四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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93 新・冒険者ギルド完成!

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「アンタが冒険者ギルドの建て替え建築責任者のカイトシェイドさんかい? 俺は『商業ギルド』から紹介された建築工房、ザグラダ一門ファミリーのカウティーだ」
 
 翌日、明らかに磨き抜かれた大工の棟梁、という感じの背の低いおっさんが、同じく背の低い若い衆を引き連れてやって来た。
 特徴的なもっふりお髭にガッチリと引き締まった体つき……どうやら、彼等はドワーフ族のようだ。
 若い衆の中には普通の人間も混ざっているが、皆一様に体つきは立派だ。

「ショーギル殿から話は聞いているぜ? 何でも『高速で建物を作れる魔法』を教えてくれるんだと?」

 本当にそんな事ができるのか? という「期待」よりは「不信感」の方が色濃く出ている顔色で、カウティー親方は俺に尋ねた。

「はい、もちろんです」

 俺は早速「ダンジョン・クリエイト」の【地形変更技能】をここに居る全員に添付していく。

「な、なんだこりゃ!? 大地の素材が分かる……だと!?」「『クリエイト・ブロック』! おおぉ! 本当に一瞬でレンガが出来たぞ」「しかも、質が良いな」「待ってくれ、こんなにスムーズに穴掘りも、地盤固めもできるなんて……」「すげぇ!! しかも、これだと魔力消費量が少ないな!」

 この手の特殊能力って開眼さえさせてしまえば、勝手に自分の魔力を使って習得してくれるので説明は不要。
 むしろ、彼等は彼等なりの建築ルールがあるので、下手に俺から使い方をどうこう言わない方が良かったりする。

「体感していただいているとおり、自身の魔力を扱うことで、作業は劇的にスムーズになります。ただし、皆様に技能をお渡しする前にもご説明させていただいたとおり、この魔法が使えるのは『ハポネス』の中だけですのでご注意ください!」

 正確に言えば、じわじわとダンジョン・エリアは広がっており、ハポネスの外『黒の森』でも、街寄りの場所では使えるのだが、説明が面倒くさいので『街の中だけ』ということにしておいた。

「よーし、野郎ども、まずは古い施設の解体作業だ!!」

「「「おー!!」」」

 ちなみに、すでにギルド内の機材等は一旦、俺やカシコちゃんの時空袋か異次元収納にしまってある。

 カウティー親方の一声で、一斉に破壊にいそしむ建築作業員の皆様。
 そらもう、一瞬で更地ですよ。一瞬で……

「はぁ~……状態変化ってこんなに便利なんだな! しかも、旦那のスキルを使うと魔力の節約にもなる……」

 カウティー親方は自分の懐から出した紙をまじまじと見つめた後、俺の顔を睨みつけた。

「旦那が、この設計図を出して来て『この新しいギルドの建物を一日で造れ、その為のスキルをお前たちに譲る』と言い出した時は、正直、頭がオカシイ奴としか思ってなかったぜ」

「……では今はどうでしょう?」

 俺がそう問いかけると、ニッと白い歯を出して笑った。

「サイコーにクレイジーなヤツだ!」

 新しい冒険者ギルドの建物を一日で完成して欲しい、と依頼したのだが、どうやら彼等もドワーフ族の意地にかけて、たった半日で5階までの建物を完成させてしまった。

 流石、職人! 仕事が早いぜ。

「ありがとうございます。流石ですね……」

 俺がダンジョン・クリエイトで造るよりも、造形的にオシャレで洗練されていてカッコイイ。
 ……良いんだよ、俺は実用一辺倒なんだから……!

 階段ももちろんあるが、全階『ボタン式瞬間移動魔法陣』を設置しており、希望の階の数字が書かれた宝玉に触れれば、その階に移動できるようになっているし、水回りも完璧。

 お手洗い用のスカベンジャー・スライムは俺が準備しておいたので、全ての汚水が流れ込む排水槽にセット。

 なお、主にルシーファが生息する5階・屋上部分からの汚水は他の階とは別に、全て一か所に纏めて、特にレベルの高いスカベンジャー・スライムを数匹設置した。

 屋上には、小さな家庭菜園のできる畑だけではなく、精霊が好むと言われている樹木も3本ほど植え付けられていて、心地よい木漏れ日が差し込んでいる。

 これで、5階部分に聖域結界ホーリー・サンクチュアリの為の魔法文字を書いてしまえば、新たな冒険者ギルドは完成である。

 魔法文字に関しては、カウティー親方も知識が全く無いらしかったので、俺の方で記入したのだが、それ以外の部分は全部ザグラダ一門がやってくれたので、とても楽ちんだった。

「しかし、旦那も変わった人だな」

「そうですか?」

「旦那一人だって、このギルドの建設が出来たんだろう? それなのに、わざわざ金まで使って、しかも貴重な自分のスキルの一部を俺たちに譲って……旦那一人が丸損じゃねぇか?」

 いや? でも、今後、俺がやっていたような工事を他人に発注できるってすごく楽だし……
 それに、ダンジョンから取れる『魔法石』がお金代わりとして使用できるので、俺の懐は一切痛んでいない。

 むしろ、譲れるなら他の仕事……セーブ・エリア虫の駆除とか、回復魔法のサービスとか、魔法文字の記入とか、地下ダンジョンのエリアボスとか……その辺もガンガン他人に押し付け……もとい、譲って行きたいんだが?

「でも、こういう作業は大勢でやった方が、より早くて効率的でしょう?」

「かー……やっぱり、聖者様は違うねぇ」

「ははは……別に聖者でも何でもないのですが……」

「貧民に対して無償で『回復魔法』を使ってくれるような人は『聖者』って言うんだよ。普通は、魔法医は高価なもんだからな。ところが、旦那のおかげでヤツ等は商売あがったりだ。ははは! お高くとまってこっちを馬鹿にしていたから、いい気味だぜ。ま、そのうち、尻尾を撒いてこの街から逃げ出して行くんじゃねーかな?」

「な、なんだって!? それは困るぞ!!」

「へ?」

 そんな!? 大切なダンジョン・ポイントを生み出す人間達が集団で町から出て行く!?

 予定より早く冒険者ギルドの建て替えが終了した分、今日はまだ時間に余裕がある。
 早急に魔法医を束ねる『医療組合』と腹を割って話をした方が良いのかもしれない……!
 しかし……医療組合関係者か……シスター・ウサミンなら知ってるかな?

 こちらは、後、支払いだけなので、難しい問題は無い。
 俺は、屋敷の医務室に常駐している方の『分身体』に意識を飛ばした。
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