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61.戦闘
しおりを挟む久々の更新となります。お待たせして申し訳ございませんでした。
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暗闇の中、奮闘する三人の戦士。
襲い掛かって来る魔物たちを悉く返り討ちにする。
「けっ、こいつら見た目の割に大したことねぇな!」
「油断するな、レオス。慢心は死を招くぞ」
「分かってる分かってる!」
基本的に狩っているのは俺と謎の男。
レオスは俺たちが弱らせた魔物に銃剣を突き刺すトドメ役になっていた。
最初は顔を強張らせていたレオスも少し慣れてきたのか柔軟な顔つきになっていた。
「でもよぉ、こいつら倒しても倒しても湧いて出てくるぜ? どうするよ?」
「確かに妙だな。これじゃあキリがない」
倒しても倒しても生き返ってくるかのように現れる魔物たち。
そして時間が経過していくと共に周りには死体の山が築き上げられていく。
「ふむ……これは”野生”ではないかもな」
男が剣を振るいながらボソッと呟く。
「”野生”じゃないって……どういうことだよおっさん!」
「”野生”じゃない……なるほど、そういうことか!」
「だからどういうことだよ!」
レオスは皆目見当がつかない様子。
だが俺はその言葉を聞いただけですぐに分かった。
”野生”ではない。
要はこの魔物たちは自然的に現れたのではなく、他の者の意志に基づいて現れたもの。
「……ってことは裏でこいつらを操っている奴がいるってのか?」
「そういうことだ。でなきゃあまりにも不自然過ぎる」
通常、魔物の群れは多くても数十匹の規模。
だが今回はその倍以上。
倒した数を大まかに数えれば50は越えている。
「じゃあ仮にそれが正しかったとして、こいつらを倒しきるにはどうすればいいんだよ?」
「簡単な話だ。その操っている張本人を倒せばいい」
「ちょ、張本人って……」
戸惑うレオス。
でもその反応は間違ってはいない。
簡単な話ではあるが、実際にその主を倒すことは今の状況ではほぼ不可能に近い。
どこに潜伏しているかも分からないし、その上夜の森だ。
視界も昼と比べれば非常に悪い。
逆に向こうからしたらこの上ない環境と言えるだろう。
「くそっ! このままじゃ……」
消費する体力と比例して動きも段々鈍くなってくる。
息も上がり始め、俺も先ほどのようなキレの良い動きを失う。
でも魔物たちの勢いは一向に止まる気配がない。
……と、その時だった。
「おい、坊主たち!」
一人。
俺たちとは違って身体の動きが鈍らない人物がいた。
俺たちの視線はその男の元へと注がれる。
が、男は次の瞬間、とんでもないことを言い出した。
「……逃げろ。今がチャンスだ」
突然の一言にレオスが反応する。
「に、逃げろ? おっさん、それってどういう……」
「言葉通りの意味だ。今なら森中の警備はかなり薄くなっているはず。恐らく他の連中も同じ目に遭っているはずだからな」
「な、なにを……」
レオスはまだ男の言葉の意味を理解できていない様子。
だが、
「ふっ、その表情を見る限りだともう一人の坊主は理解したようだな」
そう言いながら俺の方へと視線を合わせてくる男。
そして同時にレオスもこちらの方を見てくる。
「ぜ、ゼナリオ! どういうことだよ!」
「正気……ですか?」
俺はレオスの言葉を跳ね除け、男へと問う。
すると男はニヤリと笑みを浮かべながら、
「正気も何も嘘で言ったわけじゃない。お前たちにはこの魔物たちを倒すことよりも成し遂げなければならないことがあるんだろう?」
「そ、そうですが……」
男の言いたいことはすぐに分かった。
そもそも俺たちが目指していたのはこの森からの脱出。
そして今、魔物たちの襲来によって敵陣地は大荒れ状態。
男はこの状況を使い、今のうちに逃げろと言っているのだ。
「最短ルートは途中まで俺が教える。どうだ、逃げるのか? それとも律儀にこのまま戦うか?」
「……」
確かに今の状況は俺たち二人にとってはかなり好都合だ。
でも本当にそれでよいのだろうか?
俺たちがいなくなればこの人は操り人を見つけるまで延々と魔物を狩る羽目になる。
短い時間だったとはいえ、この人は敵でありながら俺たちに親切に接してくれた。
(そんな人を盾に使って逃げろだなんて……)
俺の心中に様々な想いが重なり、ごちゃごちゃになる。
冷静な判断力が欠け、その問いにすぐに答えることができなかった。
「どうする坊主! やるのか? やらないのか?」
でも……今俺たちがするべきことはここで魔物たちを狩る事じゃない。
生き延びて明日に繋げる未来を作ることが……一番だ。
「……分かりました。やります!」
悩んだ末の決断。
すると男は『ふっ』と薄笑いをしつつも、
「よし、じゃあ最初に俺が先導する。お前たちは魔物を追い払いつつ俺についてこい!」
「はい!」
「ちょ、ちょっと! 俺抜きで勝手に話を進めないでくれる!?」
……と、いうことで俺たちは森から脱出するべく、男の指示に従うことになった。
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