93 / 124
93 新・冒険者ギルド完成!
しおりを挟む「アンタが冒険者ギルドの建て替え建築責任者のカイトシェイドさんかい? 俺は『商業ギルド』から紹介された建築工房、ザグラダ一門のカウティーだ」
翌日、明らかに磨き抜かれた大工の棟梁、という感じの背の低いおっさんが、同じく背の低い若い衆を引き連れてやって来た。
特徴的なもっふりお髭にガッチリと引き締まった体つき……どうやら、彼等はドワーフ族のようだ。
若い衆の中には普通の人間も混ざっているが、皆一様に体つきは立派だ。
「ショーギル殿から話は聞いているぜ? 何でも『高速で建物を作れる魔法』を教えてくれるんだと?」
本当にそんな事ができるのか? という「期待」よりは「不信感」の方が色濃く出ている顔色で、カウティー親方は俺に尋ねた。
「はい、もちろんです」
俺は早速「ダンジョン・クリエイト」の【地形変更技能】をここに居る全員に添付していく。
「な、なんだこりゃ!? 大地の素材が分かる……だと!?」「『クリエイト・ブロック』! おおぉ! 本当に一瞬でレンガが出来たぞ」「しかも、質が良いな」「待ってくれ、こんなにスムーズに穴掘りも、地盤固めもできるなんて……」「すげぇ!! しかも、これだと魔力消費量が少ないな!」
この手の特殊能力って開眼さえさせてしまえば、勝手に自分の魔力を使って習得してくれるので説明は不要。
むしろ、彼等は彼等なりの建築ルールがあるので、下手に俺から使い方をどうこう言わない方が良かったりする。
「体感していただいているとおり、自身の魔力を扱うことで、作業は劇的にスムーズになります。ただし、皆様に技能をお渡しする前にもご説明させていただいたとおり、この魔法が使えるのは『ハポネス』の中だけですのでご注意ください!」
正確に言えば、じわじわとダンジョン・エリアは広がっており、ハポネスの外『黒の森』でも、街寄りの場所では使えるのだが、説明が面倒くさいので『街の中だけ』ということにしておいた。
「よーし、野郎ども、まずは古い施設の解体作業だ!!」
「「「おー!!」」」
ちなみに、すでにギルド内の機材等は一旦、俺やカシコちゃんの時空袋か異次元収納にしまってある。
カウティー親方の一声で、一斉に破壊にいそしむ建築作業員の皆様。
そらもう、一瞬で更地ですよ。一瞬で……
「はぁ~……状態変化ってこんなに便利なんだな! しかも、旦那のスキルを使うと魔力の節約にもなる……」
カウティー親方は自分の懐から出した紙をまじまじと見つめた後、俺の顔を睨みつけた。
「旦那が、この設計図を出して来て『この新しいギルドの建物を一日で造れ、その為のスキルをお前たちに譲る』と言い出した時は、正直、頭がオカシイ奴としか思ってなかったぜ」
「……では今はどうでしょう?」
俺がそう問いかけると、ニッと白い歯を出して笑った。
「サイコーにクレイジーなヤツだ!」
新しい冒険者ギルドの建物を一日で完成して欲しい、と依頼したのだが、どうやら彼等もドワーフ族の意地にかけて、たった半日で5階までの建物を完成させてしまった。
流石、職人! 仕事が早いぜ。
「ありがとうございます。流石ですね……」
俺がダンジョン・クリエイトで造るよりも、造形的にオシャレで洗練されていてカッコイイ。
……良いんだよ、俺は実用一辺倒なんだから……!
階段ももちろんあるが、全階『ボタン式瞬間移動魔法陣』を設置しており、希望の階の数字が書かれた宝玉に触れれば、その階に移動できるようになっているし、水回りも完璧。
お手洗い用のスカベンジャー・スライムは俺が準備しておいたので、全ての汚水が流れ込む排水槽にセット。
なお、主にルシーファが生息する5階・屋上部分からの汚水は他の階とは別に、全て一か所に纏めて、特にレベルの高いスカベンジャー・スライムを数匹設置した。
屋上には、小さな家庭菜園のできる畑だけではなく、精霊が好むと言われている樹木も3本ほど植え付けられていて、心地よい木漏れ日が差し込んでいる。
これで、5階部分に聖域結界の為の魔法文字を書いてしまえば、新たな冒険者ギルドは完成である。
魔法文字に関しては、カウティー親方も知識が全く無いらしかったので、俺の方で記入したのだが、それ以外の部分は全部ザグラダ一門がやってくれたので、とても楽ちんだった。
「しかし、旦那も変わった人だな」
「そうですか?」
「旦那一人だって、このギルドの建設が出来たんだろう? それなのに、わざわざ金まで使って、しかも貴重な自分のスキルの一部を俺たちに譲って……旦那一人が丸損じゃねぇか?」
いや? でも、今後、俺がやっていたような工事を他人に発注できるってすごく楽だし……
それに、ダンジョンから取れる『魔法石』がお金代わりとして使用できるので、俺の懐は一切痛んでいない。
むしろ、譲れるなら他の仕事……セーブ・エリア虫の駆除とか、回復魔法のサービスとか、魔法文字の記入とか、地下ダンジョンのエリアボスとか……その辺もガンガン他人に押し付け……もとい、譲って行きたいんだが?
「でも、こういう作業は大勢でやった方が、より早くて効率的でしょう?」
「かー……やっぱり、聖者様は違うねぇ」
「ははは……別に聖者でも何でもないのですが……」
「貧民に対して無償で『回復魔法』を使ってくれるような人は『聖者』って言うんだよ。普通は、魔法医は高価なもんだからな。ところが、旦那のおかげでヤツ等は商売あがったりだ。ははは! お高くとまってこっちを馬鹿にしていたから、いい気味だぜ。ま、そのうち、尻尾を撒いてこの街から逃げ出して行くんじゃねーかな?」
「な、なんだって!? それは困るぞ!!」
「へ?」
そんな!? 大切なダンジョン・ポイントを生み出す人間達が集団で町から出て行く!?
予定より早く冒険者ギルドの建て替えが終了した分、今日はまだ時間に余裕がある。
早急に魔法医を束ねる『医療組合』と腹を割って話をした方が良いのかもしれない……!
しかし……医療組合関係者か……シスター・ウサミンなら知ってるかな?
こちらは、後、支払いだけなので、難しい問題は無い。
俺は、屋敷の医務室に常駐している方の『分身体』に意識を飛ばした。
0
お気に入りに追加
1,309
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる