107 / 124
107 魔王の正妻候補
しおりを挟む「カイトシェイド様っ! 魔王就任、おめでとうございマスッ!!」
そう言って、真っ先にネーヴェリクが俺の前に跪く。
そのネーヴェリクの態度に、ベータ、ゴブローさん、オメガだけでなく、あの反抗的だったアルファまで同様に片膝をついている。
「え……? ど、どうしたんだ、急に?」
「うるせぇ! と、とりあえず、テメェが成長した事をせっかく祝ってやってるんだから、素直に喜びやがれっ!」
アルファのヤツが、即座にまた立ち上がり声を荒げているが、その耳まで真っ赤だ。
どうやら、皆が俺のクラスチェンジを喜んでくれているらしい。
……地味に嬉しい。
「ふ……ふふふ……カイトシェイドの旦那さんよぉ……」
そんな魔族の皆に対して、ゆらり、と。
まるで幽鬼のようにふらふらと俺に近づいて来るボーギル。
「へ? お、おぅ?」
がしぃっ!!
「アンタ、今、いったい何をしたか分かってんのか!!!」
俺の肩を掴んで、血走った眼で叫ぶ。
「ん? あぁ、もしかして『寵愛』枠にボーギル達を選んだことが悪かったのか? いや、単に優先的に育成ができるらしいから適当に選んだんだが……?」
「だろうなぁ!! 旦那に他意は無いのは分かってるけどなァッ!! でもなッ!? レベルアップ時の天の声から【魔王・カイトシェイドの寵愛を得ました! 魔王の正妻候補に登録されました!!】って突然、宣言された独身男の身にもなってみやがれッ!」
うわぁ……そ、それは……
ボーギルが血の涙を流す勢いで怒鳴るのも、ちょっと分かる。
「わ、悪ぃ……て、ことは、まさか……カシコも、ルシーファも?」
「ええ……全く同じ言葉が聞こえたわ。まぁ、アタシはそれでも女だから……まんざら悪い気はしないけど……でも、カイトシェイドさん、アタシ達を『正妻』に……とかそんな気はサラサラ無いでしょ?」
「ああ、安心してくれ。そんな気は全く無い」
「……でしょうね。……ボーギル、安心してください。カイトシェイドは魔王城でもサキュバスとインキュバスのどちらからも【魅了】が効かない恋愛不感症の木石以下として名を馳せてましたから……」
え? ちょっと待て、ルシーファ。俺、それ初めて聞きましたけど?
つーか、お前だって人の事をどうこう言える程、恋愛経験値なんて無いだろ!?
第一、俺の部下はちゃんと女の子なネーヴェリクなんだぞ!
お前みたいに魔王の腰巾着やってて、それ以外は常時ボッチの堕天使様とは違うんだからなッ!!
……って、何でネーヴェリクまで微笑み浮かべて「そうなんデス! デモ、それがカイトシェイド様なんデス! すごいでしょ?」って顔で頷いてるのっ!?
そして、その様子を見て、ルシーファとカシコちゃんが二人して頭を押さえている。
どうやら、正妻候補でもある『寵愛枠』を雑に決めた事が、かなり型破りだったようだ。
でも、レベルアップを捗らせるには役職付きの『寵愛』枠は結構便利……
もちろん、育ったらちゃんと『寵愛』から外すよ?
あ…… でも正妻候補って、ことは……?
俺はゆっくり振り返ると、ついさっきまで魔王サタナスを喰いとめていた謎解き扉さんが淡い光を発している。
おお! やっぱり、進化が始まっている。
「な、何だ!?」
俺の視線につられて、輝く扉を目の当たりにし、驚きの声をあげたのはアルファだけではない。
全員が見守る中、徐々に光量を上げた謎解き扉さんは、ポン! と、軽い音を立てて進化を完了させた。
そこに立っていたのは、一人の青年姿の魔族だ。
【名前:ドエムン 種族:付喪神・謎解き扉】
胸元には竜を模した紋章と魔核、赤と緑のオッドアイの瞳……なのだが、何故か、あの脳筋バカ魔王に似た外見で、尚且つ上半身裸に亀甲縛りという、どM変態に性癖を振り切ったような外見をしている。
「んんんッ!! お初にお目にかかりますぞ、あるじ殿ッ!! ワタクシめは、謎解き扉の付喪神、ドエムンと申しますぞ! 此度は、旧・魔王のサタナスを防ぎ切った功績を讃え、役付け職就任という栄誉を賜り光栄ですぞぉぉぉっ!!」
「ひきゃーーーーッ!!??」
サタナスによく似た変態さんのご登場に、悲鳴を上げるチビ天使。
「んんん!! ご安心召されよ、ルシーファ殿!! ワタクシめの能力は、防衛に特化しておりますゆえ、攻撃は一切いたしません!! 被虐の鞭こそ我がご褒美ッ! あの熱い連撃をもう一度ッ!! ワタクシめのこの身体ッ! 打って、打って! もっと激しくぅッ!!」
頬を赤らめ身体をくねらせるドエムン。
お……おぅ……な、なるほど?
あの魔王に何十日もボコられ続けた結果、M属性の性癖に目覚めちゃったのね……?
ま、まぁ、でも、ドエムンの防衛能力が確かなことだけは確実。
能力特化型はバランス型と違って使い処は限られるが、その分、適材適所がハマれば強い!
「お互いカイトシェイド様の正妻候補同士ですからな!! 共に切磋琢磨いたしましょうぞ!! はっはっはっはっは!!」
ダンジョン防衛の面からは、キョーレツなキャラクターになるだろう。
今後の成長が色んな意味で楽しみだ。
0
お気に入りに追加
1,309
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる