109 / 118
新たなステージへ!
Sakura's Stage One
しおりを挟む
キラ達と別れ、一人で神殿内へと足を踏み入れたサクラは、【烈火の弓】を強く握りしめる。神殿内は真っ暗ということはなく、不気味に壁が発光しておりうっすらとだが周りを見ることができた。
神殿は入り口から今まで一本道で、魔物は一体も出てこない。物音一つせず、聞こえるのは自分の呼吸によってできた風の音と、バクバクと激しく脈打つ心臓の音のみ。
と、少し怖くなってきたサクラは、目の前に一枚の扉があることに気が付いた。距離にして約三メートルほどだろうか。それに向かってサクラは駆けた。しかし、数秒程走ってみても扉との距離は変わらず目と鼻の先にある。
「・・・おかしい」
今度は慎重に扉へと近づく。今回はしっかりと辿り着いた。
「・・・?」
仕掛けの意味がよくわからず、困惑する。でも今は外でキラ達を待たせているので考え込まず、ゆっくりと扉を開けた。
「・・・ここ、は・・・───ッ!」
扉の向こうは、扉の外と同じく薄暗く、全貌はわからない。サクラは慎重に警戒しつつ部屋の中へと踏み入っていく。瞬間。扉が勢い良く閉まりどこからか矢が射られた。それを咄嗟の判断で転がることで回避し、壁に背をつけて周囲を凝視する。
すると次の瞬間には壁沿いに何らかのオブジェクトが出現し、その上に炎を灯した。真っ赤に燃えるその炎のお陰で全てがはっきりと視認できる程に明るくなった。
サクラがいるところは一辺が数十メートルの正方形の部屋で、基本的に緑を基調とした配色。入ってきた扉の反対側には同じような扉があった。帰還用だろうか。入ってきた扉はもう開かないことは確認済みだ。
扉がない壁には太い柱が等間隔で建てられており、隠れるとしたら最適だろう。そう判断したサクラは最高速で柱に接近し、隠れた。何故なら・・・
「目標、確認。敵、森霊族。最善戦闘手段を模索します。・・・模索終了。武装特性取得。[種類、魔法無効][攻撃範囲、最短][魔法、使用可能][最終武装、接近戦闘][使用可能武技、近接戦闘系職武技全て]。戦闘準備完了。種族転生適正試練兼試験、開始します」
部屋の中心に一人の女性がいたからだ。
美しい顔をした背丈の高い女性は、無機質な声でそう言うと、ポリゴンに包まれた。かと思うとすぐにポリゴンが霧散しなくなった。果たして、そこにいたのは先ほどの女性ではなかった。いや、声質は同じように感じるのでただ形が変わっただけかもしれない。
背丈は先ほどよりも小さくなり、手には背丈に丁度いいサイズの刀。左手には小さなバックラーが装備され、武具もフルプレートで威圧感がある。しかし重いということはなさそうで行動に支障はないのだろう。
その騎士と呼ぶには不格好だがそれ以外に言い表すことが難しい見た目をしたそいつを、これからは騎士(笑)と呼ぶことにしたサクラ。名前だけで伝わってくる馬鹿にしている感。
それを感じ取ったわけではないだろうが騎士(笑)はサクラが隠れている柱に向かって攻撃してきた。瞬時に柱から飛び出し隣の柱へと身を移す。と同時に騎士(笑)に【無詠唱】を使った魔法を放つ。
「・・・───【炎滅】」
サクラの手の内にある【烈火の弓】を媒体として魔法を発動させる。これはブルーとレッドが造りだした魔法剣の弓バージョンだ。
杖を使わない障害故に威力が少し落ちたにもかかわらず、見るものすべてを虜にするような綺麗な彩色で騎士(笑)へと向かう炎球だが、騎士(笑)に当たる寸前で弾けとんだ。
「進言。私に魔法は効かない。無意味」
「・・・そう」
サクラの武器の一つである魔法が封じられ、サクラは歯噛みする。・・・訳がない。
サクラの武器の一つが魔法。それは何一つ違っていないが、魔法が封じられた。ただそれだけの事で誰が歯噛みなどするか。サクラはキラと何度も戦っている。キラが相手なのだ。魔法など効くわけがない。それが今更になって魔法が聞かない相手と戦え?キラよりステータスが低いのならばはっきり言って楽勝である。・・・それだけならば。
「・・・」
サクラが無言で弓に矢を番え神速のスピードで放つ。しかしそれを騎士(笑)はしっかりと視認して回避する。そして回避行動中にさらに矢を放てばバックラーで防がれいつの間にか抜いていた刀で真っ二つに切られる。
そう、これが厄介なのだ。流石のキラでもここまで完璧に避けることなどできない。精々が危機一髪で回避しているような感じなのだ。しかしこいつはそうはいかない。しっかりと視認しているし回避行動も完璧。
圧倒的に自分が不利な状況に、サクラは決して人前では見せないような、獰猛な捕食者を思わせる深い笑みを浮かべた。キラより厄介なのが相手なだけ。ただそれだけなのだ。ならば、どうどうにでもなる。幸い、魔法が効かないのは騎士(笑)を相手とした攻撃魔法のみなので、いくらでもやりようはある。
この勝負、私の勝ち。そう思いながらサクラは間髪入れず矢を放ち続けた。その油断が、後に大きな失態となることも考えずに。
神殿は入り口から今まで一本道で、魔物は一体も出てこない。物音一つせず、聞こえるのは自分の呼吸によってできた風の音と、バクバクと激しく脈打つ心臓の音のみ。
と、少し怖くなってきたサクラは、目の前に一枚の扉があることに気が付いた。距離にして約三メートルほどだろうか。それに向かってサクラは駆けた。しかし、数秒程走ってみても扉との距離は変わらず目と鼻の先にある。
「・・・おかしい」
今度は慎重に扉へと近づく。今回はしっかりと辿り着いた。
「・・・?」
仕掛けの意味がよくわからず、困惑する。でも今は外でキラ達を待たせているので考え込まず、ゆっくりと扉を開けた。
「・・・ここ、は・・・───ッ!」
扉の向こうは、扉の外と同じく薄暗く、全貌はわからない。サクラは慎重に警戒しつつ部屋の中へと踏み入っていく。瞬間。扉が勢い良く閉まりどこからか矢が射られた。それを咄嗟の判断で転がることで回避し、壁に背をつけて周囲を凝視する。
すると次の瞬間には壁沿いに何らかのオブジェクトが出現し、その上に炎を灯した。真っ赤に燃えるその炎のお陰で全てがはっきりと視認できる程に明るくなった。
サクラがいるところは一辺が数十メートルの正方形の部屋で、基本的に緑を基調とした配色。入ってきた扉の反対側には同じような扉があった。帰還用だろうか。入ってきた扉はもう開かないことは確認済みだ。
扉がない壁には太い柱が等間隔で建てられており、隠れるとしたら最適だろう。そう判断したサクラは最高速で柱に接近し、隠れた。何故なら・・・
「目標、確認。敵、森霊族。最善戦闘手段を模索します。・・・模索終了。武装特性取得。[種類、魔法無効][攻撃範囲、最短][魔法、使用可能][最終武装、接近戦闘][使用可能武技、近接戦闘系職武技全て]。戦闘準備完了。種族転生適正試練兼試験、開始します」
部屋の中心に一人の女性がいたからだ。
美しい顔をした背丈の高い女性は、無機質な声でそう言うと、ポリゴンに包まれた。かと思うとすぐにポリゴンが霧散しなくなった。果たして、そこにいたのは先ほどの女性ではなかった。いや、声質は同じように感じるのでただ形が変わっただけかもしれない。
背丈は先ほどよりも小さくなり、手には背丈に丁度いいサイズの刀。左手には小さなバックラーが装備され、武具もフルプレートで威圧感がある。しかし重いということはなさそうで行動に支障はないのだろう。
その騎士と呼ぶには不格好だがそれ以外に言い表すことが難しい見た目をしたそいつを、これからは騎士(笑)と呼ぶことにしたサクラ。名前だけで伝わってくる馬鹿にしている感。
それを感じ取ったわけではないだろうが騎士(笑)はサクラが隠れている柱に向かって攻撃してきた。瞬時に柱から飛び出し隣の柱へと身を移す。と同時に騎士(笑)に【無詠唱】を使った魔法を放つ。
「・・・───【炎滅】」
サクラの手の内にある【烈火の弓】を媒体として魔法を発動させる。これはブルーとレッドが造りだした魔法剣の弓バージョンだ。
杖を使わない障害故に威力が少し落ちたにもかかわらず、見るものすべてを虜にするような綺麗な彩色で騎士(笑)へと向かう炎球だが、騎士(笑)に当たる寸前で弾けとんだ。
「進言。私に魔法は効かない。無意味」
「・・・そう」
サクラの武器の一つである魔法が封じられ、サクラは歯噛みする。・・・訳がない。
サクラの武器の一つが魔法。それは何一つ違っていないが、魔法が封じられた。ただそれだけの事で誰が歯噛みなどするか。サクラはキラと何度も戦っている。キラが相手なのだ。魔法など効くわけがない。それが今更になって魔法が聞かない相手と戦え?キラよりステータスが低いのならばはっきり言って楽勝である。・・・それだけならば。
「・・・」
サクラが無言で弓に矢を番え神速のスピードで放つ。しかしそれを騎士(笑)はしっかりと視認して回避する。そして回避行動中にさらに矢を放てばバックラーで防がれいつの間にか抜いていた刀で真っ二つに切られる。
そう、これが厄介なのだ。流石のキラでもここまで完璧に避けることなどできない。精々が危機一髪で回避しているような感じなのだ。しかしこいつはそうはいかない。しっかりと視認しているし回避行動も完璧。
圧倒的に自分が不利な状況に、サクラは決して人前では見せないような、獰猛な捕食者を思わせる深い笑みを浮かべた。キラより厄介なのが相手なだけ。ただそれだけなのだ。ならば、どうどうにでもなる。幸い、魔法が効かないのは騎士(笑)を相手とした攻撃魔法のみなので、いくらでもやりようはある。
この勝負、私の勝ち。そう思いながらサクラは間髪入れず矢を放ち続けた。その油断が、後に大きな失態となることも考えずに。
11
お気に入りに追加
1,213
あなたにおすすめの小説
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる