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25.元剣聖と聖剣士
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「け、剣聖の血……ですか?」
「はい。あれからずっと気になっていたんです。まだ幼い身でありながら、あの軽い身のこなしと洗練された剣技。そして、貴方も私と同じように魔力の流れを読む力がある。そう考えたらもしかするとって思ったんです」
剣聖の血というか生前は剣聖やってたんだよな……
でも、俺も俺でリーリアに対して似たような疑問を持っていたことは否定できない。
流動認知も、見た目からは想像もできない豪快な剣術も。そしてこの世界で初めて見た聖剣の存在も。
剣聖である特徴を持っている彼女はやはり俺にとって不可解な存在であった。
でも……
「い、いや俺は別にそういうわけじゃないです。たまたまですよ」
本当のことを言うべきか迷ったが、今はまだその時ではないと判断する。
まだ会って間もない彼女に本当のことを伝えた所で信じてもらえるか不安だったからだ。
それに、彼女はさっき『剣聖の血を引いているか』と俺に尋ねてきた。
それはつまりリーリアは……
「あの、団長。その剣聖の血ってどういうことですか? 団長って一体……」
逆に質問を質問で返してみる。
だが彼女は何とも言えない表情を浮かべながら、じっと黙り込んでしまった。
(あ、やばい。もしかしてマズいことを言ってしまったか?)
俺は慌てて、
「い、いや言えないことであれば無理にとは……」
「いえ、お話します。いずれは言わなければなと思っていたことなので」
リーリアの目の色が変わり、表情が強張る。
そして桃色の口紅で彩られたその口をそっと開いた。
「この世界にはかつて、同じ人間でありながら人道を越えた力を持つ10人の剣使いがいました。人々はその者たちを神によって選別されし信託者として剣聖と呼ぶようになりました。私の先祖はその剣聖の一人であるということらしいのです」
「ということは団長はその剣聖の末裔ってことになりますね」
「そういうことになります。魔力の流れを読み取る力も先祖代々から生まれつきあるもので、剣技に関しては父上に教わりました。グレースレイド家は他国も一目置くくらい力と伝統を持った生粋の騎士家系でしたから」
なるほど。先祖が剣聖である故の運命ってやつか。
それに、彼女が聖剣を扱えるのにもこれに大きく関係しているっぽいな。
でも……
(なんか引っかかるな……)
あのリーリアが所有している聖剣、確かアレキサンダーだったか?
どこかで見たことがあるような気がするんだよな……
「だんちょーーーーー!」
話し途中。息を切らしながらも、走って来る一人の男が見えた。
あれは……ベールか?
何やらすごい慌てているみたいだが……
「はぁ、はぁ……やっと見つけましたよ団長」
「ベールくん? どうしたのそんな慌てて……」
ベールは額から流れる汗を拭うと、
「どうしたの? じゃないですよ団長! 明日までに政務省へ提出予定の活動報告書の刻印は終わったんですか? 数日前から自分に提出するよう言ってあったはずですが……」
そうベールが早口で説明をすると、リーリアは思わず『あっ』という無機質な声を出す。
そしてベールから目をそらすと、顔に焦りの如く大量の冷や汗が流れ出る。
「まさか団長……まだ何も出来ていないなんておっしゃりはしませんよね?」
「え、えーっと……ご、ごめんなさい!!」
リーリアは慌てて席から立ち上がり、謝罪を敢行する。
「も、もう何してるんですか! 提出期限明日の午前ですよ!?」
「ご、ごめんなさい。てっきり一週間後だと思ってて……」
「手伝いますから早く団長室に行って片付けちゃいましょう。今からやれば間に合うはずです」
「あ、ありがとうベールくん」
そしてリーリアの視線は流れるように俺の方へ。
「すみませんゼナリオさん。急用ができたので行きますね」
「は、はい。くれぐれもお体にお気をつけて……」
「では、失礼します。ベールくん、行きましょう!」
と、リーリアはベールを連れて速足で去っていく。
それを遠目でじっと見ていると少しフッと笑ってしまった。
(団長ってマジメそうに見えて結構抜けてるとこあるんだな……)
巨人との闘いといい、今の出来事といい、普段の時とのギャップが凄い。
(ま、生真面目すぎるってのもあまり良くないけどね)
一息つき、ふと空を見上げると満天の星空が俺の目を保養する。
「すごいな。星ってこんなにあるんだな」
夕方ごろに見た時とはまた違って見えて新鮮さが増す。
前は星空なんて見る暇なんかなかったし、余裕もなかった。
生きるか死ぬかの瀬戸際を彷徨い、ただがむしゃらに剣を振るう事しか記憶に残っていない。
と、思うと今こうして普通に普通の生活をしていることが夢みたいに思えてくる。
「この肌寒さがなければ文句なしだったんだがな……」
時間が経つにつれ、寒さは少しずつ増していく。
この軍服、見た目の割に結構生地が薄いのでその寒さが直に肌へと伝わってくるのだ。
「さてと……」
俺はゆっくりと腰を上げ、臀部についた埃をパッパと払う。
明日から早速、側近騎士としての活動が始まる。
さすがにいきなり寝坊して……なんてことは許されない。
「……眠くなってきたし、そろそろ戻るか」
ググっと伸びをし、大きく欠伸をすると、俺は目を擦りながら部屋へと戻った。
「はい。あれからずっと気になっていたんです。まだ幼い身でありながら、あの軽い身のこなしと洗練された剣技。そして、貴方も私と同じように魔力の流れを読む力がある。そう考えたらもしかするとって思ったんです」
剣聖の血というか生前は剣聖やってたんだよな……
でも、俺も俺でリーリアに対して似たような疑問を持っていたことは否定できない。
流動認知も、見た目からは想像もできない豪快な剣術も。そしてこの世界で初めて見た聖剣の存在も。
剣聖である特徴を持っている彼女はやはり俺にとって不可解な存在であった。
でも……
「い、いや俺は別にそういうわけじゃないです。たまたまですよ」
本当のことを言うべきか迷ったが、今はまだその時ではないと判断する。
まだ会って間もない彼女に本当のことを伝えた所で信じてもらえるか不安だったからだ。
それに、彼女はさっき『剣聖の血を引いているか』と俺に尋ねてきた。
それはつまりリーリアは……
「あの、団長。その剣聖の血ってどういうことですか? 団長って一体……」
逆に質問を質問で返してみる。
だが彼女は何とも言えない表情を浮かべながら、じっと黙り込んでしまった。
(あ、やばい。もしかしてマズいことを言ってしまったか?)
俺は慌てて、
「い、いや言えないことであれば無理にとは……」
「いえ、お話します。いずれは言わなければなと思っていたことなので」
リーリアの目の色が変わり、表情が強張る。
そして桃色の口紅で彩られたその口をそっと開いた。
「この世界にはかつて、同じ人間でありながら人道を越えた力を持つ10人の剣使いがいました。人々はその者たちを神によって選別されし信託者として剣聖と呼ぶようになりました。私の先祖はその剣聖の一人であるということらしいのです」
「ということは団長はその剣聖の末裔ってことになりますね」
「そういうことになります。魔力の流れを読み取る力も先祖代々から生まれつきあるもので、剣技に関しては父上に教わりました。グレースレイド家は他国も一目置くくらい力と伝統を持った生粋の騎士家系でしたから」
なるほど。先祖が剣聖である故の運命ってやつか。
それに、彼女が聖剣を扱えるのにもこれに大きく関係しているっぽいな。
でも……
(なんか引っかかるな……)
あのリーリアが所有している聖剣、確かアレキサンダーだったか?
どこかで見たことがあるような気がするんだよな……
「だんちょーーーーー!」
話し途中。息を切らしながらも、走って来る一人の男が見えた。
あれは……ベールか?
何やらすごい慌てているみたいだが……
「はぁ、はぁ……やっと見つけましたよ団長」
「ベールくん? どうしたのそんな慌てて……」
ベールは額から流れる汗を拭うと、
「どうしたの? じゃないですよ団長! 明日までに政務省へ提出予定の活動報告書の刻印は終わったんですか? 数日前から自分に提出するよう言ってあったはずですが……」
そうベールが早口で説明をすると、リーリアは思わず『あっ』という無機質な声を出す。
そしてベールから目をそらすと、顔に焦りの如く大量の冷や汗が流れ出る。
「まさか団長……まだ何も出来ていないなんておっしゃりはしませんよね?」
「え、えーっと……ご、ごめんなさい!!」
リーリアは慌てて席から立ち上がり、謝罪を敢行する。
「も、もう何してるんですか! 提出期限明日の午前ですよ!?」
「ご、ごめんなさい。てっきり一週間後だと思ってて……」
「手伝いますから早く団長室に行って片付けちゃいましょう。今からやれば間に合うはずです」
「あ、ありがとうベールくん」
そしてリーリアの視線は流れるように俺の方へ。
「すみませんゼナリオさん。急用ができたので行きますね」
「は、はい。くれぐれもお体にお気をつけて……」
「では、失礼します。ベールくん、行きましょう!」
と、リーリアはベールを連れて速足で去っていく。
それを遠目でじっと見ていると少しフッと笑ってしまった。
(団長ってマジメそうに見えて結構抜けてるとこあるんだな……)
巨人との闘いといい、今の出来事といい、普段の時とのギャップが凄い。
(ま、生真面目すぎるってのもあまり良くないけどね)
一息つき、ふと空を見上げると満天の星空が俺の目を保養する。
「すごいな。星ってこんなにあるんだな」
夕方ごろに見た時とはまた違って見えて新鮮さが増す。
前は星空なんて見る暇なんかなかったし、余裕もなかった。
生きるか死ぬかの瀬戸際を彷徨い、ただがむしゃらに剣を振るう事しか記憶に残っていない。
と、思うと今こうして普通に普通の生活をしていることが夢みたいに思えてくる。
「この肌寒さがなければ文句なしだったんだがな……」
時間が経つにつれ、寒さは少しずつ増していく。
この軍服、見た目の割に結構生地が薄いのでその寒さが直に肌へと伝わってくるのだ。
「さてと……」
俺はゆっくりと腰を上げ、臀部についた埃をパッパと払う。
明日から早速、側近騎士としての活動が始まる。
さすがにいきなり寝坊して……なんてことは許されない。
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