれは人にも向いていった。聖域に住む後輩賢者見習いの女の子にも何かあればよく頭を撫でていた。
自覚はないがそれが俺にとっての快感……ということで癖になってしまったのかもしれない。
「悪いメロディア、これからは気を付ける」
「べ、別に私は気にしていないのですので……」
少々たどたどしく話すも許してくれた。
ああ、ホントにメロディアが優しい子でよかった。今のご時世、女性の身体に触れただけで役所に出頭しろと言われるくらい物騒だ。
こんな時に追放なんてされたらたまったもんじゃない。
「―――これから気を付けよう……マジで」
脇ではクローレが悔しそうにこちらを見ていたがその理由は分からなかった。
「じゃ、そろそろ寝ようか。どうせボルは帰ってこないだろうし。二人はこっちで寝てくれ、俺は物置部屋で寝るから」
「そ、それはさすがに悪いです!」
「そうよ、ここは本来ならあなたたちの部屋なんだから」
「いや、でも……」
一緒に寝るなんてことはできない。そんなことをしたら一歩間違えれば犯罪者だ。
大の大人が少女二人をサイドに固めて寝るなんてどこの娼婦会館かとツッコミが入るくらい。
だが二人の考えは俺の想像を遥かに超えてきたのだ。
「れ、レギルスさん!」
「な、なんだ?」
「一緒に寝ましょう、というか寝させてください!」
「は、はぁ?」
「わ、私も……覚悟くらいはできているわ」
「はいぃぃぃ?」
まさかの向こうからのお誘いに驚愕。しばらく俺は何も言い返すことができなかった。
俺はそのまま無理やり二人に押し倒され、両肩をホールドされる。
「ではおやすみなさいレギルスさん」
「おやすみ」
「おいおいおい、ちょっと待てぇい!」
―――zzz……
ま、マジかよもう寝てるし……
俺は少女たちと寝床をともにする以前の問題に二人の寝るまでのその速さにただ唖然とするのみだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初日の投稿はここまでになります!
2日目も複数話更新予定です!
0
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~
川嶋マサヒロ
ファンタジー
ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。
かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。
それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。
現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。
引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。
あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。
そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。
イラストは
ジュエルセイバーFREE 様です。
URL:http://www.jewel-s.jp/

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる