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しりうす。

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新たなステージへ!

Sakura's Stage Two

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 柱から柱へと移動し、騎士(笑)に向かって矢を放つ。騎士(笑)はしっかりと反応してから完璧に躱し、サクラが移動したのに一泊遅れてサクラが隠れていた柱に攻撃。サクラがそこにいれば柱を貫通して反対側の柱にぶつかって止まっていただろう。そう思われるほどに柱にひびが入っていた。しかし、その数秒後には元通りになっている為、柱が無くなることはない。
 サクラは一本ずつ打っていく。連射間隔は一秒にも満たない早打ちだ。通常は一回打ったら次の矢を番えないといけないため連射は不可能だ。だが、これを可能にしているのが【弓神】という職業。この職業の武技に、【自動装填】というものがあり、インベントリの中に矢が入っていると自動的に番えてくれるというものだ。始めは自分でやる必要があるが。そして、それだけでなく【複射】という武技によって一度に何本もの矢を放つことができるようになっているのだ。
 騎士(笑)はサクラから攻撃されるまで攻撃どころか動きもしない。一応目で動きは追っているようだが行動には出ない。
 サクラは部屋の中を走り回り騎士(笑)の死角に入ったところで攻撃。騎士(笑)が躱す。を繰り返していた。そして、それが数十と行われた時、遂に騎士(笑)が戦闘開始から一度も発していなかった声(音声?)を発した。

「対象の行動解析完了。これより防衛及び解析を終了し攻撃に移行します。演算機能及び解析・観測機能展開。操縦を戦闘用アルゴリズムに移行し防衛用アルゴリズムを休止します」

 無機質な声で語られたのは今までは態と攻撃を受けていた宣言。そして、これからは潰しに行くよ宣言。さらにお前の行動なんて全て読み切った宣言。これが意味する事即ち。

「・・・ぐっ!」

 今まで一撃も貰うことなく一方的に攻撃していたサクラに、騎士(笑)による重い一撃が入った。武器は、拳。さらに空中に跳んだ瞬間攻撃されたため、衝撃を逃がすこともできずサクラは簡単に壁まで吹き飛びそこに大きなクレーターを作った。
 視界に映る自分のHPバーが、勢いよく減少していく。騎士(笑)は壁に張り付いたままになっているサクラのもとへ駆け出すと、腰に付けた刀の柄を持ち、一閃。サクラの腹に一文字の赤い線が入った。痛覚情報を弄っていないサクラは、本当に斬られたような痛みを受ける。

「ぅ・・・あ・・・」

 視界がぼやけ、はっきりと周囲を確認できない。そんなサクラに騎士(笑)による追撃。全身を切り刻まれ体の至る所に赤い線が幾重にも重なっていく。
 HPバーは既にレッドゾーンをさし、後二、三撃ほどで尽きるであろう。サクラの目からは雫が滴り、ぎしぎしと歯ぎしりの音がサクラの脳内に木魂する。
 しかし、そんな絶望的状況の中でもサクラは諦めなかった。そもそも、サクラの中では攻撃を受けることは予想外だが、勝つことは必然だという考えで埋まっている。自分が負ける可能性など絶無。
 そして、遂に、サクラは攻撃を受けてから開かずにいた口を、開いた。

「・・・騎士(笑)。・・・私、の、勝ち・・・だから。・・・おとなしく・・・たお、れて?」
「失笑。状況的判断により対象の勝率、皆無。推定HP量も既に予測を大幅に上回っている。ありえない。故にまもなく対象のHPは尽きる。対象は───試練及び試験に敗れ死亡する」
「・・・やっぱり・・・(笑)、付けて・・・正解、だった」
 
 サクラは騎士(笑)を睨みつけると、一言。

「・・・───【全回復オールヒール】」

 HPを全回復させ、戦闘をさらに続けると言う意思表示に、騎士(笑)は初めてその顔に驚愕の色を見せた。

「無意味。勝敗は既に決している。HPを回復させようとそれは覆らない。対象の能力は把握済み。いくら足掻いても無駄。抵抗せずに倒されることを推奨する」
「・・・だれ、が・・・───今まで、が・・・全力って、言った?」

 騎士(笑)の中に入っているのであろうコンピュータは、サクラの敗北は既に決まり、何があっても覆ることはない、と断定したようだが。それは違う。だって───

 サクラはまだ、自己強化魔法を使っていない上に、本気の連射も、複射もしてないのだから。

「・・・───【雷光サンダーレイ】【疾風はやて】」

 【風属性中級魔法・雷光】。雷のような俊敏さを術者に与える魔法だ。通常この魔法を使うのが鈍足の職ばかりの為、効果値は他の魔法と比べて大きい。
 さらに武技【疾風】。こちらも俊敏さを上げる武技だ。
 元から俊敏が高いサクラに、二つの俊敏上げのバフがつく。それはつまり、今までよりも格段に速くなり目に負えないということで。

「・・・【属性追加・炎ファイアエンチャント】」

 攻撃に炎の力を宿す[烈火の弓]専用武技、【属性追加・炎】。これによって当たるだけで火傷の継続ダメージが入る(火傷は確率)。

「・・・これでも勝てる、なら・・・やって、みて♪」

 少し楽しそうに、サクラは柱と柱の間を先ほどまでのように奔り始めた。それは、騎士(笑)の目で追うことはできず、さらに躱すことも困難になり、さらにさらに連続で複数の矢が飛んでくることにより騎士(笑)が躱すことは不可能。つい数秒前までの仕返しをするかのように、サクラは一方的に騎士(笑)を攻撃し続けた。

 それから数分後、サクラの視界には『試練突破』の文字が浮かんでいた。
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