四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

文字の大きさ
上 下
118 / 124

118 部下を強化しよう! 

しおりを挟む
 次に強化するのは、他の戦闘メンバーだ。
 まずは、ボーギルとアルファを呼び出す。

「なぁ、ボーギル、お前あの居合斬りみたいなヤツ、アルファにも教えられないか?」

 そうなのだ。アルファのヤツって、素手でぶん殴る、というとっても単純明快な攻撃方法なのだ。
 武器が使えた方が戦力増強になると思うんだよな。

「う~ん、そうだな……アルファ、お前、剣術とか習った事あるのか?」

「……ねぇよ。剣なんてバカ高ぇモン、スラム育ちが扱える訳ねーだろ」

 ちなみに、スラムで子供が立派な剣など持って居ようものなら、衛兵からは警戒されるわ、大人からは絡まれるわ……ロクなことにならないらしい。
 アルファの恩人の冒険者さんも拳士だったみたいだし……武器に触れる機会はあまり無かったようだ。

「……死芽切シメキリ黄泉切ヨミキリ宇智切ウチキリは、三連撃で一つの技だからなぁ……」
 
 へー? そうなの?

 ボーギル曰く、実はこの技は『死芽切シメキリ』で攻撃と同時に自身の素早さを上げ、『黄泉切ヨミキリ』で攻撃と同時に自身の力を上げ、最後の『宇智切ウチキリ』で敵の心……精神力や、魔力そのものを砕く、というタイプの攻撃なのだとか。

「俺の宇智切ウチキリを止めたヤツはお前くらいなもんだぜ?」

「ふん……べ、別に、大したことじゃねーよ」

 アルファのヤツ、照れていやがるな。
 しかし、そういう連撃技となると、一朝一夕で習得は難しい。

「だったら、これよりも『ついの太刀・打居弾縁ダイダンエン』を習得した方が良いんじゃねーかな?」

 この技は、「ついの太刀」と言う名ではあるが、万が一、武器破壊をされた場合でも戦えるように、拳による突きを極めるタイプの攻撃方法なのだそうだ。
 これなら、アルファの戦闘スタイルとも一致する。

「ボーギル、ついでにベータとコギッツくん、シスター・ウサミンも鍛えてやってくれないか?」

「そりゃ構わんが……何でまた、急に……」

「うん。端的に言うと、他の魔王に目を付けられて喧嘩売られたから、倍にして返そうかと思ってな?」

 その答えに、ボーギルのヤツが大きく深いため息をついて頭を抱えた。

「旦那ァ……また、厄介なことを……」

「……生贄代わりにルシーファのヤツをソイツに渡せば一応の和解は出来そうなんだけどな?」

「ハァッ!? おいおい、旦那、ふざけてんじゃねぇだろうな? ウチのかわいい天使を売るってのか!?」

 ボーギル……お前、独身なのにすっかり父性に目覚めてるよな……
 カシコちゃんもルシーファが絡むと、だいぶ母性が強くなってるみたいだし……いや、良いけど。

「そのつもりは無ぇよ。……だから、その魔王を『ぎゃふん』と言わせるためにも、他の皆を鍛えて欲しいんだ」

「そういう事なら全力を尽くさせてもらうぜ! ああ、そうだ、シスターに教えるのは、俺よりカシコの方が向いていると思うから、ついでに俺の方から話をつけておくぞ?」

「お、おう……悪いな。じゃ、頼むわ」

 ボーギルがやる気になってくれて助かるわ。

 その間に、俺はゴブローさんに、武器や防具の作成を依頼しておいた。

 ちなみに、ルシーファのヤツにミーカイルって名前の弟が居るか、尋ねてみたのだが、めちゃくちゃキョトン、とした様子で「いいえ? わたしに家族なんて居ませんし……仮に、家族が居るなら『中央神殿』に捕らえられていた時に指名してますよ」と、実にごもっともな回答だった。

 ……うん、そんな気はしてた。

 まぁ、記憶から抜け落ちているにしろ、「姉さん」と言われながらも、赤の他人からストーカー被害に遭っていただけにしろ、わからないならその方が良い。
 
 だいたい、中央神殿あそこで俺の名前を出すってこと自体、相当、追い詰められてたみたいだったからな。

 それに、言っちゃなんだが、ミーカイルとルシーファってそこそこ共通しているのが背中の翼の形状だけで、その他は真逆と呼べるくらい似ていない。

 どちらかというと爽やか体育会系マッチョのミーカイルと、インドア文学系メガネのルシーファ。
 
 むしろ、あの中央神殿のマチョリダの方が、ミーカイルと血がつながっている、と言われた方が納得できる。
 髪の色も瞳の色も、鮮やかな緋色のミーカイル、かたや、プラチナブロンドに緑の瞳のルシーファ。
 正直、姉弟と言うには少し無理がある気がする。

「さてと……」

 これで、俺の腹心達とベータ、コギッツくんの強化のめどは立った。

 今回、俺が狙っているのは『攻撃は最大の防御! 速攻・電撃攻略』である。

 ネーヴェリクとオメガからの情報によるとミーカイルのダンジョンは現在地下50階層に亘るもののようだが、もともと、野性のダンジョン・コアを成長させたもののようだ。
 これなら、ダンジョンの癖を知り尽くしている俺からすると、突きやすい穴が透けて見える。

 深さこそ、向こうが上だが、その広さ・罠の豊富さ・ルートの厭らしさについては、ウチの方が数枚上手らしい。
 二人共、姿を隠すスキルが高くて助かったぜ。

 そして、ミーカイル陣営の主な戦力は、魔王であるミーカイル本人、副官のトラオウ、屍鬼のフジョシーヌちゃん。配下には獣魔人系とアンデッド系が多い。
 今まではそこに遊撃・諜報活動担当としてシシオウが居たらしいので、その地位に誰か別の高位魔族が入っている可能性は高い。
 
 とはいえ……ぶっちゃけ、俺が『育成型』であるだけあって、部下の層の厚さはダントツ上だ。

 つまり、今回俺が狙っているのは、配下全員特攻!! 物量で相手のダンジョン・コアを叩き潰すッ!!!
 防衛は俺に任せろ!!!

 ……で、ある。

 目ぼしい魔族が4~5体ということは『攻撃:防衛』を、『2~3:2』……程度に分けて来るのが定石。
 仮に、魔王自身が1体で特攻してくるような事があったとしても『1:3~4』
 
 恐らく物量で押し切れるはずだ。

 なお、ドエムンみたいな防衛力特化タイプを攻撃側に回す場合、彼自身が盾となり、比較的、打たれ弱いカシコちゃんやシスター・ウサミン、ベータ、コギッツくん等をフォローしてもらう事になる。

 その分、防衛側である俺は多少キツイ事になるが、現在のダンジョン・ポイント貯蓄量的に1日……24時間だけなら、絶対に防衛できる自信がある。
 逆に言うと、相手のコア破壊まで24時間以上かかるようなら、ちょっと不安なのだが、俺には【腹心召喚】もあるから、そうそう無残な事にはならないだろう。

 俺は、準備を終えると、ダンジョン20階層のサーキュのところへと、ダンジョン内瞬間移動を発動させた。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...