四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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102 魔王襲来!!

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「な!?」

 唐突に天空を覆った光の刃に目を丸くする……より早く、町中を守っている防衛結界に組み込ませて貰ったシスター・ウサミンの【月魔法・攻撃反射】が発動した。

 まだ一日1回の発動しかできないが、それでも初撃だけは絶対にはじき返せる結界である。
 オメガの魔法文字の練習と、シスター・ウサミンの月魔法の技能向上を兼ねて結界を作ってみたのだ。
 実は、つい先日整備したばかりの試作品なのだが、その効果は見ての通り。

 何やら遠方から放たれた攻撃魔法を見事にはじき返し、術者に直撃させたらしい。

 だが、この結界の真価はそこではない。
 
 何者かが、俺のダンジョンそのものに対して攻撃を仕掛けて来た、という事実を全住民に自動的に周知し、街自体が『緊急事態』である、と認識できる事こそが最大のメリットだ。

 ……だが、いったい、誰が? マドラのヤツはこんな遠距離攻撃はしてこないし……
 ルシーファが堕天使のままであれば可能性はあったのだが、ヤツはすでに一般人よりも、かなり弱体化してしまっている。

 シシオウかな? でも、アイツ、見た感じマドラに近い直接攻撃型だと思ってたんだけど……?

『カイトシェイドさんっ!! 聞いて!!』

 そんな事を考えていたら、意外な人物の声が耳に飛び込んで来た。

「カシコ?」

『今、風の精霊に頼んで私の声だけを貴方の耳元に届けているわ!! ルシちゃんが『魔王サタナスが来た』って貴方に伝えて欲しいって……! 大丈夫よ、落ち着いて!? ね? 大丈夫だから!』

 どうやらこの音声は一方的なモノらしく、もう一度『魔王サタナスが来た』と早口でまくし立てたと思ったら、ふつり、と音が途切れた。

 ……なるほど。
 ルシーファの声は聞こえなかったが、これはそういう魔法なのだろう。
 だが、カシコちゃんの声の様子から、相当パニックになっているようだ。

 魔王襲来……という訳か。

 まだ迎え撃つ準備が万端とは言えないが、あの脳筋魔王の不意打ちを防げたのだから、シスター・ウサミンには後でお礼をしておかなければならないだろう。

「ダンジョン・クリエイト!【階層変更】ッ!!」

 俺は、この緊急事態に応じ、ダンジョン・ポイントを消費し、この『ハポネス』の街そのものの階層を強制的に変更した。
 ここはケチっている余裕は無い。
 現在の貯蓄分を全て吐き出しても構わないつもりで防衛にポイントを回させてもらう!

 同時に俺は、複数の『分身体』を作り、主要箇所へとダンジョン内瞬間移動を行った。

 ハポネスの政治の中枢、冒険者ギルド、孤児院や診療所、そして、地下ダンジョン統括部署…… 
 このほかにも『医療組合』『商業ギルド』『闘技場』『公衆浴場』等、それなりに人口が集中する可能性のある場所へも分身体を飛ばす。

 伝える内容は「ハポネスが敵に襲われている事」「すぐに終わらせるから、その脅威を撃退するまで大人しくしておいて欲しい事」の2点。そして「戦力となりそうな者は集結させる事」である。

 階層変更で迎撃態勢を整えたハポネスを外から見たら、本来あったはずの街が忽然と消え、たった一つだけ、ポツン、とダンジョンの入口だけが口を開いているように見えるだろう。

 【階層変更】により、本来、一番表……地表にあるはずの街が、ダンジョン最下層の30階に移動したのだ。
 中に住んでいる住人からしたら、町の外に出るはずの門が突然全て閉じられ、街の外に岩の壁が現れたように感じられただろう。
 一般市民からすると何が起きているのか把握するのは難しいかもしれない。
 だが、それで良い。……いや、むしろそれこそが望ましい。
 彼らが気づかぬ内に戦闘が終わり、また地上に街が戻る……それが理想だ。

 正直、こんなに早く魔王本人が襲ってくるとは思っていなかったので、籠城準備は整っていない。
 ハポネスの一般市民、数日程度であれば問題無いが、籠城が一週間を超えるようだと、食糧問題などが一気に表面化してくるに違いない。

 短期決戦。
 
 それを決めるべく俺が、主寝室へと招いた『戦力』と成り得る人材は、8人だ。

 まず、俺の副官でもあるヴァンパイア・プリンセスのネーヴェリク。
 魔族化させた元・奴隷……鬼龍人・アルファ、魔人・ベータ、夢魔・オメガ。
 地下ダンジョン統括責任者である大鬼・ゴブローさん。
 冒険者ギルド長のボーギルと副ギルド長のカシコちゃん。
 おまけで、ちび天使のルシーファだ。コイツは正直、戦闘力にはならないのだが、感知能力がここに居る誰よりも高い。

 主寝室の壁にダンジョンから外の様子を映し出す。

 すると、確かにそこに映っていたのは、あの脳筋魔王、サタナスが烈火のごとくブチ切れて、叫び声を上げながら突撃してくる姿だった。
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