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34.変な人と紺髪の美女
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前話の最後にも告知した通り、本話から三章の内容となります。
引き続き、当作品をよろしくお願いいたします。
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『俺が……この騎士団を建て直してみせます!』
『ほ、本当に頼んでしまって良いのですか?』
『期待通りの成果を出せるかは分かりませんけど、団長やこの騎士団のためなら頑張ってみようかと思います』
『ゼナリオさん……ありがとうございます!!』
……とまぁ、こんな感じで俺は騎士団再建計画に参加することになったわけだが……
「なんか立て続けにイベントが起こりすぎて情報の整理が追いつかないな……」
この世界に来てから騎士団に入り、入ったかと思いきやいきなり女王陛下の騎士に任命され、団の特務部隊長になって一気に幹部衆の仲間入りに。
そして仕舞いにはこの騎士団を立て直してほしいとまでお願いされた。
何かもうこれ……偶然とかのレベルじゃないよなぁ。
もう何か今までの出来事全てが運命のように思えてくる。
それに……
「騎士団を再建すると言ってもなぁ……一体どこから着手をすればいいのやら」
勢いで言ってしまったのもあってか先のことを考えていなかった。
一応過去に行おうとした計画案やこれから計画をしている新しい案やらの重要書類は粗方貰ったものの、やることが多すぎて何から着手をすればいいのか分からない状況だった。
「とりあえず、費用の方は団長に任せるとして。俺はもう一度団の状況を確認する必要があるな。大まかに改善点を纏める必要もあるし」
再建予算の方は先の話し合いでリーリアが手を回してくれるとのこと。
なので今の俺の仕事は団内の欠陥部分を報告書に纏めるというのが主になる。
と、いうことで俺は今一度団の現状況を把握するべく、午後の鍛錬が行われている演習場へと足を動かしていた。
にしても、リーリアの直感は凄まじいものだ。
確かに俺は生前は軍に所属し、尚且つそれなりの地位にいたから軍の内部事情とか、軍の運営に関する知識を持っていたりもする。
もちろん彼女は俺の過去なんて知っているわけもないし、俺も一切話していない。
でも、彼女はこんな子供の姿をした俺に頭を下げてまで騎士団再建を頼んできた。
流動認知の力は剣聖の素養を持つ異端者のみが保有するのを許された異端能力だ。
でもあそこまでの力を見せつけられたのは初めてだった。
まだ確信はないんだろうけど、あの人の目は……本気だった。
(リーリア・グレースレイド。もしかしたらあの人は……)
「おやおや? 君、見ない顔だね」
……?
背後から聞き覚えのない声が聞こえてくる。
周りを見渡す限り誰もいない。
ということは、俺に声をかけている……?
「もしもーし? 聞こえてますかーー?」
「お、俺のこと……でしょうか?」
後ろを振り向きながらそう返答する。
と、目に入ったのは茶色の短髪に黒い瞳を持つ長身の男の姿だった。
「いや、話しかけるにしても君しかいないじゃん。それもなんだ、見えない誰かに話しかけているとでも思ったのか?」
「そ、そういうわけじゃ……いきなり声をかけられたから少し驚いてしまっただけです」
「だよな! もしそう思われていたとしたらただの変質者だもんな。あぁ~良かった」
はっはっはと笑い飛ばしながらそう言う謎の男。
何だろう……初対面のはずなのにこのフレンドリーな接し方。
しかもこの人誰だ? 今まで城内では一度も顔を会わせたことはないが……
「おいおい、そんなに見つめるなよ。興奮しちまうだろうが」
「は、はぁ?」
何を言っているんだこの人は……フレンドリーの枠を超えて変態と化しているぞ?
(この人……本当に変質者じゃないのか?)
知らない子ども相手にいきなり声をかけてきて、この態度……ハッ、まさかこの人!
「おいおい、そんな変態を見るような目で見ないでくれよ」
「ち、違うんですか?」
「ドアホっ! んなわけあるか! 俺は歴とした女の子好きだ。そっち系の趣味はない!」
声を張り上げ、否定する謎の男。
(わ、分からない。この人のノリが……)
するとその時、
「そんなところで何をしているフク。そっちは団長室の方向じゃないぞ」
「あっ、レン!」
男の視線の先にはもう一人の影。
紺色の髪を一本に縛ったツリ目の美女がこっちに近づいてくる。
「ん? 誰だその子供は。騎士団の制服を着ているようだが……」
「いやね、僕もそれが気になったから声をかけてみたんだよ。そしたらいきなり変態扱いされちゃってさぁ……」
「え、えぇ!?」
いやいや、確実にさっきのはお前から変態認定されにいっていたぞ?
なに勝手に人のせいにしてんだよっ!
と、心では文句を言うが顔には出ないように努力する。
すると紺髪の美女が口を開き、真顔でこう言いだす。
「いや、お前はいつでも変態だろう。一年通してまともな姿を見せる方が少ないお前が今更何を言う?」
「ひ、ひどい……僕だって真面目な時くらいあるよ!」
俺を差し置いて突如として始まる言い争い。
俺はただその光景をポカーンと見つめることしかできなかった。
(一体何なんだよ、この人たちは!)
だがそう思っていた時、突然美女の方が先に言い争いを止めた。
「それよりフクよ、今はそんなことをしている場合じゃないぞ。一日遅れで遠征から帰ってきたことをまだ団長に報告していないだろう。まだお互い報告書すら完成していないというのにどうするつもりだ。最悪、叱責を受けることになるぞ」
「そ、それはいけない! あの人、怒らせたら結構怖いからなぁ……」
「だったら早く行くぞ」
「ほーい。んじゃまたな、黒髪の少年」
男はそう言うと、美女と共に団長室のある方向へと歩き去っていく。
(な、何だったんだろう。今の……)
だが少し気になることも聞けた。
「団長って怒ると怖いんだな……」
新たな発見。あの温厚な団長が怒っているところなんて想像もつかないけど……
それに――
なんかこの騎士団って個性強い人が多くないか?
団長は剣聖の末裔だし、筋肉好きな人がいたり、書類整理がとんでもなく速い人もいたりと色んな意味で超人ばかりだ。
そんな個性溢れる人たちの多い騎士団をこれから俺が纏めていき、立て直そうというのだ。
正直、不安しかない。
だがあそこまで言い切った以上、最後までやり通さなければ意味がない。
国を守るのはもちろん、団長やここにいる全ての人が大好きなこの騎士団を守るため、何が何でも強く、大きくしてみせる。
俺は顔を両手でパンパンと叩き、闘魂を注入する。
「よし、まずは団内視察からだ!」
気合は十分。
俺は気を取り直し、再度決意を脳に刻むと、やるべきことをするべく足を動かすのであった。
引き続き、当作品をよろしくお願いいたします。
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『俺が……この騎士団を建て直してみせます!』
『ほ、本当に頼んでしまって良いのですか?』
『期待通りの成果を出せるかは分かりませんけど、団長やこの騎士団のためなら頑張ってみようかと思います』
『ゼナリオさん……ありがとうございます!!』
……とまぁ、こんな感じで俺は騎士団再建計画に参加することになったわけだが……
「なんか立て続けにイベントが起こりすぎて情報の整理が追いつかないな……」
この世界に来てから騎士団に入り、入ったかと思いきやいきなり女王陛下の騎士に任命され、団の特務部隊長になって一気に幹部衆の仲間入りに。
そして仕舞いにはこの騎士団を立て直してほしいとまでお願いされた。
何かもうこれ……偶然とかのレベルじゃないよなぁ。
もう何か今までの出来事全てが運命のように思えてくる。
それに……
「騎士団を再建すると言ってもなぁ……一体どこから着手をすればいいのやら」
勢いで言ってしまったのもあってか先のことを考えていなかった。
一応過去に行おうとした計画案やこれから計画をしている新しい案やらの重要書類は粗方貰ったものの、やることが多すぎて何から着手をすればいいのか分からない状況だった。
「とりあえず、費用の方は団長に任せるとして。俺はもう一度団の状況を確認する必要があるな。大まかに改善点を纏める必要もあるし」
再建予算の方は先の話し合いでリーリアが手を回してくれるとのこと。
なので今の俺の仕事は団内の欠陥部分を報告書に纏めるというのが主になる。
と、いうことで俺は今一度団の現状況を把握するべく、午後の鍛錬が行われている演習場へと足を動かしていた。
にしても、リーリアの直感は凄まじいものだ。
確かに俺は生前は軍に所属し、尚且つそれなりの地位にいたから軍の内部事情とか、軍の運営に関する知識を持っていたりもする。
もちろん彼女は俺の過去なんて知っているわけもないし、俺も一切話していない。
でも、彼女はこんな子供の姿をした俺に頭を下げてまで騎士団再建を頼んできた。
流動認知の力は剣聖の素養を持つ異端者のみが保有するのを許された異端能力だ。
でもあそこまでの力を見せつけられたのは初めてだった。
まだ確信はないんだろうけど、あの人の目は……本気だった。
(リーリア・グレースレイド。もしかしたらあの人は……)
「おやおや? 君、見ない顔だね」
……?
背後から聞き覚えのない声が聞こえてくる。
周りを見渡す限り誰もいない。
ということは、俺に声をかけている……?
「もしもーし? 聞こえてますかーー?」
「お、俺のこと……でしょうか?」
後ろを振り向きながらそう返答する。
と、目に入ったのは茶色の短髪に黒い瞳を持つ長身の男の姿だった。
「いや、話しかけるにしても君しかいないじゃん。それもなんだ、見えない誰かに話しかけているとでも思ったのか?」
「そ、そういうわけじゃ……いきなり声をかけられたから少し驚いてしまっただけです」
「だよな! もしそう思われていたとしたらただの変質者だもんな。あぁ~良かった」
はっはっはと笑い飛ばしながらそう言う謎の男。
何だろう……初対面のはずなのにこのフレンドリーな接し方。
しかもこの人誰だ? 今まで城内では一度も顔を会わせたことはないが……
「おいおい、そんなに見つめるなよ。興奮しちまうだろうが」
「は、はぁ?」
何を言っているんだこの人は……フレンドリーの枠を超えて変態と化しているぞ?
(この人……本当に変質者じゃないのか?)
知らない子ども相手にいきなり声をかけてきて、この態度……ハッ、まさかこの人!
「おいおい、そんな変態を見るような目で見ないでくれよ」
「ち、違うんですか?」
「ドアホっ! んなわけあるか! 俺は歴とした女の子好きだ。そっち系の趣味はない!」
声を張り上げ、否定する謎の男。
(わ、分からない。この人のノリが……)
するとその時、
「そんなところで何をしているフク。そっちは団長室の方向じゃないぞ」
「あっ、レン!」
男の視線の先にはもう一人の影。
紺色の髪を一本に縛ったツリ目の美女がこっちに近づいてくる。
「ん? 誰だその子供は。騎士団の制服を着ているようだが……」
「いやね、僕もそれが気になったから声をかけてみたんだよ。そしたらいきなり変態扱いされちゃってさぁ……」
「え、えぇ!?」
いやいや、確実にさっきのはお前から変態認定されにいっていたぞ?
なに勝手に人のせいにしてんだよっ!
と、心では文句を言うが顔には出ないように努力する。
すると紺髪の美女が口を開き、真顔でこう言いだす。
「いや、お前はいつでも変態だろう。一年通してまともな姿を見せる方が少ないお前が今更何を言う?」
「ひ、ひどい……僕だって真面目な時くらいあるよ!」
俺を差し置いて突如として始まる言い争い。
俺はただその光景をポカーンと見つめることしかできなかった。
(一体何なんだよ、この人たちは!)
だがそう思っていた時、突然美女の方が先に言い争いを止めた。
「それよりフクよ、今はそんなことをしている場合じゃないぞ。一日遅れで遠征から帰ってきたことをまだ団長に報告していないだろう。まだお互い報告書すら完成していないというのにどうするつもりだ。最悪、叱責を受けることになるぞ」
「そ、それはいけない! あの人、怒らせたら結構怖いからなぁ……」
「だったら早く行くぞ」
「ほーい。んじゃまたな、黒髪の少年」
男はそう言うと、美女と共に団長室のある方向へと歩き去っていく。
(な、何だったんだろう。今の……)
だが少し気になることも聞けた。
「団長って怒ると怖いんだな……」
新たな発見。あの温厚な団長が怒っているところなんて想像もつかないけど……
それに――
なんかこの騎士団って個性強い人が多くないか?
団長は剣聖の末裔だし、筋肉好きな人がいたり、書類整理がとんでもなく速い人もいたりと色んな意味で超人ばかりだ。
そんな個性溢れる人たちの多い騎士団をこれから俺が纏めていき、立て直そうというのだ。
正直、不安しかない。
だがあそこまで言い切った以上、最後までやり通さなければ意味がない。
国を守るのはもちろん、団長やここにいる全ての人が大好きなこの騎士団を守るため、何が何でも強く、大きくしてみせる。
俺は顔を両手でパンパンと叩き、闘魂を注入する。
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