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104 魔王襲来!!③
しおりを挟む「うおおぉぉぉあァァァッ!!」
呪文も無く、純粋な魔力だけで無数の魔力弾を放出し、自身の影からは成人男性の腕よりも太い触手を大量に湧かせ、数えるのも嫌になるような連撃を繰り返す魔王サタナス。
その目は真紅に染まり、振りまいている瘴気だけで天使はおろか、人間までをも殺せる勢いだ。
おそらく、狂化によるものだろう。攻撃能力が著しく強化されている。
「【魔龍吐息】! 【覇王獣斬】!!」
「ぐおおぉぉぁああああっ!!」
唇からあふれ出した獄炎が世界を焼き、己の爪をオリハルコンより硬度を上げて振りぬく。
ガシンッ!! ばきゃっ!
だが、そんな魔王サタナスの猛攻を、かれこれ10日以上……単体で食い止めている猛者がいた。
正直、俺も、ヤツがここまでの防衛能力を発揮するとは……考えていなかった。
完全な想定外。
そう言っていいだろう。
だが、俺としては嬉しい誤算だ。
この戦いが終わったら、絶対にヤツをレベルアップさせてやろう。
そう心に誓いながら、今、この瞬間も魔王の猛攻を無言で受け止め続ける最高の守護者の姿をこの目に焼き付けた。
……地下3階、接待ゾーンに鎮座している謎解き扉さんの雄姿を。
「うがあああぁぁぁぁっ!!」
ばきゃん! ぼぎゃっ!! どばきっ!
「【魔攻弾百連】!!」
ギュゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
「ルヴォアアアァァァっ!!」
ドカン、ドカンと、謎解き扉を叩き壊そうと攻撃を放つ魔王サタナス。
「うおおぉぉぉあァァァッ! おのれカイトシェイドォ! 卑怯者めぇぇ!!」
……じゃねぇよ!!
テメェの知能は虫以下か!?
そこに書いてある文字を読めよ!!! 計算しろよ!!!
もう、『魔王・サタナス』じゃなくて『愚王・ボケナス』に改名すれば良いんじゃないかな!?
……うん、なんつーか……その……
おそらく、狂化によるものだろう。思考能力が著しく劣化している。
俗に、籠城戦において「防衛側は、攻撃側の三分の一の兵力で守り切ることができる」と言われることがある。
ダンジョンの場合、罠や謎解き扉さんのようなギミックは『主』の魔力のだいたい30倍程度の耐久性能がある……というのが、標準的な見方だ。
つまり、魔王サタナスが俺の30倍以上の魔力で一撃を加える事ができれば、理論上ダンジョンのギミックである謎解き扉さんを力業で破壊できることになるのだが……
「ふおおおおおっ!!!」
バァンっ! ガァンっ!! ばごぉん!!
……無理っぽいな。
それか、普通に謎解きをしてくれれば、先へ進むことは可能なのだが……
見落としが無いように、スゴ~くデカくと書いて有るぞ?
『3足す7の答えと/5足す7の答えの/大きいほうの答えの数字を/2で割った数の分だけ/ドラゴンの紋章の頭をノックしろ』と。
「なぁ……カイトシェイドの旦那さんよ……」
「何だ、ボーギル」
「魔王ってさ、古代魔法文字……読めないのか?」
「う、う~ん……いや、読めるとは思うんだけど……」
この手のギミックって、1回失敗しても、ある程度のクールタイムを空ければ再チャレンジできる代物である。
だが、逆に言えば、あんなに強い力で連撃に次ぐ連撃では、クールタイムの発生しようがない。
「……もしかして、魔王って2桁の計算ができないとか?」
「そ、そんなこと……無い、ぜ? ……たぶん」
「……ああ……魔王軍四天王って7人くらい居たりするとか?」
「いや、入れ替わりは結構あるけど、でも一応、現役なのは常に4人だからッ!!」
待って!?
もしかして、トップがアレだから、俺達まで、1から10まで数えられない知能指数だと思われてる!?
だが、奇声を上げながら必死に扉を殴り続けるアホを10日間も目の当たりにしては、ボーギルのヤツにそう思われても仕方がない。
いやいや、でも、10日間もぶっ通しであれだけ魔力放出量の高い攻撃を一切休みなく続けられるって、結構、凄いんだからな?
……って、なんで俺……魔王サタナスをフォローしてんだろう……
ちなみに……魔王サタナスがあの謎解き扉さんの所で詰まっちゃってから、丸3日たったところで、再度【階層移動】を実施し、今ではハポネスはすっかり通常営業だ。
だって、サタナスのヤツ……謎解き扉さんを破壊しようと攻撃する→壊せないので腹が立ってさらに攻撃を重ねる→やっぱり壊せないので腹が立って……の、無限ループに陥っているのだ。
サタナスは元々スタミナだけは凄まじいから、こうなってしまったらあと数日……下手したらちょっと魔力切れを起こして冷静になるまで月単位でキレ散らかすんじゃねーかな?
ダンジョン・ポイント的にはめっちゃ美味しいので、ヤツが粘れば粘る程、俺が強くなるという好循環。
あー……こりゃ、もう、謎解き扉さん突破は絶望的だな。うん。
あえてサタナスがあそこで頑張っている問題点をあげるとするなら、あれだけ決意して整えた緊急事態の緊迫感が完全に無駄になった点。
こんな……想定外に浅い階層で魔王が詰まっちゃったので、地下ダンジョンを一般冒険者達に開放できない点。
そのくらいだろうか……
あ、もちろん、ボーギルからダンジョン・コアは返してもらいましたよ?
……たぶん、あれが、魔族人生で一番、気まずかった瞬間でした……
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