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後ろ髪
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エール、お気に入り登録ありがとうございます!きついお話が続きますが、その分ハッピーにもしたい…。レオもクレイグの事言えないんだよなぁ…という話です。
靴を、探しに行こう…
レオはそう考えていた。
ザイラが屋敷へ歩き出してすぐ、後ろ髪引かれながらもどうしても見つけたいものがあった。
ザイラが失くした、という靴。
もしくは帽子。婦人にとってはそういうものは大事だと聞くし…何より扉の前に靴と帽子が返ってきていたら、また驚きに顔を赤くしたりするのだろうか…と思ったからだ。
誕生日の事を思い出して、またあの嬉しそうな顔を浮かべて欲しいと思った。
フェルゲイン卿が愛人にかかり切り、その話は耳に入っていた。
足はなぜかフェルゲイン卿の屋敷に伸びてしまう。
収穫祭は家族で過ごす大切な行事…
もし…一目…
そんな少年のような…
馬鹿らしいことこの上ない。
楽しく過ごせていれば、それで良かったのに
昨晩見かけた彼女は、屋敷の窓からぼんやりと1人外を見ていた。
舞踏会の日は立場の無い妻ながら夫を庇い毅然とした対応をしていた。
と思えば少年の格好でウロチョロと裏路地を徘徊し、抱き上げればまるで年頃の少女のように顔を真っ赤にしてまともに口も聞けない。
愛くるしい、と思ってしまったことをレオはずっと後悔していた。
『俺が留守の間チョロチョロしてるらしいな』
フィデリオの声がレオの頭の中に響く。
降り頻る雨の中、見間違いかと思う程彼女は誰かれ構わず手を繋いで踊っていた。
とても楽しそうに見えた。
そのままにしておこう
昨日の姿からは考えられない。
正直安堵した。
それなのに、次の瞬間には顔を歪めて唇を噛み締めている。
本当は声を上げて泣き叫びたい、そんな思いさえ抑えて。
彼女に手を差し出すのは許されない。
相手は厄介にしか縁がない人妻だ。
相手にされない人妻程、籠絡しやすい相手は居ないが…
今回ばかりは余計な煩いを増やすと、レオにも分かっていた。
『まさか本気じゃないんだろう?』
忠告を、聞くべきだ。
当然だ。
命令に近い。
何をしてるんだか…
レオは自身のやってる事に呆れて苦笑いを溢す。
その手には、案外簡単に見つかった靴を大切に握りしめている。
濡れてはいたが綺麗な状態だったのは幸いだ。
帽子は見つからなかったが、靴だけでもせめて届けよう、レオはフェルゲインの屋敷へ戻る。
その道すがら、見慣れた小箱とブーケが落ちていた。
そして、その先には夫人が持っていた小さな鞄…
レオの頭は一瞬真っ白になった。
あんなに大切そうに眺めていた小箱は見るも無惨に踏み潰され、跡形もない。
体中の血の気が失せ、冷や汗が吹き出した。
なぜ屋敷に着くまで見送らなかった?
持っていた靴がレオの手から滑り落ちる。
何が起きたか理解した。
体中の血管がはち切れそうな程の後悔、焦り、怒り…一気に押し寄せる感情を抑えながら、必死に呼吸を整える。
ブーケを握りつぶさないようにするのは至難の業だった。
靴を、探しに行こう…
レオはそう考えていた。
ザイラが屋敷へ歩き出してすぐ、後ろ髪引かれながらもどうしても見つけたいものがあった。
ザイラが失くした、という靴。
もしくは帽子。婦人にとってはそういうものは大事だと聞くし…何より扉の前に靴と帽子が返ってきていたら、また驚きに顔を赤くしたりするのだろうか…と思ったからだ。
誕生日の事を思い出して、またあの嬉しそうな顔を浮かべて欲しいと思った。
フェルゲイン卿が愛人にかかり切り、その話は耳に入っていた。
足はなぜかフェルゲイン卿の屋敷に伸びてしまう。
収穫祭は家族で過ごす大切な行事…
もし…一目…
そんな少年のような…
馬鹿らしいことこの上ない。
楽しく過ごせていれば、それで良かったのに
昨晩見かけた彼女は、屋敷の窓からぼんやりと1人外を見ていた。
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と思えば少年の格好でウロチョロと裏路地を徘徊し、抱き上げればまるで年頃の少女のように顔を真っ赤にしてまともに口も聞けない。
愛くるしい、と思ってしまったことをレオはずっと後悔していた。
『俺が留守の間チョロチョロしてるらしいな』
フィデリオの声がレオの頭の中に響く。
降り頻る雨の中、見間違いかと思う程彼女は誰かれ構わず手を繋いで踊っていた。
とても楽しそうに見えた。
そのままにしておこう
昨日の姿からは考えられない。
正直安堵した。
それなのに、次の瞬間には顔を歪めて唇を噛み締めている。
本当は声を上げて泣き叫びたい、そんな思いさえ抑えて。
彼女に手を差し出すのは許されない。
相手は厄介にしか縁がない人妻だ。
相手にされない人妻程、籠絡しやすい相手は居ないが…
今回ばかりは余計な煩いを増やすと、レオにも分かっていた。
『まさか本気じゃないんだろう?』
忠告を、聞くべきだ。
当然だ。
命令に近い。
何をしてるんだか…
レオは自身のやってる事に呆れて苦笑いを溢す。
その手には、案外簡単に見つかった靴を大切に握りしめている。
濡れてはいたが綺麗な状態だったのは幸いだ。
帽子は見つからなかったが、靴だけでもせめて届けよう、レオはフェルゲインの屋敷へ戻る。
その道すがら、見慣れた小箱とブーケが落ちていた。
そして、その先には夫人が持っていた小さな鞄…
レオの頭は一瞬真っ白になった。
あんなに大切そうに眺めていた小箱は見るも無惨に踏み潰され、跡形もない。
体中の血の気が失せ、冷や汗が吹き出した。
なぜ屋敷に着くまで見送らなかった?
持っていた靴がレオの手から滑り落ちる。
何が起きたか理解した。
体中の血管がはち切れそうな程の後悔、焦り、怒り…一気に押し寄せる感情を抑えながら、必死に呼吸を整える。
ブーケを握りつぶさないようにするのは至難の業だった。
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