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103 魔王襲来!!②
しおりを挟む「ひっ! や、やだ……来ないでッ! 来ないで下さいっ!」
壁に映し出された魔王サタナスの鬼気迫る様子を目にしたルシーファが、半狂乱でカシコちゃんの腕から抜け出すと、酷く怯えた様子で部屋の隅で縮こまる。
「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、……ッ!!」
「大丈夫よ、ルシちゃん!」
「安心してくだサイ、ルシーファ様……ここに来るには、このダンジョンを全て踏破しなければ、いけまセンから」
カシコちゃんとネーヴェリクが、泣きながら震えているルシーファを必死に慰めている。
「旦那様、どうやらあの魔王サタナスはこのダンジョンを踏破するつもりでしょう」
ベータの言葉に、俺も小さく頷いた。
「よし、では10階ボスフロアはアルファ、ベータ、オメガ、お前たちに任せる。致死ダメージを喰らいそうになったらバックヤード行きだから、気にせず全力でやれ!」
「かしこまりました、旦那様」
「ちっ……面倒だが、まぁ……あのサタナスって野郎は、嫌なツラしてやがる……」
「……うん、ボクも嫌い~」
アルファのヤツが不機嫌そうに唇を尖らせ、いつもぼんやりとした表情を浮かべているオメガもその表情をわずかに曇らせる。
……そうだね。
魔王サタナスってちょっとゲドーダに似てるもんね。
「ダンジョン・ポイントもそれぞれ5000ポイントまで自由に使う権利を与えるから、罠を使うなら上手くやれ。もちろん、己の技能の成長に使っても良い」
正直、現状だとベータとオメガは一撃でも攻撃を喰らってしまったらかなり危ない。
アルファでさえ何発の攻撃を耐えられるかどうか……
本当は一人一万ポイントとかあげたいところなんだけど、無い袖は振れない。
「はっ! では早速!」「ぶっ飛ばしてやる!」「いってくるねぇ~」
三人は、その指示を受けるとすぐに瞬間移動で10階へ飛んだ。
……つーか、早速『ダンジョン内瞬間移動』のスキルを取ったの? いや、別に良いけど……
「20階ボスフロアはゴブローに任せる。アルファ達が倒された場合はお前がキーパーだ。サーキュのヤツも好きに従えて使え。お前にもアルファ達と同様、ダンジョン・ポイント権を5000与える。」
「御意! 必ずや御身に勝利をお届けしましょう!」
同じく、ゴブローさんも瞬間移動で20階へと移動する。
『ダンジョン内瞬間移動』大人気だな。
「さて、と。じゃ、カシコとボーギルは、ここでルシーファのヤツを見ててやってくれ」
俺は、残ったボーギルとカシコちゃんにニッコリと笑いかけた。
「え!? おいおい、旦那!?」
「まぁ、今回のコレは、もともと魔族側の事情で人間の街を巻き込んだ訳だからな」
俺は、手にしていたダンジョン・コアをボーギルの右手の上に置く。
「俺とネーヴェリクが倒されるようなら、ダンジョンの主はお前になるように設定してあるから、その時はこのダンジョン・コアを壊せ」
「な!?」
「【迷宮代償】っつってな、ここまで育ったダンジョンを自壊させれば、サタナス程度は魔王城に送り返すことができるはずだ」
ただし、そう簡単に、このカイトシェイドさんは殺られませんけどね?
「……良いよな? ネーヴェリク」
「ハイ、ネーヴェリクはもう、あの時に誓っているのデス。この身が灰となり、魔核が砕けテも、ネーヴェリクは、カイトシェイド様のものだ……と」
「よし、ゴブローさんも倒されるようなら、その時は29階が最終防衛ラインだ」
「ハイ!」
俺達二人が、このダンジョン最後の守護者だ。
魔王サタナスとは直接戦った事は無いが、全ダンジョン・ポイントを使ってやり合えば、決して勝てない相手ではない。
だが、戦闘準備を整えた俺たちが見たのは……想定をはるかに覆す現実だった。
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