四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

文字の大きさ
上 下
97 / 124

97 住民たちに投資しよう!

しおりを挟む

 あの後、意識の戻ったシスター・ウサミンも【才能開花《ハヨサケ・スキル》】を施したところ、『回復魔法』『治癒魔法』に『月魔法』という、ちょっと珍しい属性の魔法の才能が開花した。

 『月魔法』とは、主に反射や複製を司る魔法で、使い方によってはかなり凶悪だったりする。

 コギッツくんと同様に俺が再度、腕切断して、それを回復してくれたのだが、半泣きで「もう、これ以上の無茶はしないでくださいッ!」と懇願されてしまった。

「だ、だけど……これは、凄すぎるぜ……旦那ァ……」

「しかも、使い続けたり、ダンジョンでレベルを上げれば、さらに能力が成長するんですよね……」

「ええ。それはもちろんです。ですので、お二人共、お時間のある時にハポネスのダンジョンへ潜ってみてはいかがですか?」

 多分、この二人ならゴブローさんは難しいかもしれないが、ネーヴェリクの調整してくれたアンデッドゾーンくらいまでは行けるんじゃないかな?

「ウサミン! 旦那もそう言ってるし、今度一緒にダンジョンへ行ってみようぜ!!」

「え、で、でも、私、戦闘は……」

「平気だよ、俺が守るし!!」

 うむ、よきかな、よきかな。
 そうやって、ダンジョンに潜ることで本人のレベルを上げてくれれば、より、単体から得るダンジョン・ポイントがUPする。

 そうすれば、さっき使った程度のポイントなど、すぐに補ってくれるはずだ。
 つまり、この作業はダンジョン・ポイントの無駄遣いではなく、未来への投資なのだ!

 ダンジョンに潜ることに少し抵抗を感じているらしいシスター・ウサミンに向かって俺は微笑んだ。

「シスター・ウサミン。能力が開花するキッカケなどは些細なことです」

「カイトシェイド様……」

「……ですが、その才能を『使える』と『使いこなす』と『極める』は違います。私ができるのは最初の一歩を踏み出す背中をぽん、と押しただけ。それを使いこなし、極められるかどうかは、本人の努力次第ですよ」

 コギッツくんの回復魔法だって、使えるとは言っても、正直最初は一日1回か2回が限度のはず。
 これを『いつでも、どこでも、だれにでも』レベルまで引き上げられるかどうかは本人次第だ。

「そ、そうですよね……分かりました!! 私、カイトシェイド様が目覚めさせてくださった、この力を決して無駄にはしません!」

 おお!? シスター・ウサミンが燃えている。
 だが、やる気を出してくれるのは大変良い事だ。

 俺はこの調子で翌日以降『医療組合』に掛け合って、この街に残っていてくれた全回復術師達の元を周り、強化を実施した。
 まぁ、中には多少反発するヤツや信じてくれないヤツも居たのだが、シスター・ウサミンやコギッツくんにしてやったのと同じような事をしたら、一発。

 ある意味ぐうの音も出ない実演で、あっさりと信用を勝ち取った。
 まぁ、この状況下でもハポネスに残ってくれているような回復術師達なので、それほど難儀なヤツはいなかったけどな。

 皆、話せばわかる良い人達ばっかりだったよ?

 ただ、流石にこのやり方……1,2回は問題無いのだが、3回、4回と腕を切り落とす作業を分身体にやらせると、魔力流出量が増えすぎてしまい、分身体そのものの維持が困難になってしまう。

 そのため、ちょっと手間ではあったのだが、俺本体が【才能開花ハヨサケ・スキル】を使い、回復術師達の能力を開花、その証明のために腕を切断し、本人に治療して貰う……を、繰り返した結果!
 結構なダンジョン・ポイントを使ってしまった。

 一人あたり数百ポイントとはいえ、対象者が100人いれば一万ポイントを優に超える。
 すでに大分、回復術師は減っていたみたいで200人を切っていたのは逆に助かった。

 は、ははは……今更になって、もうちょっとゆっくり作業すればよかったかな~……なんて、ね。
 いや、でも、これだけの技能を持つ回復術師がゴロゴロいる街は珍しいみたいから、きっと訪問者も増えるはずだ!!

 大丈夫、コレは投資! ダンジョン・ポイントの投資だから、きっとすぐに増えるようになるッ!!
 そう己を励ましながら、全ての回復術師達の開花作業を終えた俺は、ルシーファの元を訪ねていた。


「……ねぇ、カイトシェイド……」

「おう。何だ、ルシーファ……せっかく遊びに来てやったんだ。感動に咽び泣いて喜べ、友達居ないボッチ天使が」

 だが、俺の皮肉よりも目の前の光景の方が衝撃的だったのだろう。
 冒険者ギルドの5階、聖域結界のお陰でようやく人並みの生活リズムを取り戻したちび天使が困惑の表情を浮かべている。

「一体、どうするんですか? ……コレ」

「……欲しいか?」

「一個たりとも、いりませんよッ!!」

 この作業、もうちょっと時間をかけた方がよかったかなー……と、感じたもう一つの理由が目の前に広がるコレである。
 見てのとおり……無数に転がる俺の

 ほら、能力を開花させるじゃろ?
 切断された体の再生が自分自身で出来る事を実感させるために、自分の腕を切り落とすじゃろ?
 回復術師が新たな腕を生やしてくれるじゃろ?
 切り落とされた左腕があまるじゃろ?
 そのままにしておけないじゃろ?
 回収するじゃろ?
 回収したブツ、どうしようかな……? ←イマココ。
 
「お前さ……堕天使の頃は、何か、こーゆーのの処理方法とか活用方法とか詳しく無かったか?」

「誤解ですッ! 知りませんよ、そんな禍々しいものを駆使する方法ッ!!!」

「テメェ、無駄に本ばっかを読んでいただろ! 知識を絞り出せ!!」

「……コンポストに放り込んで堆肥にでもなさったらどうです?」

「よし、任せた! 趣味・ガーデニングッ!!」

「こんな猟奇的な肥料はいりませんっ!!!」

 ……っち、コイツに押し付ける作戦は失敗か。
 こういう、俺自身の身体のパーツを抱えてウチに戻ると、ネーヴェリクが、すっげぇ悲しそーーーーな顔するんだよなぁ……

 先日、コギッツくんと、シスター・ウサミンを開花させた時、分身体が持ち帰って来た左手を見て、妙にぺっそりしていたのだ。

「何だよー、貴重な本体のパーツなのに……」

 ちぇ。
 結局、俺の左手の山は適当な肥料にすべく、樽に詰めて、屋敷の地下の倉庫に放り込んでおいた。
 まぁ、魔力は引き抜いてあるから、いわば単なる肉だし……腐ったらマンドラニンジンの畑に撒くか。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...