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62.すまない
しおりを挟む魔物を倒しつつ、俺たちは進む。
「後方、来るぞ!」
男の指示は的確だった。
ピンポイントに魔物を位置を教えてくれる。
まるで後ろにも目があるような指示だった。
「おっさんすげぇな! 魔物が位置が全部分かっているような感じだ」
「だな。おかげで戦いやすい」
経験がものをいう戦場でこの能力は経験が成せる技と言えよう。
「いいぞ、坊主たち! 新兵にしてはいい動きになってきたな」
「ど、どうも……」
「ありがとうっす!」
いや、俺たちは新兵ではないんだけどな……
「次、南東方面! 5体ほどお出ましだ!」
次の魔物の位置を把握。
すぐさま対処にあたる。
「くそっ、奴らも執念深いな。ここまで追ってくるとは」
「奴らも飢えているんだ。魔物も食糧難だからな」
おかげで尚更狂暴化している。
おっさんの指示がなければ、ここまで動くことは出来なかっただろう。
「よし、後はここを突っ切るだけだ!」
その声に俺たちの足は更に速くなる。
しかしながら、連戦と戦闘による気疲れで思うように足が前にいかない。
とはいえ、ここで足を止めれば確実に死ぬ。
レオスもそれを承知していたか、さっきまでのヘラヘラとした表情がなくなっていた。
「レオス、追い込まれてるな」
「な、なにを言ってる! 俺はまだまだ余裕だぜ!」
「嘘つけ。顔に出てるぞ」
「な、ならそういうお前だって――」
「無駄話はここを抜けてからやれ! 死にたいのか!」
男の怒号が森中に響き渡る。
「「す、すいません!!」」
そうだ。
ここは戦場だ。
無駄口は叩けば叩いた分だけ死に近づく。
調子のいい奴は早死にすると、指導してくれた教官も言っていたっけ。
「あと少しで森を抜ける。もう少しの辛抱だ!」
「「はい!!」」
魔物の動きも徐々に消えていった。
襲っても襲っても返り討ちにされるためか、諦めたのだろうか。
俺たちにとってはこの上ないことだが。
「奴ら、もう襲ってこないみたいだな」
「ま、俺にかかればこんなもんよ!」
「ほぼ全てあのおっさんのおかげだけどな」
彼の指示がなければ、今頃どうなっていたか。
でも、これで遂に脱出できる。
俺たちは生きて帰ってこれたんだ。
今回も生き残って帰れる。
それだけでも戦場で生きる俺たちにとっては最高のご褒美だった。
帰ったら、存分に身体を休めよう。
そう思っていた時だった。
――GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
「な、なんだ?」
激しい咆哮が森中に響き渡る。
瞬間、男が俺たちの方を向くと、
「すまねぇ、坊主たち。どうやら一足遅かったみたいだ」
額に汗を垂らしながら、そう言った。
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